BLゲームの世界に転生したら騎士二人の♂♂の受けとなった。

ほのじー

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不幸な婚約式

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(これで・・・これで良かったのよ)


レイは大好きだった仕事も辞めなければいけなくなった。すぐにでも結婚したいとパルロ会長が伝えてきたのだ。結婚は一週間後となり、レイは忙しくしていた。


「レイ姉・・・あいつと結婚するなんて・・・正気か?」
「そ、そうよ」
「っ・・・!!親父より年上の男じゃねえか・・・しかも、あの噂・・・」
「ちょっと年がいってるかもしれないけど・・・私たちを助けてくれる、優しい人よ」


レイはネイトが安心して送り出せるよう嘘をついた。しかしネイトはそれを信じない。


「レイ姉、俺学校辞めてもう働くから・・・あいつと結婚なんてするなよ!!」


ネイトは、薬や両親の借金が普通の人が一生働いて稼げる値段ではないと知らない。何度も何度もネイトはレイに結婚しないようにすがったが、レイは頑なにそれを拒否した。ネイトは部屋をバンッと強く押し出ていった。レイは一筋の涙を流す。


(ああ・・・今世も、幸せになれなかったな・・・)


せっかくレイの好きなBLゲームの世界に転生したのにも関わらず、レイは不幸の運命を辿ろうとしている。前世では素敵な恋愛もせず、若くして亡くなってしまったので今世では幸せを見つけたいと思っていたのだ。


(ジェイク団長・・・セル副団長・・・)


レイは自分が彼らを好きであると、気がついてしまった。気がついたときには、もう仕事を辞めなければならなくなり、もう会うこともないかもしれない。


(恋を自覚した瞬間、撃沈かぁ・・・私って超哀れ)


レイは今世で同性愛の男たちに無謀な恋をした。いくら努力しても叶わぬ恋だ。そしてその恋心を自覚した瞬間、父より上の男性、しかも性癖が異常な男と結婚せねばならない。


「あはははは、すごいなぁ。私の運命、悲惨すぎて笑えてくる・・・」


レイは笑いながら、溢れ出る涙を何度も拭った。その夜、家にはレイの笑い声がいつまでも響いていた。




+++




結局解決策も見いだせないまま結婚式当日となった。レイは朝、無口な侍女に体を洗われ、豪華なウエディングドレスを着せられた。急ぎで準備した結婚式だからか、ドレスや靴のサイズが合っていないのが丸わかりである。


(お父さん、お母さん・・・)


式には車椅子に乗った無表情の父と、涙を枯らした母が前列に座っていた。前世のようにバージンロードを父と歩くのが夢であったが、父はまだ体が動かず、病院のチューブに繋がれながら、看護婦と共に式に参加となった。ネイトはそこにおらず、レイを祝福しないという意志が伺えた。


「とても綺麗だ・・・ああ、今夜がとても楽しみだよ。今日から君は私のペットたちの性の玩具だ」


パルロはニヤリといやらしい顔をレイに向けた。レイは恐怖で手足が震える。しかし時間は待ってくれず、レイはパルロの手を取り神父に向かった。神父もパルロから相当な支援金を貰っているようで、指にはいくつものゴールドの指輪が嵌めてあった。悪に染まった教会は神から見捨てられたのか、装飾品はきらびやかであるのに、どこかどんよりと薄暗い。


「新郎、パルロ・エスアールと新婦、レイ・バトンの結婚の儀を始めます」


神父は淡々と儀式を進める。パルロとレイが並ぶと、やはり娘と父親にしか見えず、誰も二人が夫婦だとは思わないであろう。パルロの息子からは「金の為に結婚するあばずれ」とまで呼ばれてしまう。実際借金や薬代をレイの家族に払うことになるので、間違ってはいない。


(・・・いいの・・・これでちゃんとお父さんの治療ができるもの・・・)


