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第二章:恋の芽
お出かけSide:ランドルフ(中)
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ランドルフは約束の当日早めに待ち合わせ場所に着き、食事以外にも何か詫びの品物を送ろうと考えていた。時間になっても来ないのでヤキモキしたが、彼女は少し遅れて到着した。いつもとは違いハーフアップにした髪型に血色の良い唇が目につき、思わずまた見とれてしまった。
「すみません、お待たせしました!」
「・・・いや、俺も今着いたところだ」
(今着いたところだなんて、つまらん嘘をついてしまったな)
「その・・・今日はいつもと感じが違うのだな。似合ってる」
「あ、ありがとうございますっ!」
ランドルフは王城で働くにあたり貴族の女性や奥方などを褒めることは慣れているはずなのに、ミリアを褒めるときは何故か凄く照れてしまった。
ランドルフがミリアに始めて会ったときから彼女は表情が乏しかった。ランドルフが土下座した時に少し焦ったような顔をしたくらいで、よく表情が読めなかったし、彼女は相手との距離を必ず図っているように見受けられた。仕事でブラン騎士団員と話しているところを見かけることもあったが、いつも竹刀一本分程度の距離をとり、何かを渡す際にその男が彼女の間合いに入った場合、警戒心がピリピリと伝わってきた。彼女のテリトリー内に入っているのを見たのは第二王女であるシャーロットのみであった。
(まあ表情に関しては人のこと言えんがな・・・)
ランドルフも表情は乏しい方である。特に騎士団長になってから笑った記憶は一切ない。
ミリアは始めは同じように無表情で、歩く際もランドルフからすこし離れた距離を歩いていた。しかし、暫くすると目新しいものを見つけた驚きの表情や買う品物に悩む表情など様々な表情を見せるようになってきた。キョロキョロとしながら動く様子はハムスターのようで可愛らしいとランドルフは思った。
(他の女性と違って野心とか、下心とかが一切見えないんだよな)
ミリアが買うものは全て家での必需品であり、宝石店や洋服屋に連れていっても、「あ、これシャーロット様に合いそう!」などと客観的に傍観しているようで自分が身に付けようという気は一切ないようだった。
しかしランドルフが加治屋に用事があることを思いだし、ついでに行っておこうと思い一緒に店に入るとミリアは目をキラキラさせて武器を眺めているのである。
(彼女に危険を負わせる気はないが、保身のためにも一流の剣を持たせてあげよう)
以前見たミリアが持っていた剣は女性が持つには大きすぎて錆びも酷く、彼女に合っていないように思えた。
(あれではいざというときに体の重心が聞き手に流されてしまうだろう)
加治屋のマスター(昔からの付き合いである)に彼女に合う短剣はないか、この加治屋で一番良いものを用意してくれ、と言うと奥から王族の子供用に作ったが切れ味が良すぎて結局子供が持つには危ないということでキャンセルされたという短剣を取り出してきた。微調整もあるのでミリアには少し他の店で見といてもらうように伝え、柄にはブラック・スター・サファイアを埋め込み、鞘には東洋のみ咲くと言われている桔梗の花模様を施した。加治屋のマスターには無理を言ったが、その分金額は弾ませた。この短剣で二、三ヶ月の給料は飛んだだろうが、後悔はなかった。
「まいどあり。よっぽど彼女のこと大事にしとるんじゃな」
「まあ保護者みたいなものだ」
「そうかい、まあそう言うことにしといてやろうかの」
加治屋のマスターとはそこで別れたが、ミリアの姿が見えない。遠くまで進んでいってしまったのだろうか。一件一件確認するも見つからない。路地裏まで確認しながら歩くこと数十分。ミリアが男に絡まれているのが見えた。
「すみません、お待たせしました!」
「・・・いや、俺も今着いたところだ」
(今着いたところだなんて、つまらん嘘をついてしまったな)
「その・・・今日はいつもと感じが違うのだな。似合ってる」
「あ、ありがとうございますっ!」
ランドルフは王城で働くにあたり貴族の女性や奥方などを褒めることは慣れているはずなのに、ミリアを褒めるときは何故か凄く照れてしまった。
ランドルフがミリアに始めて会ったときから彼女は表情が乏しかった。ランドルフが土下座した時に少し焦ったような顔をしたくらいで、よく表情が読めなかったし、彼女は相手との距離を必ず図っているように見受けられた。仕事でブラン騎士団員と話しているところを見かけることもあったが、いつも竹刀一本分程度の距離をとり、何かを渡す際にその男が彼女の間合いに入った場合、警戒心がピリピリと伝わってきた。彼女のテリトリー内に入っているのを見たのは第二王女であるシャーロットのみであった。
(まあ表情に関しては人のこと言えんがな・・・)
ランドルフも表情は乏しい方である。特に騎士団長になってから笑った記憶は一切ない。
ミリアは始めは同じように無表情で、歩く際もランドルフからすこし離れた距離を歩いていた。しかし、暫くすると目新しいものを見つけた驚きの表情や買う品物に悩む表情など様々な表情を見せるようになってきた。キョロキョロとしながら動く様子はハムスターのようで可愛らしいとランドルフは思った。
(他の女性と違って野心とか、下心とかが一切見えないんだよな)
ミリアが買うものは全て家での必需品であり、宝石店や洋服屋に連れていっても、「あ、これシャーロット様に合いそう!」などと客観的に傍観しているようで自分が身に付けようという気は一切ないようだった。
しかしランドルフが加治屋に用事があることを思いだし、ついでに行っておこうと思い一緒に店に入るとミリアは目をキラキラさせて武器を眺めているのである。
(彼女に危険を負わせる気はないが、保身のためにも一流の剣を持たせてあげよう)
以前見たミリアが持っていた剣は女性が持つには大きすぎて錆びも酷く、彼女に合っていないように思えた。
(あれではいざというときに体の重心が聞き手に流されてしまうだろう)
加治屋のマスター(昔からの付き合いである)に彼女に合う短剣はないか、この加治屋で一番良いものを用意してくれ、と言うと奥から王族の子供用に作ったが切れ味が良すぎて結局子供が持つには危ないということでキャンセルされたという短剣を取り出してきた。微調整もあるのでミリアには少し他の店で見といてもらうように伝え、柄にはブラック・スター・サファイアを埋め込み、鞘には東洋のみ咲くと言われている桔梗の花模様を施した。加治屋のマスターには無理を言ったが、その分金額は弾ませた。この短剣で二、三ヶ月の給料は飛んだだろうが、後悔はなかった。
「まいどあり。よっぽど彼女のこと大事にしとるんじゃな」
「まあ保護者みたいなものだ」
「そうかい、まあそう言うことにしといてやろうかの」
加治屋のマスターとはそこで別れたが、ミリアの姿が見えない。遠くまで進んでいってしまったのだろうか。一件一件確認するも見つからない。路地裏まで確認しながら歩くこと数十分。ミリアが男に絡まれているのが見えた。
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