上 下
4 / 37

押しカプ発見!!

しおりを挟む

あれから一週間が経ち、エリカは数組のカップルを覗き見していた。どれも素晴らしく、毎日夢のような世界に昇天しそうな気持ちになる。


「はぁ~、とうとう今日は、第二選考の日ね」


第一王子はまだ候補者たちに姿を表していない。第二次選考で初めて彼が現れるのだが、女性と戯れる第一王子に嫉妬した警備にあたる騎士団長が、始めて彼に告白するシーンがあるのだ。


(これだけはっ・・・見逃せません!!)


エリカは鼻の穴を広げ、意気込んだ。第一王子と騎士団長のカップリングはエリカの大のお気に入りで、携帯の待ち受け画面にもしていたくらいだ。


「では皆さん、第二選考を始めます。今回は王子とお茶会をしていただき、半分の方が選考に落ちることとなります」
『は、半分も!?』


ざわざわと令嬢たちが不安そうにしている。伯爵令嬢ローズはまだ自信あり気だ。


(できるだけ目立たないようにして、落ちないようにだけしないと)


ゲームの世界でエリカは最終選考にまで上り詰めている。理由は害がなさそうだからだ。最終選考に残るのは伯爵家のローズ、伯爵家のアルマ、男爵家ネネ、そして子爵家エリカである。


(伯爵家の二人は・・・政治的な選考だけどね)


どうしても政治的権力を持つ伯爵家の二人の令嬢は最終選考まで残さないと親たちからのやっかみが怖いのだ。残り二人はただただ王子が無害そうな人物を選んだだけである。


(まあ最後には第二王子に国王の権利を譲って、独身を貫いたんだっけ・・・正しく、純・愛・・・)


エリカはニヤケそうになる顔を引き締め第二選考のお茶会に進んでいった。


『キャァァァア、レオン王子よぉ!!』


冷静になれない令嬢たちが黄色い声をあげた。王子の隣は伯爵令嬢二人が陣取り、エリカは一番遠い席だが、第一王子と騎士団長を同時に眺めることのできる席に座った。


(うわ~特等席だな~ここは)


エリカは真ん中に座る王子レオンを見た。彼の金色に輝く髪は美しく、晴れた日の海のような青い瞳は多くの女性を魅了する。細身であるのに筋肉が程よくつき、背もスラリと高い。


『はぁ~、王子様・・・すてきぃ』


思わず声が漏れてしまう令嬢もいて、皆が彼に注目している。


「やあ、待たせたかい。わぁ、皆蝶のように美しいね」


多くの令嬢が着飾り、まるで花に群がる蝶のようである。エリカは王城に着ていくようなドレスがなかったので、母から貰ったものをリメイクした少しくすんだピンク色のドレスを着ていた。


(おおおおおおお、嫉妬しておりますぞ、騎士団長・・・あっ、今レオン王子、ちらっと団長見た!!)


レオンの斜め後ろに控えるのは大きな体をした騎士団長ビッグだ。彼は孤児で、孤児院の前に捨てられていたそうだ。既にその時から体が大きかったのでビッグbigという名前がついたそうである。


(想像以上に・・・でかい・・・)


どこの筋肉も盛り上がり、腕の大きさは平均男性のの二倍はあるかもしれない。少しうねりのある黒髪で、整った彫りの深い顔をしている。騎士団の制服に身を包んだ彼は、騎士団でもとても人気があり令嬢が彼のために練習試合を見に来る程だ。


(でも、あの怖い顔を笑顔にするのは、レオン王子だけなのよね~)


エリカは二人の様子をじっと観察した。レオンは女性たちと会話に花を咲かせており、レオンの横でローズがレオンの腕に自身の腕を絡ませた。ローズはわざとらしく豊満な胸を押しつけていたのだが、ビッグがそれを見てピリッと殺気が飛んだ。


(ひっ・・・こわ・・・)


その殺気に気がついたのはエリカとレオンだけで、レオンも時々彼の様子を伺っている。


(うわ~、こんだけあからさまで気づかないって、どうなのさ)


ビッグの瞳は獰猛な野獣ようにぎらついている。茶会も終盤となり、エリカは冷めたお茶を喉に流し込んだ。


「では、明日二次選考の結果を発表いたしますので、お帰りください」


進行の男がそう言い、女性たちは名残惜しそうに帰っていった。レオン王子は「またね、子猫ちゃんたち」と言って帰っていった。


(さあさあ、私のお仕事はこれからですよぉ~!!)
しおりを挟む
感想 83

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~

ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。 ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。 一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。 目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!? 「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ヤンデレ騎士団の光の聖女ですが、彼らの心の闇は照らせますか?〜メリバエンド確定の乙女ゲーに転生したので全力でスキル上げて生存目指します〜

たかつじ楓*LINEマンガ連載中!
恋愛
攻略キャラが二人ともヤンデレな乙女ーゲームに転生してしまったルナ。 「……お前も俺を捨てるのか? 行かないでくれ……」 黒騎士ヴィクターは、孤児で修道院で育ち、その修道院も魔族に滅ぼされた過去を持つ闇ヤンデレ。 「ほんと君は危機感ないんだから。閉じ込めておかなきゃ駄目かな?」 大魔導師リロイは、魔法学園主席の天才だが、自分の作った毒薬が事件に使われてしまい、責任を問われ投獄された暗黒微笑ヤンデレである。 ゲームの結末は、黒騎士ヴィクターと魔導師リロイどちらと結ばれても、戦争に負け命を落とすか心中するか。 メリーバッドエンドでエモいと思っていたが、どっちと結ばれても死んでしまう自分の運命に焦るルナ。 唯一生き残る方法はただ一つ。 二人の好感度をMAXにした上で自分のステータスをMAXにする、『大戦争を勝ちに導く光の聖女』として君臨する、激ムズのトゥルーエンドのみ。 ヤンデレだらけのメリバ乙女ゲーで生存するために奔走する!? ヤンデレ溺愛三角関係ラブストーリー! ※短編です!好評でしたら長編も書きますので応援お願いします♫

処理中です...