王子の影と王妃の光

ほのじー

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影、気づく:レン視点

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「なんでいつもいつも見つかるんだ!!」



毎日の特訓のおかげで俺はこの国の騎士団長たちもが気づかないくらい気配を消して尾行することができるようになった。ただ一人を除いては・・・


「そんなの簡単だわ。なんでかは教えてあげないけどね」
「あ~!なんでなんだ!!」


俺は髪の毛をぐしゃぐしゃかきむしってイライラを発散させた。男としてこんな女にいつも見つかるなんてプライドが許さない。



今日は騎士団長の尾行を任されていた。この国には騎士団が三つ存在し、そのなかでもブラン騎士団のランドルフ騎士団長と主人マスターは仲が良い。


「ランドルフの始めてのデートだよ、付いていって報告してね☆」とウインクしながら命令された時は「影の無駄遣いだ!」と怒りそうになったが、大人しく命令に従うヘタレな俺である。
そんな中いつものように気配を消してランドルフ騎士団長を尾行していたのに、同じく変装して尾行していた彼女にあっさりと見つかってしまったのだ。しまいには一緒に団長を尾行することになってしまった。


「次変装してる私を先に見つけたら教えてあげてもいいわよ」
「くそ、生意気な。よし・・・分かった。次は先にお前を見つけてやる。とりあえずお前の顔をじっくり見せろ。特徴を捉えとかないとな」


彼女の変装を見破ってやろうと、俺は彼女の顔を毛穴まで見つめて特徴をつかもうと必死になった。薄い眉、大きくて綺麗な青い目、小ぶりな鼻筋とぽってりとした唇、少し上に尖った耳、どこもかしこも綺麗でどうしていつも気づけないのかと不思議になった。少し見とれてしまった程だ。



「・・・そんな見ないでよ」

じっと見つめていた耳がほんのり赤く色づいた。


(照れてるのか?)


無意識にその耳の熱を確かめようとそっと触れる。



「ひゃっ・・・」
「す、すまん」


(俺は女性になんてことを!!・・・ってこいつにも照れることがあったんだな)


こんだけ何回も会ってるのに、今まで気配を消しても見つかってしまうことにイライラしてて、こいつの事何も知らないことに気づいた。


俺がこいつのことをちゃんと知ろうとすれば、彼女がどんな格好をしてたって気づける気がした。


「今度お前の劇、見にいくよ」
「な・・・なによ急に。見たかったら勝手に来ればいいでしょ、影の坊やちゃん」
「いつも坊や坊やって・・・俺の名前はレンだ。覚えとけよ!」

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