秘密の師弟関係

ほのじー

文字の大きさ
上 下
112 / 121
スノーランド婚約結婚編

シルベスターの帰国

しおりを挟む
「ケネス王子、今回とても良い合意が結べました。本当に今回の長期滞在のおもてなしも全てありがとうございました。国王にもスノーランドが良くしてくれたと報告しておきます」
「いえいえ、こんな田舎ですが、資源はたくさんありますのでね。フェリス国にご協力できそうで、こちらも嬉しい限りですよ。鉄道のことや条約決行のこともありますので、またすぐにお会いするでしょう。いつでもお待ちしております」



フェリス国とスノーランドの王子は硬い握手をして、シルベスターとその一行は帰国していった。



「ミリア、ちょっといいかな」



叔父であるケネスがミリアを呼び止めた。ミリアはケネスの執務室に入ると、もう一人先客がいた。


「いやぁ、実は、シルベスター王子にお願いされたんだが断れなくてねぇ・・・」


ケネスは頭をポリポリと掻いた。そこにいた先客が一歩前に出た。



「この度は私をミリア王女の騎士としてお役目を与えていただき、誠にありがとうございます」



そこにいたのは、フェリス国騎士団長であるランドルフであった。



「あっ・・・あなた、シルベスター様と帰国したんじゃ!!」


ミリアは驚きを隠せない。確かに彼らの一行をこの目で見送ってきたところなのだ。


「いやぁ、どうしてもシルベスター王子がこちらに次回来られるまで彼をミリアの専属騎士にしてやってくれってシルベスター王子が頼むからさぁ・・・まぁ、彼凄く強いみたいだし、ミリアが怪我しないように守れる専属騎士がいるのも悪くないからね」



ケネスはばつが悪そうに早口でそう告げ、そそくさと仕事に出掛けてしまった。



「な・・・なんで・・・」
「ミリア・・・俺を忘れてしまったのは知ってる・・・でも俺は少しでも君の新しい記憶に残っていたいんだ。もちろん騎士として絶対に君を守るよ」
「でも・・・あなたにはヴィヴィアン王女が・・・」
「シルベスター様に少し考えがあるんだ。詳細は伝えられないけど、でも君は何も気にする必要はない。君は守られていればいいんだから」
「でも、仕事は?」
「休暇届けを出してきた。シルベスターは受理したよ」



シルベスターは王女への忠誠のポーズをとった。膝まずき、ミリアの手の甲にキスをする。



「ランドルフ・ド・デルタにミリア王女っを守る栄誉を・・・」
「っ・・・」



ミリアはランドルフの本気に押されてしまう。彼の他国の王族へ忠誠を誓うなんて通常は考えられないのだ。



(こんなことされたら、断れないじゃない・・・)



「・・・分かりました。あなたに私を守る栄誉を与えます」


ミリアは王女の威厳を保ちながらランドルフにそう告げた。


「ありがたき幸せ」



こうしてランドルフがミリアの騎士となった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

英雄騎士様の褒賞になりました

マチバリ
恋愛
ドラゴンを倒した騎士リュートが願ったのは、王女セレンとの一夜だった。 騎士×王女の短いお話です。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

片想いの相手と二人、深夜、狭い部屋。何も起きないはずはなく

おりの まるる
恋愛
ユディットは片想いしている室長が、再婚すると言う噂を聞いて、情緒不安定な日々を過ごしていた。 そんなある日、怖い噂話が尽きない古い教会を改装して使っている書庫で、仕事を終えるとすっかり夜になっていた。 夕方からの大雨で研究棟へ帰れなくなり、途方に暮れていた。 そんな彼女を室長が迎えに来てくれたのだが、トラブルに見舞われ、二人っきりで夜を過ごすことになる。 全4話です。

処理中です...