秘密の師弟関係

ほのじー

文字の大きさ
上 下
19 / 121
第一章:再会

茶会の裏側(中)Side:影B

しおりを挟む
ミリアが拘束されていた場所はもぬけの殻だが、影はその後の犯人達を追撃し、彼らのアジトを突き止めた。そこは三階建ての大きな建物で、その場所の入り口の前にランドルフはドンと構え、足を大きく振り上げバン!!と扉を蹴飛ばした。扉は無惨に吹き飛んでいく。

(おいおい、あんな丈夫そうな扉ひと蹴りかよ)

主人であるシルベスターに命令を受け、ランドルフを追ってきたベテランのかげである。裏屋根から回ろうかと思っていたが、あっけなく正面を破っていったランドルフに置いていかれないように影は壊れた扉の破片を踏まないようにそっと入って行った。

(おっとっと、もう何人か倒れてやがる)

ランドルフは小物とみるや、剣も出さずに拳で殴り気絶させていっていた。次々と男が出てくるが、一人一人拳でなぐったり、剣で斬りつけたりしていった。数人一度に襲いかかろうとしている者もいたが、ランドルフにはかすりもしない。そして最上階の部屋に二十人程の武器を持った男たちとランドルフが対峙しているのが見えた。影は隣の部屋に入り、ひょいっと天井裏によじ登った。そして空気孔を通り、大部屋の見える位置まで移動した。

(ん??おいおい、もう殆んど倒れてるじゃねーか!)

ランドルフから目を離して天井裏に移動した時間約六十秒。その時間でランドルフは剣を振り上げ敵を斬っていった。

その部屋は麻薬や毒薬の製造場所となっていて、部屋の一角にはミリアが渡されたのと同じ瓶が無数に並んでいた。

(全員殺してくれるなよ~団長さん)

ランドルフは怒りに身を任せて斬っているように見えるが、幹部らしき人物は残していたようだ。残り一人となった時、諦めずに襲ってきた男をひょいっとかわし、右足の脛を斬りつけた。男は足を引きずって逃げようとするが、ランドルフは武器を取り上げ、男を膝まずかせた。

「さあ、黒幕を吐いてもらおうか」
「さあな、しらねーよ」

ミリアを拘束していたターバンの男がしらをきる。

ランドルフは剣を納め、手をボキボキと鳴らしターバンの男が先ほど持っていた剣を、バキッと折り曲げた。手から血がポタ、ポタ、と流れているが、ランドルフは気にする様子はない。

「左足もこんな感じで折ってやろうか?もう歩けなくなるなぁ。可哀想に」
「ぐっ・・・黒幕はあの第二王女の侍女の実家だ、サブリナって奴の家の帽子屋だ」
「ふん、嘘をつけ、こんな指示を出せるのはもっと上の人間だ。爵位持ちで、しかも相当な財力があるはずだ」

ランドルフは、ぐりぐりと男の左足を踏む。

「うぐぅ・・・!」

(うわー、どっちが悪役か分かんねーよ)

「・・・っバロック公爵だよ!公爵が俺たち身寄りのない集団に麻薬や毒の製作をさせたんだ。公爵が娼婦との間で産んだ隠し子に侍女をさせてて、そいつが毒を仕組むはずだよ」

男は観念したようにすべて答えていった。

「命拾いしたな。お前にはまだ証言してもらわねばならんからな。この証拠となる毒薬も持っていかそう」

国内の犯罪を取り締まるヴェール騎士団の隊員達が数人入ってきた。彼らは上から麻薬・毒薬製造の現場を押さえるように言われていたのだが、着いたときにはランドルフによりすべて終わらされていた。ヴェール騎士団員は、まだ息のある男達に手錠をし、ぞろぞろと連れていった。

「ブラン騎士団、団長殿!ご協力ありがとうございました!証拠をすべて押収しました!」
「ご苦労、俺は今からバロック公爵家に行って、罪を全部吐かせてくる」

(うわぁ~こりゃ今日中に片付くかもしれねーな)

このアジトには合計五十人程が潜んでいた。それを全てランドルフが一人で始末したのだ。
この事件をきっかけに、ヴェール騎士団ではランドルフのことを‘疾風の鬼神’と呼ぶようになった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...