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影、出会う:レン視点
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影になる為に俺は毎日傷だらけになり、先輩のスピードに着いていけるように懸命に練習を続けた。筋肉は悲鳴を上げ、夜は泥のように眠るが影の朝は早い。寝過ごすと朝ごはん抜きとなるので、必死に目を開け朝ごはんをかきこみまた朝のトレーニングを行うのだ。
だんだんとスピードには慣れていき、体術は元々やっていたこともありすんなりクリアした。
しかし気配を消すのはかなりコツがいって、とにかく邪念を払い空気と一体化するのだが、なかなか上手くいかない。時間は刻々と過ぎ15歳になる頃、なんとかギリギリ合格ラインまでいくことができた。
合格と聞いてから、先輩は王城の中へと導いていった。そのときなぜ王城に行くのかさっぱり分かっていなかったのだ。奥へ奥へと進み、白い制服を着た騎士たちが扉の前を守っている。
その部屋に通されると、見覚えのある金髪が見えた。間違いない、身長は伸び男らしさが出てきたが、以前会ったあのキラキラした少年だ。
「やあ、久しぶりだね」
「まさかあんたは・・・」
ただ者ではないとは思っていた。王城の、一般人には入れない区域を通り、たくさんの騎士が周りを警備していたのを見て、気付かぬ人はいないだろう。目の前にいるこのお方はフェリス国第一王子、シルベスターである。
(でもまさか王子だったなんて・・・)
しかしそう言われると府に落ちる点はいくつかある。俺は知らぬうちに彼の王としての器に惹かれていたんだ。
後戻りしたくたって、俺の生きる道はここしかない。異国人である俺をここまで育ててくれた影たち、その影たちが皆慕うこの男。俺は後世に語り継がれるだろうこの男を守りきるのだ。
俺は一呼吸置き、覚悟を決めた。
膝まずき忠誠のポーズを取る。
「この命を賭けて主人に忠誠を誓います」
「宜しく頼んだよ」
ー数日後ー
「これはこれはお義母さん、こんなところで会うなんて偶然ですね」
「あら、シルベスター、あなた今日もむさ苦しい男たちを連れて、本当に美しくないわね」
主人がお忍びで街の公園を歩いていると彼の義理の母である正妃ベラがゆっくりと歩みよってきた。彼女は美しさに強いこだわりを持ち、男が近寄るのをあまり良しとしない。主人は実母を亡くし、急に現れた(少し変わっている)新しい母に戸惑いはあったそうだが、それなりに仲が良いらしい。まわりは犬猿の仲と勘違いしているようだが・・・
「お義母さんはまだ劇団員を育てる遊びをしてらっしゃるんですか」
「あら、遊びじゃないのよ。あなたも興味があるのかしら。次の公演は是非、見にいらっしゃって」
「ええ、美しい女性たちにはいつでも興味はありますよ。今度は是非女性たちを紹介してほしいものですね」
軽い言葉を交わし会う二人である。俺は公園の木の上に乗り気配を消して主人を見守っていた。
(!?!?)
