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小さな晩餐会

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「ライトを学生時代から知っているのか」
「そうなんだよぉ~こいつったら堅物でさぁ、剣の練習ばっかしてて」
「へぇ・・・なんだか想像できるな」


シュバルツは会話上手で、セナに色々なことを教えてくれた。ライトは人を寄せ付けず、シュバルツは心配して声をかけたら剣の練習を何度も付き合わされたそうだ。


「こいつ、顔がいいから女がいっぱい寄ってくるんだけど、ずっと無表情だし威圧して女たち怖がらせてたんだよ」
「・・・へぇ」


(やっぱりライトはモテるんだな・・・こんなかっこいいもんな)


「侯爵家のお嬢さんにも迫られてたっけ。あの人はめげずに何度もライトに迫ってたな~。不意打ちでキスまでされてたっけ」
「はぁ・・・お前、そんなことよく覚えているな」


──ツキン──


(キスを・・・?)


セナはライトとキスをしたことがない。夫婦では当たり前であると侍女の話で聞いたことがあるが、ライトはセナの命を助けるために結婚したのであって好き同士だから結婚した訳ではない。


「・・・どうした、セナ」
「いや・・・何もない」


セナの意識が飛んでいたようだ。沈んだ心に気づかれたくなくて、セナはわざと明るい声を出し、それからもシュバルツの話を聞いていたのだが、その間ライトの顔を見ることができなかった。








シュバルツとライトは不思議そうに出てきた歪な形のデザートを見ている。美味しい上に素晴らしい見た目の料理が続いたので、なぜこんなものが出てきたのかと思ったのだろう。


「す、すまない・・・こんなもの食べれないよな。い、いますぐ片付けてもらうように言おう」
「・・・これは、セナが?」
「ああ。初めてだったから難しくてな。その、味は悪くないそうなんだが見た目がな」


そうセナが言うとライトはアップルパイを口に入れた。モグモグとそれを食べきり、シュバルツの目の前にあった皿を取ってそれも食べ始めた。


「うん、上手いぞ」
「ちょ、ちょっと!僕もセナちゃんの手料理食べたかった!!」


きっと無理してライトは食べているのだろう。セナはそれでも食べてくれるライトに心が温かくなった。


「セナ、お前は全部食べないのか?」
「わ、私は試食したから」


セナの皿の上で少し残ったパイを見てライトはそう言った。


「じゃあその残りも貰おう。食べさせてくれ」
「え・・・わ、分かった」


セナはフォークとナイフで切り分け口を開けるライトの口元に持っていった。それをライトはモグモグと口を動かす。


「もう一口」
「ああ」


そんなやり取りが続き、セナのアップルパイもライトが完食してしまった。ライトが「美味しかった」と甘い顔をセナに向け、セナは顔を赤くして俯いてしまう。


「ぐえぇ・・・なにその砂吐くほど甘い雰囲気は・・・なんかご馳走さま」
「「ん?」」
「二人とも気づいてないのがまた・・・鈍感同士大変そうだな・・・」


ぼそぼそとシュバルツが独り言を言っている。楽しく晩餐が終わり、ライトがシュバルツを帰そうとするも、一杯だけ付き合えと言ってシガールームに二人は入っていった。





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