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実家の危機

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(な、なんだろ・・・)


レイの母から緊急の手紙だといって、速達で手紙が届いた。そこには父親が病気で寝込んでおり、熱が退かず治療に当たっているという連絡である。


(お、お父さんが!?)


事情をジェイクとセルに説明すると、二人は安心するまで何日でも休んで良いと言って、送り出してくれた。今まで使っていなかった有給も使うように言われ、安心してレイは実家に戻った。




+++



「お父さん・・・大丈夫・・・!?」
「・・・レイ・・・お前なんで来た・・・帰れ、レイ・・・帰るんだ」


実家に戻ると、粗末なベッドでレイの父が横たわっていた。なぜかレイの父はレイを見て、眉の間のシワを寄せた。しかし相当弱っているのか、大声を出して疲れたようで瞼を閉じ、再び寝てしまった。父が眠るのを見届け、レイの母は父のタオルを変えながら涙を拭った。


「お父さんね・・・異国で流行ってる熱病にかかっちゃって・・・借金返すために異国の取引先のところに行ったら・・・こんなになっちゃって」
「っ・・・そんなことが・・・」
「その病気事態は、薬を毎日投与したら治るらしいんだけど・・・異国の病気だから、薬代がすごく高くって・・・今安い薬で代用してるんだけど・・・このままじゃっ・・・お父さん死んじゃうっ・・・」


母は感極まり声をわんわんと出しながらレイにすがり付いて泣いていた。レイはショックで声が出ない。


「そんな・・・嘘っ・・・」


レイは苦しそうに寝ている父を見て、ふらふらと近くの椅子に座った。金額を聞くと、レイが騎士団で何年働いても返せない額である。父が病気になったことで、仕事の借金が増えてしまったのも助長している。


(嘘・・・なんで・・・お父さん、すごく元気だったじゃない)


母はやつれて頬もげっそりと痩せている。この状況になって、暫く経っているそうだ。何でも話してくれる両親がレイにすぐに伝えなかったことに疑問を持つ。


「お母さん・・・なんですぐに私に言ってくれなかったの?」
「・・・それは・・・ふぅ・・・ううう」


母は再び涙を溢れさせ、ハンカチが濡れて滴り落ちるほどに泣いたところで、母は意を決し話し始めた。


「エスアール商会のパルロ会長、レイも知ってるでしょう・・・?」


エスアール商会はこの国で最も力のある商会で、全国に支店がちらばっている。商売をするにはこの商会の許可が必要で、レイの両親もこの商会に許可を得て商売をしているのだ。


(そういえば王城のパーティーの時、話しかけられたっけ)


商会の会長は、前々国王の友人であり、お金の力で男爵の地位を手に入れていた。今では六十歳近い年齢である。数年前に妻を亡くしたそうで、それから少し悪い噂も出てきている。


「その人がね・・・レイをパーティーで見かけたらしくって・・・っうううう」


母は言葉に詰まりながら、レイに言いきった。


「レイが、彼と結婚したら・・・借金も・・・薬代も・・・全部帳消しにしてくれるし、ネイトの学校の費用も、全部出してくれるって・・・それでお父さん、絶対レイには言うなって・・・でも・・・う・・・ぅう」


エスアール商会の会長は、多くの猛獣のペットを飼っており、平民の女性を家に連れ込み、猛獣と性交させて楽しんでいると噂なのだ。一度彼は訴えられたことがあったが、お金の力を使ったのか棄却されている。


(私が、結婚・・・)


母は耐えることができずに、嗚咽をこみ上げながら、家を出ていってしまった。家の裏にある井戸の近くで、彼女の声がまだ響いていた。



(私が・・・私が結婚したら・・・お父さんも、家族も、皆助かる・・・)
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