元不良の悪役令嬢は最年少ドS魔法使いに躾される

え、なんであいつが?

二人だけの生活はすでに数ヶ月が経ち、この生活に違和感を覚えなくなっていた。あれからユーグは避妊をしながらも、マリアンヌを抱くようになった。マリアンヌの魔法も上達し、休日は気まぐれで丘の下にある町まで連れていってくれることもある。今日は豊穣祭りがあり、昼から活気があった。


「お、マリちゃん、りんご飴買っていかないかい」
「お、美味しそうだな、一つくれ」


村人から美味しそうなりんご飴を受け取った。外ではユーグに自分での食事をしていいと許可されているので、自分の手でパクパクと食べる。村人とも少しずつ知り合いができ、マリアンヌに優しく接してくれた。嫌いだった田舎暮らしが好きになり、見栄と嘘だらけの王都には戻りたくないと思うぐらいだ。


「マリアンヌ、食べ過ぎ」
「え、いいじゃねぇか、祭りだぞ」


マリアンヌはユーグと手を繋ぎながら歩いていた。ペットにも散歩が必要だと言って町に連れていってくれているが、マリアンヌはそれがまるでデートのようで気に入っている。


「ほら、口にタレが付いてる」


ペロッとマリアンヌの口の下に付いたタレを舐めた。


「っ・・・///」
「いつもいやらしい事たくさんしてるのに、こんなことで恥ずかしがって、僕のペットは可愛いね」


いつもはそれ以上のことをしている筈であるのに、まるで恋人のような扱いをされると照れてしまうのだ。


「ゆ、ユーグ!!あっちにチョコレートがあるぞ」
「これはお持ち帰りがいいんでしょ?」
「うん、お持ち帰りがいい。家で食べる」


ユーグが人混みが嫌いだ。しかしマリアンヌを喜ばせようと無理をしてくれているのにマリアンヌは気がついていた。それが嬉しくてにやけてくる。


「さあ、帰ろうか」
「うん」


＋
＋
＋




「美味しい?マリアンヌ」
「うん、旨い・・・」
「もっと欲しい?」
「うん、欲しい」


マリアンヌはユーグにチョコレートを食べさせてもらうのが好きだ。ユーグの手の熱で溶けたチョコレートと一緒に彼の指を長めに舐めれるからである。なので外出中でなく家で食べさせてもらうが好きなのだ。


──チュパッ、チュ


(今日も躾してくれるかな)


今夜ユーグはマリアンヌに目隠しをしながら食事を与えた。こういう時のユーグはドSスイッチが入り、マリアンヌを必要以上に責め立てるのだ。期待にマリアンヌは胸をドキドキさせ、ユーグの指を舐めた。



──バタン──


「マリー、いるかい??僕が迎えに来たよ!!」


扉が開かれ、パタンと閉まった音がした。そこにはもう一人の男の気配がする。


(・・・は)


目隠しをしていて見えないが、聞こえてくるのは、数ヶ月前マリアンヌを大勢の前で見せしめのように婚約破棄をした第一王子の声に似ていた。


「なななななにをしてるんだ、魔法使い!!マリー、大丈夫か」


やはり彼の声に似ているなと思っていると、彼がこちらに向かってくる足音がした。


──バンッ!!


目の前で何かを殴るような音が響く。誰かに目隠しを外されると、そこにはやはり第一王子が目の前にいて、ユーグは彼に殴られたのか頬が赤くなり、そこを擦っていた。


「嗚呼、愛しのマリー!!王子様が迎えにきたよ☆」


前世でいう、テヘペロ☆の乗りで、ユーグの家に乗り込んできたのは、救世主を気取っている王子様(まじで)・・・だった。