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第一章:再会
過去の記憶
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ーー六年前ーー
「いやはや、まだまだ若いと思っとったけど、ワシも年じゃのう。ふぉっふぉっふぉっ」
この寂れた剣道場の主人であるこの老人、彫りが深くかなり整った顔をしているのだが、額から右目にかけてくっぱりと裂けた傷があり、右目はすでに視力を失っている。ギロッと開くもう片方の目は酷く充血し、いわゆる“ザ・悪人顔”である。彼が街に繰り出せば女であれば恐怖に叫び、子供であれば泣き出してしまうのが常であり、今では田舎であるストラスブールという場所に引きこもっている。そんな彼、今は車椅子に乗り、剣道場の生徒たち十数人がビシッと整列している中、なになにやら伝えなければならないことがあるようだ。
「ちょっと隣街まで馬を走らせとったら、急に橋が崩れてしもての、幸い下は浅瀬の川やったんじゃが、右腕と右足を骨折してしもたわ」
橋から落ちたら普通は無事ではないのだが、この老人、若いときであれば無傷であったのに・・・と悔しそうに唇を噛む。
「それでワシは王都の病院で手術せねばならん。ついでに色々することがあるで、一年半程ここを留守にするわい」
剣道場の生徒たちがざわつく。
「なぁに、安心せい。ワシの代わりにとっても良い奴を連れてきたでの」
そう言って剣道場から出てきたのは、だいたい二十歳前半の黒髪で黒い瞳の青年だ。背は二メートルは近いだろう、体つきはスラッとしているにもかかわらず、半袖シャツの間からムッチリとした、無駄のない筋肉がむき出している。足は袴で見えないが、こちらにもずっしりとした筋肉が隠れているようだ。
「今日から一年半、こやつがおまえさんらの師匠だ」
「いやはや、まだまだ若いと思っとったけど、ワシも年じゃのう。ふぉっふぉっふぉっ」
この寂れた剣道場の主人であるこの老人、彫りが深くかなり整った顔をしているのだが、額から右目にかけてくっぱりと裂けた傷があり、右目はすでに視力を失っている。ギロッと開くもう片方の目は酷く充血し、いわゆる“ザ・悪人顔”である。彼が街に繰り出せば女であれば恐怖に叫び、子供であれば泣き出してしまうのが常であり、今では田舎であるストラスブールという場所に引きこもっている。そんな彼、今は車椅子に乗り、剣道場の生徒たち十数人がビシッと整列している中、なになにやら伝えなければならないことがあるようだ。
「ちょっと隣街まで馬を走らせとったら、急に橋が崩れてしもての、幸い下は浅瀬の川やったんじゃが、右腕と右足を骨折してしもたわ」
橋から落ちたら普通は無事ではないのだが、この老人、若いときであれば無傷であったのに・・・と悔しそうに唇を噛む。
「それでワシは王都の病院で手術せねばならん。ついでに色々することがあるで、一年半程ここを留守にするわい」
剣道場の生徒たちがざわつく。
「なぁに、安心せい。ワシの代わりにとっても良い奴を連れてきたでの」
そう言って剣道場から出てきたのは、だいたい二十歳前半の黒髪で黒い瞳の青年だ。背は二メートルは近いだろう、体つきはスラッとしているにもかかわらず、半袖シャツの間からムッチリとした、無駄のない筋肉がむき出している。足は袴で見えないが、こちらにもずっしりとした筋肉が隠れているようだ。
「今日から一年半、こやつがおまえさんらの師匠だ」
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