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スノーランド婚約結婚編
忍び寄る影
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「今日は二人で会うことを許してくれてありがとう、ミリアちゃん」
「いぇ・・・今日はどういったご用件でしょうか」
シルベスターはミリアと二人で話がしたいということだったので、ミリアとシルベスター雪で覆われた庭をゆっくりと散策して、庭の中央にあるベンチに座った。遠くからスノーランドとフェリス国の騎士が見守っている。
「ミリアちゃんが記憶喪失なのはエドアルド君から聞いている。僕も他言はしていないよ。どうかな?何か思い出してきたことはある?」
「・・・いえ・・・まだ何も」
「そうか・・・」
シルベスターは考える素振りをした。
「ミリアちゃん、君は今誰か好きな人はいるのかい?」
「え・・・?好きな人?」
「そう、誰か気になる人」
(シルベスター様、急に何を言うのかしら。そんな人いないわ)
ミリアは遠くで見守っている騎士たちをぼんやりと見ると、ランドルフと目が合った。するとミリアはオーロラを見に行った日の出来事を思い出した。
(私・・・無意識に彼とキスしようとしてたわ・・・)
急にカーッと顔が熱くなってくる。
「あれ、ミリアちゃん思い当たる人いるのかな」
「そ、そんなことないです。誰もいないです!」
「そっかぁ~」
シルベスターはミリアの心を読んでいるかのごとく、じっとミリアを見ている。
「じゃあ、質問を変えよう。ミリアちゃんは急に体を動かしたくなることはないかな」
「・・・あり・・・ますけど」
「じゃあ、物が落ちそうになったとき、物が地面に落ちる前にその物を拾った経験は?」
「・・・あります」
シルベスターは目線を遠くの木に向ける。
「じゃぁ・・・」
ーーーーーヒュン!!
遠くから何かが猛スピードでシルベスターに向かってくる。
「シルベスター様、危ない!!!!」
ミリアはシルベスターに当たりそうになったその物を必死にパシッと弾いた。騎士たちも焦ったようにこちらに向かってくるが、シルベスターはそれを制止する。
「大丈夫だ。ただのゴムボールだよ」
ミリアが手にしたものを見やる。反射的に手にしたのは、黄色の柔らかいゴムボールであった。
「こ・・・これは・・・」
「ごめんね、試すようなことをして。ミリアちゃんの体はちゃ~んと覚えているんだよ。フェリス国で僕や妹の騎士をしていたことを。君は僕を守ろうとしたんだ」
「私が・・・騎士を・・・?」
「エドアルド君は意地悪だなぁ。君に重要なことを伝えていないんだから」
シルベスターは立ち上がり、ミリアを上から見下ろした。
「君は騎士団で会計士だっただけじゃない。騎士をしていたんだよ。君は強くなろうと毎日頑張っていたじゃないか」
(私が・・・強く・・・??)
ーーーーー『ねぇ、師匠、叶わないと思うけど、僕はもっと強くなって師匠の背中を守るのが夢なんだ』
誰かの広い背中が見える。
ーーーーー『マックス!!』
ミリアは赤毛の男の子を庇い、胸と肩を斬られた場景が浮かんできた。
記憶の中の自分の肩と胸から血がドクドクと流れ出している。
「い、いやぁーーー!!!!」
ミリアは意識を飛ばした。
「いぇ・・・今日はどういったご用件でしょうか」
シルベスターはミリアと二人で話がしたいということだったので、ミリアとシルベスター雪で覆われた庭をゆっくりと散策して、庭の中央にあるベンチに座った。遠くからスノーランドとフェリス国の騎士が見守っている。
「ミリアちゃんが記憶喪失なのはエドアルド君から聞いている。僕も他言はしていないよ。どうかな?何か思い出してきたことはある?」
「・・・いえ・・・まだ何も」
「そうか・・・」
シルベスターは考える素振りをした。
「ミリアちゃん、君は今誰か好きな人はいるのかい?」
「え・・・?好きな人?」
「そう、誰か気になる人」
(シルベスター様、急に何を言うのかしら。そんな人いないわ)
ミリアは遠くで見守っている騎士たちをぼんやりと見ると、ランドルフと目が合った。するとミリアはオーロラを見に行った日の出来事を思い出した。
(私・・・無意識に彼とキスしようとしてたわ・・・)
急にカーッと顔が熱くなってくる。
「あれ、ミリアちゃん思い当たる人いるのかな」
「そ、そんなことないです。誰もいないです!」
「そっかぁ~」
シルベスターはミリアの心を読んでいるかのごとく、じっとミリアを見ている。
「じゃあ、質問を変えよう。ミリアちゃんは急に体を動かしたくなることはないかな」
「・・・あり・・・ますけど」
「じゃあ、物が落ちそうになったとき、物が地面に落ちる前にその物を拾った経験は?」
「・・・あります」
シルベスターは目線を遠くの木に向ける。
「じゃぁ・・・」
ーーーーーヒュン!!
遠くから何かが猛スピードでシルベスターに向かってくる。
「シルベスター様、危ない!!!!」
ミリアはシルベスターに当たりそうになったその物を必死にパシッと弾いた。騎士たちも焦ったようにこちらに向かってくるが、シルベスターはそれを制止する。
「大丈夫だ。ただのゴムボールだよ」
ミリアが手にしたものを見やる。反射的に手にしたのは、黄色の柔らかいゴムボールであった。
「こ・・・これは・・・」
「ごめんね、試すようなことをして。ミリアちゃんの体はちゃ~んと覚えているんだよ。フェリス国で僕や妹の騎士をしていたことを。君は僕を守ろうとしたんだ」
「私が・・・騎士を・・・?」
「エドアルド君は意地悪だなぁ。君に重要なことを伝えていないんだから」
シルベスターは立ち上がり、ミリアを上から見下ろした。
「君は騎士団で会計士だっただけじゃない。騎士をしていたんだよ。君は強くなろうと毎日頑張っていたじゃないか」
(私が・・・強く・・・??)
ーーーーー『ねぇ、師匠、叶わないと思うけど、僕はもっと強くなって師匠の背中を守るのが夢なんだ』
誰かの広い背中が見える。
ーーーーー『マックス!!』
ミリアは赤毛の男の子を庇い、胸と肩を斬られた場景が浮かんできた。
記憶の中の自分の肩と胸から血がドクドクと流れ出している。
「い、いやぁーーー!!!!」
ミリアは意識を飛ばした。
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