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第二章:恋の芽
夜のお出かけ
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「ねーねーミリちゃん、今週末の夜お出かけしない?」
「キースさん、遊ぶ女性なんて選び放題ですよね。なんで私なんかと・・」
「僕はミリちゃんと出かけたいんだよ~劇場のチケットが二枚あるんだ。一緒に行こう、ね?」
「こ、これは・・・幻のフェリス劇団“ナーズ戦記”のチケットじゃないですかっ!!孤児の少年が軍に入り、司令官に成長していく物語っ・・・この原作何回も読み返しましたよ」
「いやぁ、知り合いに劇団の子がいてさ~VIP席のチケットくれたんだよね。ミリちゃん一緒に行ってくれなかったら一枚無駄になっちゃうよ」
「ぐっ・・・し、しょうがないですね。行きましょう」
そして夜。
「ミリちゃん、とっても綺麗だよ!!」
「キースさんも素敵です。こんな綺麗なドレス貸していただいてありがとうございます。私なんかが着るなんて勿体ないです」
「うちの姉のお古なんだけど、君にぴったりだと思ったんだ。彼女も使わないから是非にと言っていたよ」
キースの家はかなり有名な商家で、平民といってもそこらへんの貴族を上回る財産を保有しているとの噂だ。今日お夕方、キースの家の馬車がミリア家に迎えに来た。劇場に行く前にキースの実家に寄るとのことだ。彼の実家はかなりの豪邸で門を入ると使用人と執事が控えていた。
「あらあら、キースが女性をこの家に連れてくるの初めてじゃないの。綺麗な方ね」
「ああ、今からデートなんだ。姉さんの昔買って着てないドレスあっただろ?貸してやってくれよ」
(あんな女性と遊んでるのに実家には連れていかないのかしら・・・)
キースのお姉さんとの挨拶を済ませ、使用人がボルドー色の長袖のイブニングドレスを取り出した。使用人に手伝いを申し込まれたが、ミリアはお断りした。手伝われて肌が見えてはいけないからだ。自分でそのドレスに着替え、ミリアは鏡に映る自分を見つめた。
(肩の傷が見えない長袖のドレスでよかった)
ミリアのいつも着る服は、エドアルドがミリアのために肩の傷が見えない、かつ肌を出せないので地味になりすぎないよう工夫を凝らした服を買ってきてくれるのだ。今回のドレスも長袖だがスカートにスリットがはいっていて足の肌がチラリと見えるようになっている。
もともとノースリーブのドレスは嫌いだった。大きくなっていく胸が目立つのがミリアのコンプレックスだったのだ。動くとき胸が邪魔でいつも小さめのブラジャーに押し付けて着ているのだが、シャーロット様に「お胸が可哀想よ」とお叱りを受けたこともある。
お化粧もほんのり施したミリアはキースの部屋へと通された。彼は黒のスーツにミリアと同じボルドー色のネクタイと胸にはハンカチが入っていた。彼は本当に妖精の国の王子様なんじゃないかとミリアは疑った。
「ミリちゃんをエスコートできるなんて嬉しいよ。今日は楽しもうね」
「は、はい」
馬車ではキースと本についての話題で盛り上がった。彼もミリアと同じく軍記物が好きらしく、「あの戦略はよかった」「ここはこうするべきだった」などと白熱した話ができた。今日見る劇も本当にあった話に少し脚色した物語なのである。
劇場の席までの会場ホールを歩いているとチラチラと視線を感じていた。
『キース様じゃない、隣にいる人は誰かしら』
『なんなのあいつ、キース様に馴れ馴れしいんじゃなくって』
『おい、あの成金一家の放浪息子、今日は特に極上の美女引き連れてるじゃねーか。うらやましい限りだぜ』
こちらにも聞こえるような嫌みな声が聞こえてきたが、キースは気にする様子もない。ミリアは少し気が引けてしまったが、来てしまったにはキースの顔に泥を塗ってはいけないとミリアは堂々と背筋を伸ばしてキースの横を歩いたのだった。
