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女優マーサ:ルミ視点
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私はルミという名前を捨て、マーサという新しい名前をもらった。下働きをしながら舞台に立つための基礎トレーニングを行った。鉄棒の上を歩いてバランス感覚を養ったり、爪先立ちで何時間も立って舞台上でどんな姿勢でも保ち続けれるように練習した。勉学にも励まねばならなかった。練習は辛かったが、劇団員の皆が家族のように接してくれて、疲れた後べちゃくちゃ話ながら一緒に食べるご飯がとっても美味しかった。
「マーサ、最近明るくなったわね」
「だって私にはこーんなに素敵な姉妹がいるんだもん」
しばらくして私は“すみれ組”、期待の新人マーサとして大きく話題となった。
劇団は女性のみが加入でき、すみれ組、蘭組、薔薇組という三つのグループに別れている。
私は数年すみれ組の女優として経験をつんだが、ある時転機が訪れた。
ブローチを渡してくださったのはこの国の正妃ベラであるということは劇団に入った後に先輩が教えてくれた。ベラ様は劇団員に対して分け隔てなく愛してくださった。私の事情を知ったベラ様は、私の母や父とは会えないようにも取り計らってくれた。彼女は私の命の恩人であり劇団員の母なのだ。
「マーサ、あなたは今までで本当に努力して頑張ってきましたね」
「ありがとうございます、ベラ様」
「あなたを薔薇組に勧誘したいのだけれど、薔薇組は他の組と違って、別の役割もあるの。あなたにもうひとつの薔薇組の姿をお教えしますわ」
ーーー薔薇組の裏の姿。
それはベラ様の諜報員として、様々な情報を仕入れることだ。時に弁護士、時に女学生などと役を使い分け、重要人物の周りから情報を仕入れる役目だ。(たまにベラ様の個人的な娯楽の為の情報収集もあると後日分かるのだが)時には危険に身を置かなければならないかもしれない。
「それでもあなたは薔薇組に加入しますか、マーサ?」
「・・・もちろんです。すべての役を演じきってみせます。私はこの国一の女優になるんですから」
ーー数年後ーーー
ベラ様は街を散策するのが好きで、しょっちゅうお忍びで外出している。それに付いて一緒に散歩するのが私の大のお気に入りだ。
「ふふ、マーサは本当にこの公園が好きね」
「だってここはベラ様と初めて出会った場所だもの!」
ベラ様がいなければ今の私はいなかった。ベラ様のおかげで食べるのに困ることもなかったし、遊んでもらえるお姉さんたちや妹もいる。勉強もさせてもらったお陰で、男の格好で紳士クラブに行っても、男性の難しい話にも付いていけたし、貴族だって演じることができた。
ふっと空を見上げる。
燦々と照り注ぐ太陽の光は私にエネルギーをくれるのだ。
「あ・・・」
ブワッと強い風が私の髪を靡かせた。リボンが上へと飛んでいく。
(あれ?誰かいる・・・)
公園には木が数本植えてあり、私の側の木の上には黒いマスクをした男が立っていた。その男と目が合う。
「・・・」
「・・・」
(あれが噂の姿を見せない第一王子の影かしら。ばっちし目が合っちゃったけど)
「う・・・うわぁ!!」
彼は驚いて木から転落した。
「いててて・・・」
「大丈夫?お兄ちゃん」
(この人大丈夫かしら。若そうだしまだ仕事始めたばっかなのかな)
私は悪戯心で少し嚇かしてやろうと思い、少女の顔から意地悪そうな女の顔に変える。
「あーどんくさいわね、あなた。それでも第一王子の影なのかしら」
「なっ!?」
驚いた顔をしたマスクの男は私を一心に見つめた。
ーーーートクッ
(この人の目、すごく綺麗)
それから彼の灰色のガラス玉のような瞳を思い出すと、私の胸は高鳴った。
「マーサ、最近明るくなったわね」
「だって私にはこーんなに素敵な姉妹がいるんだもん」
しばらくして私は“すみれ組”、期待の新人マーサとして大きく話題となった。
劇団は女性のみが加入でき、すみれ組、蘭組、薔薇組という三つのグループに別れている。
私は数年すみれ組の女優として経験をつんだが、ある時転機が訪れた。
ブローチを渡してくださったのはこの国の正妃ベラであるということは劇団に入った後に先輩が教えてくれた。ベラ様は劇団員に対して分け隔てなく愛してくださった。私の事情を知ったベラ様は、私の母や父とは会えないようにも取り計らってくれた。彼女は私の命の恩人であり劇団員の母なのだ。
「マーサ、あなたは今までで本当に努力して頑張ってきましたね」
「ありがとうございます、ベラ様」
「あなたを薔薇組に勧誘したいのだけれど、薔薇組は他の組と違って、別の役割もあるの。あなたにもうひとつの薔薇組の姿をお教えしますわ」
ーーー薔薇組の裏の姿。
それはベラ様の諜報員として、様々な情報を仕入れることだ。時に弁護士、時に女学生などと役を使い分け、重要人物の周りから情報を仕入れる役目だ。(たまにベラ様の個人的な娯楽の為の情報収集もあると後日分かるのだが)時には危険に身を置かなければならないかもしれない。
「それでもあなたは薔薇組に加入しますか、マーサ?」
「・・・もちろんです。すべての役を演じきってみせます。私はこの国一の女優になるんですから」
ーー数年後ーーー
ベラ様は街を散策するのが好きで、しょっちゅうお忍びで外出している。それに付いて一緒に散歩するのが私の大のお気に入りだ。
「ふふ、マーサは本当にこの公園が好きね」
「だってここはベラ様と初めて出会った場所だもの!」
ベラ様がいなければ今の私はいなかった。ベラ様のおかげで食べるのに困ることもなかったし、遊んでもらえるお姉さんたちや妹もいる。勉強もさせてもらったお陰で、男の格好で紳士クラブに行っても、男性の難しい話にも付いていけたし、貴族だって演じることができた。
ふっと空を見上げる。
燦々と照り注ぐ太陽の光は私にエネルギーをくれるのだ。
「あ・・・」
ブワッと強い風が私の髪を靡かせた。リボンが上へと飛んでいく。
(あれ?誰かいる・・・)
公園には木が数本植えてあり、私の側の木の上には黒いマスクをした男が立っていた。その男と目が合う。
「・・・」
「・・・」
(あれが噂の姿を見せない第一王子の影かしら。ばっちし目が合っちゃったけど)
「う・・・うわぁ!!」
彼は驚いて木から転落した。
「いててて・・・」
「大丈夫?お兄ちゃん」
(この人大丈夫かしら。若そうだしまだ仕事始めたばっかなのかな)
私は悪戯心で少し嚇かしてやろうと思い、少女の顔から意地悪そうな女の顔に変える。
「あーどんくさいわね、あなた。それでも第一王子の影なのかしら」
「なっ!?」
驚いた顔をしたマスクの男は私を一心に見つめた。
ーーーートクッ
(この人の目、すごく綺麗)
それから彼の灰色のガラス玉のような瞳を思い出すと、私の胸は高鳴った。
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