王子の影と王妃の光

ほのじー

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番外編

おまけ小話:先輩影たちの苦悩

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「先輩、可愛い嫁が待ってるのでお先に失礼します」




(・・・)



「あいつ最近残業しねーな・・・」
「まぁ、あんな綺麗な奥さんいたら僕も帰りますよね~」


主人の影として生きてきて早二十年のベテラン影と十年の中堅影の屋根裏での会話である。



孤児だった後輩レンは、影の訓練生だった頃ガリガリに痩せていて、目は死んだように暗かった。彼の孤独さや苦境も受け入れているように感じた。今ではあんな生き生きと生きているのだが。


「ふんっ、俺らが色々教えてやったのに」
「ああ、童貞だって言うから主人と花街にしょっちゅう連れていきましたもんね~」



『はぁ・・・』




影として生きてきて、好きな人の一人や二人いたが、休みが不定期であることと、夜中に出勤することもあるので付き合ったり結婚してもすぐに別れてしまう、それが影の定番コースだ。



「俺、こないだあの行きつけの遊廓に行ったんすけど、レンが結婚してもう来ないって言ったら、皆から悲しみの悲鳴が上がったんっすよ」
「なんだって?キャットちゃんも、メルちゃんも?」
「ええ、もうそこにいた全員っす」


中堅の影は真剣な表情でベテラン影に向き合った。ベテラン影も話を聞こうと前のめりになる。


「あいつ、顔は整ってるでしょ?影の仕事してるときは存在消してるっすけど、ベッドではイケメンオーラめっちゃ出てるらしいんっす、しかもあいつ、優しいくせにヤってるときはドSで、キャットちゃんいわくギャップ萌えらしいっす」
「これだからイケメンは・・・」
「それだけじゃないんっす・・・その・・・良いらしいっす、モノが」
「あいつ、東の出身だから小さいんじゃなかったか?」
「先輩、今時は大きさじゃないんっす。イイトコに当たる形と、固さと、喜ばせるための様々なテクニックっす!!」


二人は嘆いた。



『くそーーーーーー!!』



「先輩、仕事のあと、ちょっとレンの家覗きにいかないっすか?勉強になるかもしれないっす」
「ああ、そうしよう」






ーーーーー



ーーパシーーン!!


「ごめんなさい!ルミ女王様!!」
「ええい、犬は黙りなさい!!」


ーーーパシーーン!!!
ーーパシーーン!!


「ひぃいい!!」
「鞭で打たれて喜んでるんじゃないよ!」
「すみません、女王様!!」
「ほら、足を舐めなさいな」
「はいぃい!!」


ーペロペロペロペロペロ


「いい子ね、ご褒美にこの太い大根をあなたの中に入れてあげるわ!」
「ありがとうございます!!女王様!!」



ーーグチャッグチャッ


「あっ、あっ、あっ」
「犬のくせに人間みたいに喘ぐんじゃないよ!」
「ワ・・・ワンワン!ワン!!」



(・・・・・・)



「先輩、帰りましょう」
「ああ・・・」


二人はとぼとぼと帰っていった。



ーーー


ルミとレンは、いそいそと片付けていた。ルミは大根を野菜室に戻す。


「レン、あなたの先輩たち、信じて帰っちゃったわよ」
「覗き見るから悪いんだ、いいよ」


そう、レンは影の存在に気付き、ルミに演技をするように伝えたのだ。鞭を打つ振りをしたり、大根はルミがお尻に入れる振りをして、手でローションを使い効果音を出していただけである。


「はぁ・・・あの人たちの婚期がさらに遅くなるのか心配だわ」
「え、先輩たちが結婚なんてしたら、俺が残業しないといけないだろ。俺がルミと仲良くする時間がなくなるじゃないか」
「レン・・・///」


「じゃあ、俺らはイチャイチャするとするか」
「今日もいっぱい責めてね・・・」




そうして二人の夜は更けていった。





しばらく花街で女王様プレイの需要が高まったのは、彼らのせいではないと信じたい。
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