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ジュリアの弱み②
しおりを挟む「ぅう、今日はヤバかった・・・」
どんな美青年に対してもジュリアは靡かない。副団長にも冷静に対応するジュリアは“堅物”だとか“きっとレズだ”など何とも言われ放題であった。ジュリアとしても仕事一筋で仕事場で男にうつつを抜かすなんてもっての他だと思っているので言うように言わせていたのだ。
(あと一歩で力が抜けそうだった)
二年前、ジュリアが女王の護衛となるように任命された日が、宰相であるサイラスに出会った日でもあった。
+++
「はじめまして。本日からローズ様の護衛をさせていただきますジュリア・マイルズと申します」
「はい、頼みましたよ」
「っ・・・」
その声を聞いたときジュリアに衝撃が走った。中性的で妖艶な声にジュリアは胸が締め付けられ力が入りそうにない。ジュリアの顔にみるみる熱が集まり動悸が止まらないようだ。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です」
何も反応がないジュリアにサイラスは不安そうに覗きこむ。
「うっ・・・」
眼鏡の奥に光る深い海に吸い込まれそうになりジュリアはハッとする。
「し、失礼致します」
ーバタンー
「はぁ・・・」
(なんだったの、今)
それから何度か報告書を渡しに宰相の部屋に行ったのだが、毎回彼の声を聞くたびに力が抜けそうになるのだ。淡々とした報告を心がけ今日も必死に耐えていたのだが、あんな近くで話しかけられジュリアは逃げるように部屋を出ていってしまった。
(なんか、私宰相に失礼な奴だって思われてるよね。絶対)
ジュリアは一つにまとめた髪を手解き、ベッドの枕に顔を埋めた。
(耳栓して報告しに行くわけにいかないしなぁ・・・)
宰相であるサイラスは今年二十九歳。宰相となるべく育てられ頭脳明晰な彼は、どんな権力のある者でも怯まずに国王に背く貴族たちを次々と無慈悲に弾圧していった。そして彼を皆“氷の宰相”と呼んでいた。あの深いブルーの瞳に睨み付けられると皆固まってしまうので、そういうあだ名がついたそうだ。
(う~ん、固まってしまうってところは私も一緒だけど、睨み付けられてそうなってる訳じゃないんだけどなぁ)
ジュリアは小さい頃からかなり耳がよく、そのお陰で危機をすぐさま察知できるようになった。その利点を生かしながら女性ながら男性騎士たちに引けをとらないような立派な騎士となったのだ。
(別に耳の調子は悪くないんだけどなぁ)
トントンとジュリアは耳に何か詰まっていないか確認する。
恋愛もせず友人も少ないジュリアは、本人が声フェチでサイラスの声がジュリアの好みにドンピシャであり、本能的に脳ミソが溶かされそうになっていることに気づいていない。
(まあ寝るか)
ジュリアは早めに就寝の準備をして眠りについた。
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