秘密の師弟関係

第三章:真実

葛藤Side:ランドルフ(後)

ヴェール騎士団と練習試合があった日、その練習試合の準備で忙しく、昼休みだが事務仕事を片付けておこうと部屋にこもっていた。そんな中、エドアルドがランドルフの部屋にやってきた。彼は先日渡した封筒を持っていた。


ドサッーー

エドアルドはランドルフの事務机にその封筒を置いた。

「騎士団長さん、僕はこんなお金いらないって言いましたよね。迷惑です、二度と持ってこないでください」
「でもな、エド・・・」
「エドなんて呼ばないでください。僕はあなたと親しくなったつもりはありません。あなたの目は節穴ですか?騎士団長になるんだから頭は悪くないはずですよね。その脳ミソできちんと考えてください。それが分からなければもう二度と姉に近づかないでください。ミリ姉の苦しみも分からない奴に彼女を渡すつもりはないので!」


エドアルドはランドルフを睨み付ける。
その態度にランドルフは動揺で目が泳ぐ。


(俺は何を見落としてるんだ・・・)




ーーー『ねぇ、師匠、叶わないと思うけど、僕はもっと強くなって師匠の背中を守るのが夢なんだ』
『ありがとう、エド。じゃあ俺も頑張らないとな。君に追い付かれちまう』




ふとエドアルドとの会話を思い出す。あの時のエドアルドの笑顔がなぜかミリアの笑顔と重なった。


(なにか・・・なにか分かりそうな気がする・・・)


「では、失礼します」
エドアルドはランドルフの部屋を去っていった。

「エド・・・エドアルド君」

ランドルフは分かりかけた彼の言う答えを求め、部屋を出て彼を追おうとした。すると外では若手の騎士たちが昼休みにも関わらず実剣で打ち合いをしていた。咎めようとしたが、その一人の剣が宙を舞い、エドアルドの方へと向かっていった。




キーーーン


ミリアの短剣がその剣を弾きとばし、エドアルドは頭を抱えてうずくまった。



「・・・」


(おかしい・・・エドであればあの剣を避けることくらい容易なはずだ)


ランドルフは部屋に戻り、目を塞ぐ。しばらくの間ランドルフは冷静になるよう精神を統一させた。

ぐるぐるとランドルフの記憶が押し寄せる。



『師匠、なんで女性は騎士になれないんでしょうか』

『頑張っても僕、全然筋肉つかないんです』

『ねぇ、師匠、叶わないと思うけど、僕はもっと強くなって師匠の背中を守るのが夢なんだ』




『あんた誰だ、しらねーよ』『お前師匠の顔も忘れたのか』

『エドなんて呼ばないでくださいーーー』

『ミリ姉の苦しみも分からない奴に彼女を渡すつもりはないので』



ぐるぐると駆け巡るエドアルドの思い出と、再会したときのエドアルドのリアクション、そして先ほどのエドアルドの言葉、そしてーーーミリアの顔。





「なんてことだ・・・」




すべてのピースが繋がった。




(今すぐ彼女に会いに行って確認しなければ・・・)


ランドルフはキースに少し席を空けると伝え、席を立った。するとシルベスターが部屋にノックもせずに入ってきた。




「ランドルフ!!シャーロットとミリアちゃんが拐われた!!!!」



(なんだって!!)