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スコットの独白(前)
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※スコット目線の独白調で、前編後編の二話です。
私の家は代々ダリル伯爵に仕えています。旦那様の奥様はお嬢様を産んでからしばらくして亡くなってしまわれ、私が十代の時に旦那様は遠戚から養子を迎えることになりました。
「スコット、こちらがお前が今後仕えることとなるフィルだ。これから友人としても仲良くしてやってくれ」
「はい、旦那様」
フィル様は頭が良く真面目で、スポーツも万能です。フィル様は多くは語りませんが、私は執事見習いとして主人の心を読み取ろうと毎日彼を観察しながら生活しているうちに彼の感情が分かるようになったのです。
(またお嬢様を見てる・・・)
勉強の休憩中にフィル様は窓からお嬢様をじっと見つめており、お嬢様への好奇心と好意が思春期を越えてから恋に焦がれるようなものとなっていくのが見てとれました。
(フィル様は・・・お嬢様のこと・・・)
フィル様が隠してるので私は何も言うことはできないのですが、私は彼を見守ろうと思いました。
+
+
+
(フィル様、ご無事で・・・)
戦争が始まり私もお嬢様や旦那様を守ることに必死となっていました。戦時中届くフィル様の手紙は言葉足らずでヤキモキしたのですが、無事だったことを聞き胸を撫で下ろしました。
+
+
+
転機が訪れたのは、戦後フィル様が伯爵家に帰ってきてからです。フィル様はお嬢様を突き放したり、冷たい言葉を掛けている様子でしたが、本心ではないのがすぐに分かりました。
(まったく・・・素直になれば良いのに)
未だにフィル様は拗らせているようでした。お嬢様はフィル様の心を開こうと健気に頑張っていらっしゃって、私もお嬢様をお手伝おうと手助けをすることもありました。お嬢様がフィル様を小さい頃遊んだ場所にお誘いしたときもそうです。
「あなた帰ってきてから昼間全然遊びに行ってないじゃない。夜は別として」
「僕は夜行性なのでお子様の遊びは結構です」
「いいじゃない!たまには昔を思い出して行きましょうよ!」
「仕事が忙し・・・」「今日の午後はフィル様の仕事の予定はございません」
私がそう言うと二人はお出かけになられました。
(仕事まだ溜まってるんですけどねぇ)
とっさに出てきた嘘だったが私も後悔はしていません。二人がずぶ濡れになって帰ってきたとき、二人の雰囲気がどこか変わっていることに気がつきました。
「おい、スコット・・・今日の仕事多くないか?」
「気のせいでございます、フィル様」
お嬢様と過ごしてもらうために一日フィル様に休暇を与えましたので、その分の仕事が次の日に回ってきてしまいました。フィル様もそれに気づいたようで、私にジトリとした目を向けてきます。
+
+
+
お嬢様がパーティーから帰ってこられましたが、あの野郎・・・ごほん、ザック様がお嬢様に言葉にも出せない酷いことをなさいました。旦那様もフィル様も怒り心頭でございます。
「フィル様、どこに行かれるんですか?」
「ちょっと休憩だ」
フィル様は、仕事の合間にお嬢様の様子を見に行かれたり、夜は寝るまで一緒に過ごされるようになりました。彼もとうとう吹っ切れたのでしょう。お嬢様への感情もあまり隠さなくなりました。
「スコット、あいつの密偵を増やしてこれとこれも調べるよう伝えてくれ」
「はい、かしこまりました」
ザック様の調査も念入りに行っておりました。殿下とも話し合いを設けながら調査は順調に進んでいきます。旦那様も、調査費用は惜しまないようにとおっしゃっておりました。ブルーノ伯爵とも交易を断絶し、旦那様の復讐も進んでおります。
「フィル様・・・浮かれておりませんか」
「そんなことはない」
お嬢様は恥ずかしそうにしておられるし、何かあったのだと気がつきました。お嬢様もフィル様を男として見るようになっていると思われます。
「フィル様・・・過去の女性とはきちっと精算しておかないと痛い目に合いますよ」
「・・・痛いところをつくな、お前は」
+
+
+
フィル様と出張にご一緒しており、久々に伯爵家に帰ってきたときの事です。お嬢様が家出をしておられました。その時のフィル様のショックを受けた顔は忘れられません。
ーバシーン!!
「ばかもん!!お前が女遊びに現を抜かすからそんなことになるんだ!!」
旦那様がお嬢様が家出した原因を聞き、温厚な旦那様も怒りが爆発しておられました。フィル様は右の頬をパンパンに腫らしており、旦那様に一発殴られたようです。
「情けないな・・・」
「ええ、本当に」
「お前も少しは慰めてくれたっていいだろう」
私も慰めるつもりはありませんでした。使用人たちもお嬢様がいなくなり伯爵家は暗い雰囲気に包まれておりました。その日からフィル様はお嬢様を探しながら戦後関係を持っていた女性たちと精算していき、殴られたり、爪で引っ掛かれた傷をつけて帰ってくることもありました。
(お嬢様・・・今どこにおられるのでしょうか・・・)
私の家は代々ダリル伯爵に仕えています。旦那様の奥様はお嬢様を産んでからしばらくして亡くなってしまわれ、私が十代の時に旦那様は遠戚から養子を迎えることになりました。
「スコット、こちらがお前が今後仕えることとなるフィルだ。これから友人としても仲良くしてやってくれ」
「はい、旦那様」
フィル様は頭が良く真面目で、スポーツも万能です。フィル様は多くは語りませんが、私は執事見習いとして主人の心を読み取ろうと毎日彼を観察しながら生活しているうちに彼の感情が分かるようになったのです。
(またお嬢様を見てる・・・)
勉強の休憩中にフィル様は窓からお嬢様をじっと見つめており、お嬢様への好奇心と好意が思春期を越えてから恋に焦がれるようなものとなっていくのが見てとれました。
(フィル様は・・・お嬢様のこと・・・)
フィル様が隠してるので私は何も言うことはできないのですが、私は彼を見守ろうと思いました。
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(フィル様、ご無事で・・・)
戦争が始まり私もお嬢様や旦那様を守ることに必死となっていました。戦時中届くフィル様の手紙は言葉足らずでヤキモキしたのですが、無事だったことを聞き胸を撫で下ろしました。
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転機が訪れたのは、戦後フィル様が伯爵家に帰ってきてからです。フィル様はお嬢様を突き放したり、冷たい言葉を掛けている様子でしたが、本心ではないのがすぐに分かりました。
(まったく・・・素直になれば良いのに)
未だにフィル様は拗らせているようでした。お嬢様はフィル様の心を開こうと健気に頑張っていらっしゃって、私もお嬢様をお手伝おうと手助けをすることもありました。お嬢様がフィル様を小さい頃遊んだ場所にお誘いしたときもそうです。
「あなた帰ってきてから昼間全然遊びに行ってないじゃない。夜は別として」
「僕は夜行性なのでお子様の遊びは結構です」
「いいじゃない!たまには昔を思い出して行きましょうよ!」
「仕事が忙し・・・」「今日の午後はフィル様の仕事の予定はございません」
私がそう言うと二人はお出かけになられました。
(仕事まだ溜まってるんですけどねぇ)
とっさに出てきた嘘だったが私も後悔はしていません。二人がずぶ濡れになって帰ってきたとき、二人の雰囲気がどこか変わっていることに気がつきました。
「おい、スコット・・・今日の仕事多くないか?」
「気のせいでございます、フィル様」
お嬢様と過ごしてもらうために一日フィル様に休暇を与えましたので、その分の仕事が次の日に回ってきてしまいました。フィル様もそれに気づいたようで、私にジトリとした目を向けてきます。
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お嬢様がパーティーから帰ってこられましたが、あの野郎・・・ごほん、ザック様がお嬢様に言葉にも出せない酷いことをなさいました。旦那様もフィル様も怒り心頭でございます。
「フィル様、どこに行かれるんですか?」
「ちょっと休憩だ」
フィル様は、仕事の合間にお嬢様の様子を見に行かれたり、夜は寝るまで一緒に過ごされるようになりました。彼もとうとう吹っ切れたのでしょう。お嬢様への感情もあまり隠さなくなりました。
「スコット、あいつの密偵を増やしてこれとこれも調べるよう伝えてくれ」
「はい、かしこまりました」
ザック様の調査も念入りに行っておりました。殿下とも話し合いを設けながら調査は順調に進んでいきます。旦那様も、調査費用は惜しまないようにとおっしゃっておりました。ブルーノ伯爵とも交易を断絶し、旦那様の復讐も進んでおります。
「フィル様・・・浮かれておりませんか」
「そんなことはない」
お嬢様は恥ずかしそうにしておられるし、何かあったのだと気がつきました。お嬢様もフィル様を男として見るようになっていると思われます。
「フィル様・・・過去の女性とはきちっと精算しておかないと痛い目に合いますよ」
「・・・痛いところをつくな、お前は」
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フィル様と出張にご一緒しており、久々に伯爵家に帰ってきたときの事です。お嬢様が家出をしておられました。その時のフィル様のショックを受けた顔は忘れられません。
ーバシーン!!
「ばかもん!!お前が女遊びに現を抜かすからそんなことになるんだ!!」
旦那様がお嬢様が家出した原因を聞き、温厚な旦那様も怒りが爆発しておられました。フィル様は右の頬をパンパンに腫らしており、旦那様に一発殴られたようです。
「情けないな・・・」
「ええ、本当に」
「お前も少しは慰めてくれたっていいだろう」
私も慰めるつもりはありませんでした。使用人たちもお嬢様がいなくなり伯爵家は暗い雰囲気に包まれておりました。その日からフィル様はお嬢様を探しながら戦後関係を持っていた女性たちと精算していき、殴られたり、爪で引っ掛かれた傷をつけて帰ってくることもありました。
(お嬢様・・・今どこにおられるのでしょうか・・・)
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