父は病院で検査を受けているのか、顔色が良くなってきている。このまま治療を続ければ、普通の生活もできるようになるであろう。


「・・・では、この結婚に異議のあるもの・・・」


結婚式がさらに進み、とうとう終盤となる。神父は沈黙を意義のないものとし、式を終わらせようと口を開けた。



──ガチャン・・・


シーンと静かな結婚式会場の扉が大きく開かれる。そして靴の音が木製の床から響いた。


──カツッ、カツッ


扉の外から漏れる光が、参加者たちの視界を一瞬奪った。ドアが閉まり、二人の人影が浮かび上がる。



『異議、ありだ』



バリトンボイスと、中性的な色っぽい男の声が、式場に響いた。それはレイにとって、よく知っている声だ。



(これは・・・幻覚・・・?)



ジェイクとセルが、騎士の服に身を包み、登場した。彼らの存在はこの式場で異様な空気を放つ。しばらく彼らを見ていないからか、レイ二人がとても眩しく見えた。


「レイ、いくぞ・・・」
「レイちゃん、帰ろう」


(で、でも・・・)


この結婚を無下にすれば、父の治療も、借金の返済もできなくなる。レイは今すぐ飛び付きたくなるも、足をぐっと堪えた。


「な、なんだお前ら!!結婚式の最中だぞ、出ていけ!!」


パルロが怒りで顔を真っ赤にしながら怒鳴り付けた。すると後ろからネイトが現れる。


「レイ姉・・・もう大丈夫だから・・・ジェイクさんと、セルさんが、借金も治療費も全部払ってくれたんだ」


(え・・・)


ジェイクとセルがレイに向かって頷いた。さらに後ろから、レオン王子とエリカが現れる。


「レ、レオン王子!?」


レオンが前に進み出る。さすがこの国の王子である。彼がいるだけでこの場でひれ伏したくなるような気持ちとなる。


「パルロ会長・・・」
「レ、レオン王子っ・・・こ、このようなところまで、どのようなご用件で?わ、私たちを祝福に来ていただいたのでしょうか」


パルロが媚を売り始める。脂汗がにじみ出て、ハンカチで汗を何度も拭っている。


「祝福?そんなものする訳がないじゃないか・・・パルロ会長・・・いや、、あなたは性犯罪法、商業の独占禁止法、その他にもたくさん犯罪を犯しているようだね」


パルロは輸入を禁止されている動物を輸入して高額で取引したり、人身売買も行っていたのだ。レオン王子が動いたことにより被害者も声をあげ、すぐに起訴できそうである。


「・・・連れていけ」


パルロは手錠をかけられ、警備隊に連れられていった。レイはまだその場に残されたままである。エリカがゆっくりとレイの側により、手をグーにしてレイの胸を何度もポカポカと叩いた。


「レイちゃんの、バカバカバカバカ!!なんで相談しなかったのよ!!お友達でしょ!!こんなこと一人で抱え込もうとして!!」


エリカは泣いていて、鼻水が出ても気にしない程顔がぐちゃぐちゃである。レイも我慢していた涙が溢れ、エリカに抱きついた。


「うわあああああああああああん、ごめんなさい~!!」
「びええええええええええええん、心配したんだからぁ」


二人は抱きしめあいながら、泣き続けた。レイの両親も涙を流している。しばらくしてレオンがエリカとレイをベリッと引き剥がした。


「そろそろ、彼らに、引き渡してあげないとだろ?」
「あ、うん、そうね、そうだった!」


エリカはレオンと共に身を引いた。すると式場の入り口で立っているジェイクとセルが、優しい笑顔でレイに手を差し伸べた。


「おいで、レイ」
「早く帰ろう」


レイは靴が脱げるのも気にせず、二人の元に走り、飛び付いた。二人はレイを苦しくなるほど抱きしめる。


「レイちゃん、君は、誰のものだったっけ?」
「ジェイク団長とっ・・・セル副団長のものです」


「正解だ」と言ってレイは二人に抱きしめられながら結婚式会場を後にした。ネイトも満足そうに頷いている。


(私は・・・二人のもの・・・)

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