秘密の師弟関係

ほのじー

文字の大きさ
上 下
52 / 121
第三章:真実

黒幕③

しおりを挟む
ランドルフは一旦部屋の外に出て、消毒液を他の団員から受け取った。ミリアをベッドの脇に座らせ、顔についた傷を消毒していく。

「痛っ・・・」
「我慢してくれ、ちゃんと消毒しとかないと顔に傷が残ってしまうからな」


顔にガーゼを張り付け、鞭で打たれて腫れた手も消毒し包帯を巻いていく。


「くそっ・・・あいつら、こんな酷いこと・・・」
「いいんです。私がさらし者になってなかったら、シャーロット様が傷つけられていたんですから」


ランドルフの顔が歪む。

「君が俺の背中を支えたいって言ったこと、信じてやれなくてすまなかった。君はあの頃から言ってたのにな」


包帯で巻いた手をそっと持ったままランドルフは放そうとしない。

「しかも金と権力好きの女と一緒にするなんて・・・これまで必死に女性として戦ってきた君を侮辱した。俺は君の師匠失格だ」
「・・・いいえ、襲ってきた数人も倒せなかった私なんかが師匠を支えるなんて、おこがましかったんです。師匠ならあんな奴ら一瞬で倒せましたよね」

ランドルフは膝まずき、ミリアに視線を合わせた。

「いや、俺はやっぱり師匠失格だ。エドだと気づかずに君に惹かれて、勝手に嫉妬して、酷い言葉を吐いて・・・俺はこれ以上君を好きになりたくなくて突き放してしまった」
「師匠・・・」

ランドルフは決意を固めまっすぐにミリアを見つめる。彼からはもう迷いは見えない。


「俺はもう自分に嘘はつかない。俺は・・・君のことが好きだ」
「っ・・・でもっ、私はこんな傷があります」
「傷の一つや二つ何だ。俺は君より酷い傷が数えきれない程あるぞ。・・・しかもな、俺は君のこの傷一つでさえいとおしいと思うんだ」


ミリアの傷を愛おしそうに撫でるランドルフに、ミリアの悲しさは薄れ、キュンと胸が高鳴った。ランドルフの瞳に熱が籠る。ミリアもその瞳に吸い込まれる。


ランドルフの顔がそっと近づき唇が重なりあった。



「ん・・・」
「・・・嫌だったか?」


ミリアは首を横に振った。ランドルフから再び唇が寄せられる。そのキスは優しく、ミリアの心の痛みを溶かしていった。



「ミリア、俺にもう一度チャンスをくれ。君にふさわしい人間になるから」



(キースさんにキスされた時と全然違う・・・胸の奥がキュッとなって・・・何も考えられなくなる)



ミリアがランドルフへの恋心に気づくまで、あともう少し・・・









しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】あなたの妻(Ω)辞めます!

BL / 完結 24h.ポイント:639pt お気に入り:2,176

街を作っていた僕は気付いたらハーレムを作っていた⁉

BL / 連載中 24h.ポイント:4,170pt お気に入り:1,965

「ひみつの巣作り」

BL / 連載中 24h.ポイント:9,600pt お気に入り:3,227

魔女のなりそこない。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:4,802pt お気に入り:778

あたしの日常と妄想…

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:71pt お気に入り:47

【R18】私のものを返してもらうわ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:176

神子のオマケは竜王様に溺愛される《完結》

BL / 完結 24h.ポイント:2,492pt お気に入り:2,145

喪女がビッチな悪役令嬢になるとか、無理ゲー過ぎる!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:2,626

処理中です...