「キースさん、遊ぶ女性なんて選び放題ですよね。なんで私なんかと・・」
「僕はミリちゃんと出かけたいんだよ~劇場のチケットが二枚あるんだ。一緒に行こう、ね?」
「こ、これは・・・幻のフェリス劇団“ナーズ戦記”のチケットじゃないですかっ!!孤児の少年が軍に入り、司令官に成長していく物語っ・・・この原作何回も読み返しましたよ」
「いやぁ、知り合いに劇団の子がいてさ~VIP席のチケットくれたんだよね。ミリちゃん一緒に行ってくれなかったら一枚無駄になっちゃうよ」
「ぐっ・・・し、しょうがないですね。行きましょう」
そして夜。
「ミリちゃん、とっても綺麗だよ!!」
「キースさんも素敵です。こんな綺麗なドレス貸していただいてありがとうございます。私なんかが着るなんて勿体ないです」
「うちの姉のお古なんだけど、君にぴったりだと思ったんだ。彼女も使わないから是非にと言っていたよ」
キースの家はかなり有名な商家で、平民といってもそこらへんの貴族を上回る財産を保有しているとの噂だ。今日お夕方、キースの家の馬車がミリア家に迎えに来た。劇場に行く前にキースの実家に寄るとのことだ。彼の実家はかなりの豪邸で門を入ると使用人と執事が控えていた。
「あらあら、キースが女性をこの家に連れてくるの初めてじゃないの。綺麗な方ね」
「ああ、今からデートなんだ。姉さんの昔買って着てないドレスあっただろ?貸してやってくれよ」
(あんな女性と遊んでるのに実家には連れていかないのかしら・・・)
キースのお姉さんとの挨拶を済ませ、使用人がボルドー色の長袖のイブニングドレスを取り出した。使用人に手伝いを申し込まれたが、ミリアはお断りした。手伝われて肌が見えてはいけないからだ。自分でそのドレスに着替え、ミリアは鏡に映る自分を見つめた。
(肩の傷が見えない長袖のドレスでよかった)
ミリアのいつも着る服は、エドアルドがミリアのために肩の傷が見えない、かつ肌を出せないので地味になりすぎないよう工夫を凝らした服を買ってきてくれるのだ。今回のドレスも長袖だがスカートにスリットがはいっていて足の肌がチラリと見えるようになっている。
もともとノースリーブのドレスは嫌いだった。大きくなっていく胸が目立つのがミリアのコンプレックスだったのだ。動くとき胸が邪魔でいつも小さめのブラジャーに押し付けて着ているのだが、シャーロット様に「お胸が可哀想よ」とお叱りを受けたこともある。
お化粧もほんのり施したミリアはキースの部屋へと通された。彼は黒のスーツにミリアと同じボルドー色のネクタイと胸にはハンカチが入っていた。彼は本当に妖精の国の王子様なんじゃないかとミリアは疑った。
「ミリちゃんをエスコートできるなんて嬉しいよ。今日は楽しもうね」
「は、はい」
馬車ではキースと本についての話題で盛り上がった。彼もミリアと同じく軍記物が好きらしく、「あの戦略はよかった」「ここはこうするべきだった」などと白熱した話ができた。今日見る劇も本当にあった話に少し脚色した物語なのである。
劇場の席までの会場ホールを歩いているとチラチラと視線を感じていた。
『キース様じゃない、隣にいる人は誰かしら』
『なんなのあいつ、キース様に馴れ馴れしいんじゃなくって』
『おい、あの成金一家の放浪息子、今日は特に極上の美女引き連れてるじゃねーか。うらやましい限りだぜ』
こちらにも聞こえるような嫌みな声が聞こえてきたが、キースは気にする様子もない。ミリアは少し気が引けてしまったが、来てしまったにはキースの顔に泥を塗ってはいけないとミリアは堂々と背筋を伸ばしてキースの横を歩いたのだった。
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