3 / 51
ジュリアの弱み③
しおりを挟む(おかしい・・・絶対におかしい・・・)
「おい、何しかめっ面になってるんだ、ジュリア」
「うぅ~ん」
「あはは、ジュリアちゃんがおかしくなっちゃった!」
夜勤を終えて交代を果たしたジュリアが机の上でモゴモゴ言っていると、大きな熊のような男が騎士団の事務室に入ってきた。副団長であるフィンも続けて入ってくる。
「あ、ウルフ団長おはようございます。フィン副団長も」
「ああ、おはよう、夜勤ご苦労さん」
まだ朝日も上り始めた早朝、夜勤明けのジュリアを労った熊のように大きな体の男はこの第一騎士団の団長であるウルフ・ロッシュだ。今年三十五歳となる彼はジュリアをここまで立派な騎士として育ててくれた恩人でもある。こう見えて三児の父であり今年初めてできた娘にデロ甘である。
「いやぁ、書類を見直すようにしてるんですけど最近不備が多いみたいで、何度もサイラス様に呼び止められてしまうんです」
「・・・ああ、それはなぁ。あまり気にするな」
遠い目をしてそそくさと退散する団長が少し気になったがジュリアは書類不備がないかと三度目のチェックをして宰相の部屋へと向かい、部屋の前で心を静めようと深呼吸していると耳元で誰かがささやいた。
「・・・おはようございますジュリア殿」
「お、お、お、おはようございます。サイラス様!!」
サイラスはちょうど登城してきたらしく、まだ寝ぼけ眼でジュリアに挨拶をする。寝起きであるサイラスの声はしわがれていて、いつもより艶がある。そんな声を耳元で囁かれたジュリアは真っ赤になり耳を押さえた。
「どうしたの?」
「きゅ、急にサイラス様が私に声を掛けられたので少し驚いただけです」
ジュリアを見つめるサイラスにジュリアは身を縮める。そんなジュリアにサイラスはさらに詰め寄った。
「ジュリア殿、私の前だと堅苦しくなりますよね」
「そ、そんなことは・・・」
「この間騎士団員たちと話している姿を見ましたが、私に対しては随分と態度が違うように感じられますが」
「っ・・・」
「私を怖がっているのでしょうか。確かに私は氷の宰相と呼ばれておりますが」
「いえ、サイラス様を怖がるなんて!!むしろ尊敬しておりっ!」
サイラスはジュリアを部屋に引き入れドアを閉めた。サイラスが鍵を閉めているように見えたのはジュリアの気のせいではない。
「なぜですか、ジュリア殿」
「ひゃうぅっ」
壁に追い詰められ耳元でもう一度囁かれたジュリアは耐えきれず変な声を出してしまいとうとう腰が砕けてしまう。そんなジュリアをサイラスは左手で支えた。ジュリアはまだ力が入らずサイラスの胸元へ寄りかかり小声で訴えた。
「だ、駄目なんですぅ・・・サイラス様の声を聞くと力が入らなくなるんです!!」
「・・・」
15
お気に入りに追加
2,695
あなたにおすすめの小説

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

フランチェスカ王女の婿取り
わらびもち
恋愛
王女フランチェスカは近い将来、臣籍降下し女公爵となることが決まっている。
その婿として選ばれたのがヨーク公爵家子息のセレスタン。だがこの男、よりにもよってフランチェスカの侍女と不貞を働き、結婚後もその関係を続けようとする屑だった。
あることがきっかけでセレスタンの悍ましい計画を知ったフランチェスカは、不出来な婚約者と自分を裏切った侍女に鉄槌を下すべく動き出す……。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
年下騎士は生意気で
乙女田スミレ
恋愛
──ずっと、こうしたかった──
女騎士のアイリーネが半年の静養を経て隊に復帰すると、負けん気は人一倍だが子供っぽさの残る後輩だったフィンは精悍な若者へと変貌し、同等の立場である小隊長に昇進していた。
フィンはかつての上官であるアイリーネを「おまえ」呼ばわりし、二人は事あるごとにぶつかり合う。そんなある日、小隊長たちに密命が下され、アイリーネとフィンは一緒に旅することになり……。
☆毎週火曜日か金曜日、もしくはその両日に更新予定です。(※PC交換作業のため、四月第二週はお休みします。第三週中には再開予定ですので、よろしくお願いいたします。(2020年4月6日))
☆表紙は庭嶋アオイさん(お城めぐり大好き)ご提供です。
☆エブリスタにも掲載を始めました。(2021年9月21日)

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる