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すれ違い~ライト視点~

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エリックという男を心配するセナ、そしてお互いを知り尽くしているような関係性にライトは胸の痛みを感じた。


(セナが・・・幸せならそれでいい)


制限は設けるが、エリックの城での滞在を許可した。頭のキレそうな男である。国に帰れば不自由なく暮らせるにも関わらず捕虜のような状態でもセナの側をはなれないと言って留まった。


(そこまでセナを・・・愛しているのか)


ライトはセナとの部屋に鍵をかけ、セナがライトの部屋に来れないようにした。無駄に深酒をして夜遅く部屋に戻り、鍵のかかった部屋を見る。灯りがついておらず、セナはきっと寝ているのだろう。彼女の温もりが、これだけ恋しいとは思わなかった。


(今日は・・・一段と寒い)



ライトは無理やり目を瞑り、眠ろうとした。









──コンコン──


「どうぞ」


ふとエリックという男が気になり、彼の部屋に様子を伺いに行った。身を浄められ、白のゆったりとした服装に身を包み堂々としてたたずまう彼は、聖人のように美しく見えた。


「・・・どうだ、ここの生活は。辛いのであれば帰っても良いんだぞ」
「いえ・・・セナの側を離れるつもりはありません」
「彼女は私の妻だ。彼女とは一生結婚はできないし、家庭を持つことはできないのにか?」
「ええ・・・私は彼女の娼夫に身を落としてでも、側にいるでしょう。私と彼女は一心同体ですから」


彼の言葉は深い愛情と捉える人もいるだろう。しかしライトはそうは思えなかった。穏やかで優しげな表情は仮面のように固定されたままで、感情を全て押し殺しているように思えた。


(聖人の皮を被った悪魔に見えるのは私だけか・・)


そんなことを思っていると、エリックが口を開いた。


「セナはあなたを恨んでおられるようですよ。いっそ殺してほしかったと」
「・・・それは、彼女が生きる幸せを知らないからだ」
「まぁ・・・寝首をかかれないよう気をつけてください。彼女の強さは・・・あなたは良く知っているはずだ・・・」


(セナがそんなことする訳あるか)


「彼女の心は、いつでも私にあるのです。あなたに向かうことは、ない」


ライトは呆れてその場を後にしようと扉を開ける。


──ピリッ──


ライトは振り返った。なぜか背筋に殺気のような痺れを感じる。そこにいるのはにっこりと笑いながら佇むエリックという男だけだ。


「何か?」
「いや、何もない・・・」


(気のせいか・・・)


ライトは扉を開け、厳重に鍵を閉めた。
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