27 / 121
第二章:恋の芽
お出かけSide:ランドルフ(中)
しおりを挟む
ランドルフは約束の当日早めに待ち合わせ場所に着き、食事以外にも何か詫びの品物を送ろうと考えていた。時間になっても来ないのでヤキモキしたが、彼女は少し遅れて到着した。いつもとは違いハーフアップにした髪型に血色の良い唇が目につき、思わずまた見とれてしまった。
「すみません、お待たせしました!」
「・・・いや、俺も今着いたところだ」
(今着いたところだなんて、つまらん嘘をついてしまったな)
「その・・・今日はいつもと感じが違うのだな。似合ってる」
「あ、ありがとうございますっ!」
ランドルフは王城で働くにあたり貴族の女性や奥方などを褒めることは慣れているはずなのに、ミリアを褒めるときは何故か凄く照れてしまった。
ランドルフがミリアに始めて会ったときから彼女は表情が乏しかった。ランドルフが土下座した時に少し焦ったような顔をしたくらいで、よく表情が読めなかったし、彼女は相手との距離を必ず図っているように見受けられた。仕事でブラン騎士団員と話しているところを見かけることもあったが、いつも竹刀一本分程度の距離をとり、何かを渡す際にその男が彼女の間合いに入った場合、警戒心がピリピリと伝わってきた。彼女のテリトリー内に入っているのを見たのは第二王女であるシャーロットのみであった。
(まあ表情に関しては人のこと言えんがな・・・)
ランドルフも表情は乏しい方である。特に騎士団長になってから笑った記憶は一切ない。
ミリアは始めは同じように無表情で、歩く際もランドルフからすこし離れた距離を歩いていた。しかし、暫くすると目新しいものを見つけた驚きの表情や買う品物に悩む表情など様々な表情を見せるようになってきた。キョロキョロとしながら動く様子はハムスターのようで可愛らしいとランドルフは思った。
(他の女性と違って野心とか、下心とかが一切見えないんだよな)
ミリアが買うものは全て家での必需品であり、宝石店や洋服屋に連れていっても、「あ、これシャーロット様に合いそう!」などと客観的に傍観しているようで自分が身に付けようという気は一切ないようだった。
しかしランドルフが加治屋に用事があることを思いだし、ついでに行っておこうと思い一緒に店に入るとミリアは目をキラキラさせて武器を眺めているのである。
(彼女に危険を負わせる気はないが、保身のためにも一流の剣を持たせてあげよう)
以前見たミリアが持っていた剣は女性が持つには大きすぎて錆びも酷く、彼女に合っていないように思えた。
(あれではいざというときに体の重心が聞き手に流されてしまうだろう)
加治屋のマスター(昔からの付き合いである)に彼女に合う短剣はないか、この加治屋で一番良いものを用意してくれ、と言うと奥から王族の子供用に作ったが切れ味が良すぎて結局子供が持つには危ないということでキャンセルされたという短剣を取り出してきた。微調整もあるのでミリアには少し他の店で見といてもらうように伝え、柄にはブラック・スター・サファイアを埋め込み、鞘には東洋のみ咲くと言われている桔梗の花模様を施した。加治屋のマスターには無理を言ったが、その分金額は弾ませた。この短剣で二、三ヶ月の給料は飛んだだろうが、後悔はなかった。
「まいどあり。よっぽど彼女のこと大事にしとるんじゃな」
「まあ保護者みたいなものだ」
「そうかい、まあそう言うことにしといてやろうかの」
加治屋のマスターとはそこで別れたが、ミリアの姿が見えない。遠くまで進んでいってしまったのだろうか。一件一件確認するも見つからない。路地裏まで確認しながら歩くこと数十分。ミリアが男に絡まれているのが見えた。
「すみません、お待たせしました!」
「・・・いや、俺も今着いたところだ」
(今着いたところだなんて、つまらん嘘をついてしまったな)
「その・・・今日はいつもと感じが違うのだな。似合ってる」
「あ、ありがとうございますっ!」
ランドルフは王城で働くにあたり貴族の女性や奥方などを褒めることは慣れているはずなのに、ミリアを褒めるときは何故か凄く照れてしまった。
ランドルフがミリアに始めて会ったときから彼女は表情が乏しかった。ランドルフが土下座した時に少し焦ったような顔をしたくらいで、よく表情が読めなかったし、彼女は相手との距離を必ず図っているように見受けられた。仕事でブラン騎士団員と話しているところを見かけることもあったが、いつも竹刀一本分程度の距離をとり、何かを渡す際にその男が彼女の間合いに入った場合、警戒心がピリピリと伝わってきた。彼女のテリトリー内に入っているのを見たのは第二王女であるシャーロットのみであった。
(まあ表情に関しては人のこと言えんがな・・・)
ランドルフも表情は乏しい方である。特に騎士団長になってから笑った記憶は一切ない。
ミリアは始めは同じように無表情で、歩く際もランドルフからすこし離れた距離を歩いていた。しかし、暫くすると目新しいものを見つけた驚きの表情や買う品物に悩む表情など様々な表情を見せるようになってきた。キョロキョロとしながら動く様子はハムスターのようで可愛らしいとランドルフは思った。
(他の女性と違って野心とか、下心とかが一切見えないんだよな)
ミリアが買うものは全て家での必需品であり、宝石店や洋服屋に連れていっても、「あ、これシャーロット様に合いそう!」などと客観的に傍観しているようで自分が身に付けようという気は一切ないようだった。
しかしランドルフが加治屋に用事があることを思いだし、ついでに行っておこうと思い一緒に店に入るとミリアは目をキラキラさせて武器を眺めているのである。
(彼女に危険を負わせる気はないが、保身のためにも一流の剣を持たせてあげよう)
以前見たミリアが持っていた剣は女性が持つには大きすぎて錆びも酷く、彼女に合っていないように思えた。
(あれではいざというときに体の重心が聞き手に流されてしまうだろう)
加治屋のマスター(昔からの付き合いである)に彼女に合う短剣はないか、この加治屋で一番良いものを用意してくれ、と言うと奥から王族の子供用に作ったが切れ味が良すぎて結局子供が持つには危ないということでキャンセルされたという短剣を取り出してきた。微調整もあるのでミリアには少し他の店で見といてもらうように伝え、柄にはブラック・スター・サファイアを埋め込み、鞘には東洋のみ咲くと言われている桔梗の花模様を施した。加治屋のマスターには無理を言ったが、その分金額は弾ませた。この短剣で二、三ヶ月の給料は飛んだだろうが、後悔はなかった。
「まいどあり。よっぽど彼女のこと大事にしとるんじゃな」
「まあ保護者みたいなものだ」
「そうかい、まあそう言うことにしといてやろうかの」
加治屋のマスターとはそこで別れたが、ミリアの姿が見えない。遠くまで進んでいってしまったのだろうか。一件一件確認するも見つからない。路地裏まで確認しながら歩くこと数十分。ミリアが男に絡まれているのが見えた。
13
お気に入りに追加
796
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる