秘密の師弟関係

終章:師匠との恋

すれ違い

ミリアは終わる時間が少し遅くなったときにはランドルフの執務室へ寄るようになった。ランドルフもミリアを歓迎して、一緒にお茶をしたりして休憩するのだ。さすがにこの前のようにキスをすることはなくなったが、そっと抱きしめたりして触れあうことはある。


「今日も送っていこう」
「ありがとうございます」


ミリアとランドルフは健全な関係でを保っており、ランドルフもミリアに関係を進めようとはしてこない。




「ミリア、あなたランドルフ騎士団長のことどう思ってるの!?」
「え、まぁ・・・尊敬してますし、一緒にいると安心します」
「はぁ・・・デートもせず、するのはお茶飲んでちょっと抱きしめてそれ以上はせずに家に送るって、ランドルフ騎士団長も健気ねぇ・・・」


今日ミリアは仕事が休みで、ミリアはシャーロットの友人として王城に招待されたのである。
ミリアとシャーロットは、庭で二人だけのお茶会を開催することにした。遠くから次女サリーと騎士団員のランドルフとボブがシャーロットを見守っている。


「ミリア、あなたそろそろランドルフ騎士団長の気持ちに答えてあげないと可哀想よ。今もミリアのこと見つめて尻尾振ってる彼が見えるわ」
「え・・・」

チラリとランドルフを見るも、いつものランドルフが立っているだけだ。


「人の気持ちなんかすぐに変わるんだから。欲求不満にさせちゃったら、経験豊富な女性に心変わりしちゃうかもよ!」
「うぅ・・・」
「だから、ね?できるだけ早く答えてあげなさいな」




ー数日後ー


「しばらくランドルフが席を空けることなったので、副団長である僕が指揮をとることになったので宜しく」


キースが騎士団員たちにそう宣言した。


(師匠、どうしたんだろう)


ミリアとランドルフは昨日まで普通に過ごしていて、何も休むことは聞いていない。しばらくの間ランドルフ不在で騎士団は回っていたのだが、仕事帰りに家に戻り、そろそろ寝ようとしていた時、玄関で護衛の騎士と誰かが言い合っているのが聞こえた。

「許可のない人物の立ち入りは禁止しています
!」
「平民風情が私の命令を聞けないって言うの!?」
「私の上司は殿下ですので!」



(誰だろう)


「どなたでしょうか」


ミリアは玄関を空け、玄関に立っている人物を見やった。騎士は申し訳なさそうに頭を下げた。

「すみません、ミリアさん、この方がどうしてもあなたに会いたいと・・・」


そこには髪を一つに括り、細くて長い手足がよく見える紺色のドレスに身を包んだ綺麗な女性が立っていた。顔の作りも整っており、唇の下にある黒子がまた艶かしい。


(すごく大人っぽい・・・)


「あなたがミリア・ロングかしら」
「はい、そうですけど」
「私はランドルフ様の婚約者のエステル・ド・デルタと申しますわ」


(!?)

エステル・ド・デルタというと、サド侯爵の姪にあたる人物である。エステルは見下したようにミリアをじろじろと観察する。

「お胸はあるみたいだけど、なんだか男っぽい顔ね」
「・・・」
「まぁとにかく外野は引っ込んでなさいな。それじゃあね」



エステルは待たせていた馬車に乗って去っていった。


(師匠はああいうセクシーな人が好みなのか・・・)


ーツキン


ミリアの胸が傷んだ気がした。