強い風が吹いたと同時に青いリボンが俺の足に絡みついてきた。ふと下を見ると公園で遊んでいたであろう少女が俺のことをじっと見つめていたのだ。
「う・・・うわぁ!!」
俺は驚いて木から転落してしまった。
「いててて・・・」
「大丈夫?お兄ちゃん」
心配そうに覗きこんだと思われた少女は“ニヤリ”と少女に似合わぬ笑みを浮かべた。
「あーどんくさいわね、あなた。それでも第一王子の影なのかしら」
「なっ!?」
あどけない少女は女の顔へと変化する。いや、顔は変わってないのだが、表情や姿勢、話し方でずいぶんと印象が変わるのかと驚いた。
「マーサ、何をしてるの」
「ベラ様、木の上で遊んでいらした殿方が足を滑らして倒れていらっしゃったのでお助けしていたんです」
「あらあら、大の大人が木登りなんてするなんてお子様ねぇ。ね、シルベスター?ほほほほほ」
主人であるシルベスターは呆れた顔をしてこちらを見ていた。
「・・・」
あんな女に見破られた悔しさで、練習をいつもの倍こなすようになった。
だんだんとスピードには慣れていき、体術は元々やっていたこともありすんなりクリアした。
しかし気配を消すのはかなりコツがいって、とにかく邪念を払い空気と一体化するのだが、なかなか上手くいかない。時間は刻々と過ぎ15歳になる頃、なんとかギリギリ合格ラインまでいくことができた。
合格と聞いてから、先輩は王城の中へと導いていった。そのときなぜ王城に行くのかさっぱり分かっていなかったのだ。奥へ奥へと進み、白い制服を着た騎士たちが扉の前を守っている。
その部屋に通されると、見覚えのある金髪が見えた。間違いない、身長は伸び男らしさが出てきたが、以前会ったあのキラキラした少年だ。
「やあ、久しぶりだね」
「まさかあんたは・・・」
ただ者ではないとは思っていた。王城の、一般人には入れない区域を通り、たくさんの騎士が周りを警備していたのを見て、気付かぬ人はいないだろう。目の前にいるこのお方はフェリス国第一王子、シルベスターである。
(でもまさか王子だったなんて・・・)
しかしそう言われると府に落ちる点はいくつかある。俺は知らぬうちに彼の王としての器に惹かれていたんだ。
後戻りしたくたって、俺の生きる道はここしかない。異国人である俺をここまで育ててくれた影たち、その影たちが皆慕うこの男。俺は後世に語り継がれるだろうこの男を守りきるのだ。
俺は一呼吸置き、覚悟を決めた。
膝まずき忠誠のポーズを取る。
「この命を賭けて主人に忠誠を誓います」
「宜しく頼んだよ」
ー数日後ー
「これはこれはお義母さん、こんなところで会うなんて偶然ですね」
「あら、シルベスター、あなた今日もむさ苦しい男たちを連れて、本当に美しくないわね」
主人がお忍びで街の公園を歩いていると彼の義理の母である正妃ベラがゆっくりと歩みよってきた。彼女は美しさに強いこだわりを持ち、男が近寄るのをあまり良しとしない。主人は実母を亡くし、急に現れた(少し変わっている)新しい母に戸惑いはあったそうだが、それなりに仲が良いらしい。まわりは犬猿の仲と勘違いしているようだが・・・
「お義母さんはまだ劇団員を育てる遊びをしてらっしゃるんですか」
「あら、遊びじゃないのよ。あなたも興味があるのかしら。次の公演は是非、見にいらっしゃって」
「ええ、美しい女性たちにはいつでも興味はありますよ。今度は是非女性たちを紹介してほしいものですね」
軽い言葉を交わし会う二人である。俺は公園の木の上に乗り気配を消して主人を見守っていた。
(!?!?)
強い風が吹いたと同時に青いリボンが俺の足に絡みついてきた。ふと下を見ると公園で遊んでいたであろう少女が俺のことをじっと見つめていたのだ。
「う・・・うわぁ!!」
俺は驚いて木から転落してしまった。
「いててて・・・」
「大丈夫?お兄ちゃん」
心配そうに覗きこんだと思われた少女は“ニヤリ”と少女に似合わぬ笑みを浮かべた。
「あーどんくさいわね、あなた。それでも第一王子の影なのかしら」
「なっ!?」
あどけない少女は女の顔へと変化する。いや、顔は変わってないのだが、表情や姿勢、話し方でずいぶんと印象が変わるのかと驚いた。
「マーサ、何をしてるの」
「ベラ様、木の上で遊んでいらした殿方が足を滑らして倒れていらっしゃったのでお助けしていたんです」
「あらあら、大の大人が木登りなんてするなんてお子様ねぇ。ね、シルベスター?ほほほほほ」
主人であるシルベスターは呆れた顔をしてこちらを見ていた。
「・・・」
あんな女に見破られた悔しさで、練習をいつもの倍こなすようになった。
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