上 下
11 / 38

しおりを挟む

(あったかい・・・きもちいい・・・)


固くて広い、心地の良い感触が頬に当たっている。ここにはもう、牢屋の冷たさはない。


「んん・・・」


パチパチと目を開けると、目の前には男性の胸があり、セナはがっしりと抱き抱えられていた。恐る恐る上を見ると、すやすやとライトが眠っている。


──ドキン──


(そうだった・・・私はライトの奥さんになったんだ)


ライトは昨日ずっと厳しい顔をしていたが、眠っている時の顔は穏やかだ。胸から匂い立つ男の香りを嗅ぐと、なぜかセナの鼓動が速くなった。


「ん・・・」


眠りから覚め、胸元に気配を感じたのかライトとは少し下を見ると、彼と目が合った。


「お、おはようライト」
「・・・おはよう」


彼の穏やかだった顔が厳しい顔つきになる。


「よく、寝れたか?」
「ああ、ライトの胸の中はとても気持ちがいいのだな。本当にぐっすり寝れた」
「・・・」


ライトは黙りこんだ。セナは、もしかするとライトは寝心地が悪かったのかと不安になった。


「すまない・・・。もしかして駄目だった・・・か?」


上目遣いにライトを見て様子を伺っていると、眉間にシワが寄る。布団の中で固いものがフィーヌに当たるが、もしかすると彼は寝ている間も帯剣しているのかもしれない。


「構わない」
「いいのか?」
「ああ」
「そうか・・・」


安心してホッと息を吐くとライトはセナの髪をくしゃくしゃと掻き乱した。そして髪の上にキスをする。


「っ・・・///」


セナは男性にそんな扱いを受けたこともなく、キスもしたことはなかった。頭にとはいえキスをされ、セナはドキドキと胸が高鳴った。


「す、すまない。つい・・・」


セナはブンブンと顔を振った。男性に触られたことがあるが、気持ち悪い感情しか芽生えなかった。しかしライトに触れられても全く嫌な感情は芽生えない。


(顔が・・・なんだか熱いな)


セナは暑さを感じ、布団から飛び出た。窓からの朝日の光でセナの姿がはっきりと映る。



──バタン!!──



ライトが逃げるようにドアに駆け寄り、素早く部屋を出ていった。外でガシャン、ドシン、と何か倒れる音がする。



(どうしたんだ?何か怒らせてしまったか?)



そう思っていると昨日の侍女たちが部屋に入ってくる。


「おはようございます、セナ様・・・お着替えを致しましょうね」
「ありがとう。今ライトが慌てて出てったようだが、私は何かしてしまったのだろうか」
「いえ、セナ様。きっとセナ様のお美しい姿を見て恥ずかしくなってしまったのでしょう」


(私の、美しい姿・・・?)



「ま、まさか。私が美しくなんか・・・」
「何を仰るやら!!この白銀の髪にまっ白なお肌・・・」
「小さいお顔に控えめな唇・・・」
「そしてこの小柄な体に付いた豊満なお胸!!」

昨日途中で出ていってしまった侍女を筆頭に鼻息をフーフーと鳴らしながら興奮した様子で熱弁され侍女たちがグイグイと迫ってきたのでセナは頷くしかない。


(ライトが・・・私を美しいと思ってくれてるのか?)


セナは、自身が女性として見られていると思わず意識していなかったのだが、急にライトにどう思われているのか気になり顔を赤くする。


「あらあら」
「まあまあ」


侍女たちがセナの顔が赤くなるのを見て、フフフと笑っている。


「さあ、今日も綺麗に着飾りましょうね、セナ様」


そして侍女たちはセナにどの衣装を着せるか口論をし始める。セナが昨日の服で良いと言うと、なぜか侍女たちに怒られ、セナは黙って彼女たちのされるがままとなったのだった。

しおりを挟む
感想 65

あなたにおすすめの小説

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

嫌われ女騎士は塩対応だった堅物騎士様と蜜愛中! 愚者の花道

Canaan
恋愛
旧題:愚者の花道 周囲からの風当たりは強いが、逞しく生きている平民あがりの女騎士ヘザー。ある時、とんでもない痴態を高慢エリート男ヒューイに目撃されてしまう。しかも、新しい配属先には自分の上官としてそのヒューイがいた……。 女子力低い残念ヒロインが、超感じ悪い堅物男の調子をだんだん狂わせていくお話。 ※シリーズ「愚者たちの物語 その2」※

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...