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第二章:恋の芽
夜のお出かけ②
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「うぅ・・・うううううう」
「はは、ミリちゃん泣きすぎ!」
「だって、主人公がやっと戦争に勝って帰ってきたのに、恋人は病気で死んでたんですよー!ぅうう悲しすぎます」
「ミリちゃん目がうさぎさんみたいに真っ赤だよ。ほら、よしよし」
キースがミリアの頭をそっと撫でる。
その手はいつものように暖かいが、その手が少しずつミリアの首筋の少し裏側へと移動する。
(・・・?)
その手にぐいっと力が入ったと思うと、ミリアの顔がキースの方へと押しやられていた。
チュッーーーー
ミリアが瞳に生暖かさを感じパチリと目を開けるとキースがミリアの涙をペロっと舐めているのがわかった。目をパチパチとしばたかせ現状を把握したミリアの顔はカーーーっと赤くなった。
「なななななななな、何をしてるんですかキースさん!!」
「だってぇそんな無防備な顔されちゃったらキスしちゃうでしょ?」
ポカポカとキースの胸を殴るミリアだがキースは楽しそうに笑っていて反省する様子はない。
(まったく、女ったらしは悪びれもせずこんなことを・・・)
ミリアはむくれながら劇場を後にした。キースの悪戯にも程がある。
「そんなほっぺた膨らましても可愛いだけだよ、ミリちゃん」
「キースさんもう仕事以外で私の半径1m以内に近づくの禁止です」
「え、そんなぁ、ごめんって!」
そんな会話を続けていたところで、劇場の出口付近に豪華な衣装をまとった、四十代程の女性がたたずんでいた。その女性はキースに話しかけた。
「あら、キースじゃないの」
「これはこれは元バロック公爵婦人ではないですか。今はグレイス王女とお呼びした方が?本日も大変お美しい。今度僕もお相手していただきたいものです」
キースは調子よく彼女の手の甲にキスをした。
「今は元ご主人の事で大変な身であるとか」
「ええ、彼が勝手にしたことで迷惑してるのよ。ずっと行動が制限されちゃってたけど、今日やっと監視が解けて外へ出る許可が降りたのよ」
バロック公爵は最近シャーロットを狙った上に麻薬組織に手を出していたという男だ。彼は今監獄で拘束されており、判決は終わっていないが、きっと一生出てくることはないだろう。爵位ももちろん剥奪された。スノーランドの王女で降嫁しこの国にやってきたバロック公爵の妻であったこの方は、最近離婚を成立させた。元バロック公爵のすべての容疑を精査するまで出身であるスノーランドへは帰国できないそうで、暇をもて余しているらしい。
「あら、そこのお方はどなたかしら??」
「ああ、この方はシャーロット様の侍女をしてらっしゃるミリアさんです」
ミリアは敬意を表す礼をし、「ミリア・ロングです」と挨拶した。彼女はジーっとミリアを観察し、なにか物言いたげな表情をしていた。
(やばい、彼女にはあの事がバレてしまうかもしれない)
「あなたご出身はどこなのかしら」
「ストラスブールというここから五時間程の田舎町です」
「ロングなんて姓聞いたことないわね。爵位はお持ちでないの?」
「はい、平民です」
「あら、そう」
彼女は興味を失ったようで、そそくさと去っていったのだった。
「はは、ミリちゃん泣きすぎ!」
「だって、主人公がやっと戦争に勝って帰ってきたのに、恋人は病気で死んでたんですよー!ぅうう悲しすぎます」
「ミリちゃん目がうさぎさんみたいに真っ赤だよ。ほら、よしよし」
キースがミリアの頭をそっと撫でる。
その手はいつものように暖かいが、その手が少しずつミリアの首筋の少し裏側へと移動する。
(・・・?)
その手にぐいっと力が入ったと思うと、ミリアの顔がキースの方へと押しやられていた。
チュッーーーー
ミリアが瞳に生暖かさを感じパチリと目を開けるとキースがミリアの涙をペロっと舐めているのがわかった。目をパチパチとしばたかせ現状を把握したミリアの顔はカーーーっと赤くなった。
「なななななななな、何をしてるんですかキースさん!!」
「だってぇそんな無防備な顔されちゃったらキスしちゃうでしょ?」
ポカポカとキースの胸を殴るミリアだがキースは楽しそうに笑っていて反省する様子はない。
(まったく、女ったらしは悪びれもせずこんなことを・・・)
ミリアはむくれながら劇場を後にした。キースの悪戯にも程がある。
「そんなほっぺた膨らましても可愛いだけだよ、ミリちゃん」
「キースさんもう仕事以外で私の半径1m以内に近づくの禁止です」
「え、そんなぁ、ごめんって!」
そんな会話を続けていたところで、劇場の出口付近に豪華な衣装をまとった、四十代程の女性がたたずんでいた。その女性はキースに話しかけた。
「あら、キースじゃないの」
「これはこれは元バロック公爵婦人ではないですか。今はグレイス王女とお呼びした方が?本日も大変お美しい。今度僕もお相手していただきたいものです」
キースは調子よく彼女の手の甲にキスをした。
「今は元ご主人の事で大変な身であるとか」
「ええ、彼が勝手にしたことで迷惑してるのよ。ずっと行動が制限されちゃってたけど、今日やっと監視が解けて外へ出る許可が降りたのよ」
バロック公爵は最近シャーロットを狙った上に麻薬組織に手を出していたという男だ。彼は今監獄で拘束されており、判決は終わっていないが、きっと一生出てくることはないだろう。爵位ももちろん剥奪された。スノーランドの王女で降嫁しこの国にやってきたバロック公爵の妻であったこの方は、最近離婚を成立させた。元バロック公爵のすべての容疑を精査するまで出身であるスノーランドへは帰国できないそうで、暇をもて余しているらしい。
「あら、そこのお方はどなたかしら??」
「ああ、この方はシャーロット様の侍女をしてらっしゃるミリアさんです」
ミリアは敬意を表す礼をし、「ミリア・ロングです」と挨拶した。彼女はジーっとミリアを観察し、なにか物言いたげな表情をしていた。
(やばい、彼女にはあの事がバレてしまうかもしれない)
「あなたご出身はどこなのかしら」
「ストラスブールというここから五時間程の田舎町です」
「ロングなんて姓聞いたことないわね。爵位はお持ちでないの?」
「はい、平民です」
「あら、そう」
彼女は興味を失ったようで、そそくさと去っていったのだった。
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