BLゲームの世界に転生したら騎士二人の♂♂の受けとなった。

ほのじー

文字の大きさ
上 下
27 / 36

弟の訪問

しおりを挟む

「レイ姉、久しぶり」
「わ~、久しぶり。元気してた?ネイト」


ネイトはレイの弟で、ただ今国立ベルアメール・ラスト学園、略して『BL学園』に通っている。名前からお察しいただけるだろうが、『BL学園』はゲーム『BLの城』の、第二段のゲームで、学園内で繰り広げられるBLを楽しむゲームである。しかしレイはこのゲームが発売される前に亡くなってしまい、そのゲームはできていなかった。


(弟・・・私と違って顔よし、頭よし、体よしの高スペック男子だけど、まさか、BL学園のゲームキャラ・・・な訳ないよね。あはは、まさかね)


前世の記憶が戻る前も弟を溺愛していた。彼は少しヤンチャな愛されキャラであり、前世が戻ってからも、「弟・・・へんな男に襲われないかな・・・」と心配している。


「ここがレイ姉の職場?すげぇ、こんなとこで働いてるんだ・・・うわぁ。皆ゴツいなぁ・・・かっけぇ・・・」


騎士団員たちが練習を行っており、ネイトは目をキラキラさせながらそれに見入っていた。皆汗をかき、一生懸命打ち合っている。


「じゃ、私はもう少し仕事があるから、ここで良い子にしとくのよ」
「ああ、分かった」


ネイトが手紙で一度騎士団というものを見てみたいと言っていて、ジェイクとセルに弟の話をすると、二つ返事で見学に来ても良いと言ってくれたのだ。普通であれば関係者以外は立ち入り禁止であるのだが、レイの弟ということで特別に見学しても良いとのことだ。


(ネイトは、将来何になりたいのかしら・・・)


ネイトは奨学金を貰いながら学園に通っており、寮費や生活費はレイが仕送りをしている。家が借金だらけとなった時、彼は学校は諦めて働くと言っていたのだが、レイがそれを引き留めて、学園だけは卒業するように言ったのだ。



+++


(あれ、ネイトが・・・いない?)


待っているように言った場所に彼が見当たらない。キョロキョロと探すと、ネイトはジェイクとセルに竹刀を使い、剣術を教えて貰っているようだった。どこか真剣な様子に声をかけられないでいた。


──カキーン!!


「もう少し脇をしめて、頭がぶれないように安定させろ・・・そうだ、いいぞ」


ネイトはセルに向かい何度も竹刀を振り上げるも、セルは片手だけで簡単にそれを弾いた。よく見るとセルの足は一ミリも動いていない。実力の差は一目瞭然だ。


「うわぁ、全然歯が立たねぇ・・・」
「でもお前、筋がいいぞ。練習をしたら絶対伸びるはずだ」


ジェイクはポンポンとネイトの頭に手を置いた。


「どうだ?騎士団に入団目指してみるのは」
「う~ん、騎士団って給料いいのか?」


(なんてこと聞いてんのよ、ネイト・・・)


「活躍できれば、それだけ貰えるぞ。金は勿論、爵位だって、大きな土地だって手にはいる」
「本当か??俺・・・レイ姉が仕事で稼いだ金・・・ほとんど仕送りしてんの知ってんだ・・・だから将来は金持ちになってレイ姉に恩返ししてーんだ」



(ネ・・・ネイト・・・)


レイはその言葉に涙が溢れ出てくる。その言葉だけで、レイにとって十分だ。ジェイクとセルも、その言葉を聞いてクシャクシャと彼の頭を撫でていた。ネイトはボサボサになった髪を撫でながら言った。


「あ~ジェイクさんと、セルさんが、俺の兄貴だったらなぁ」


レイとネイトの両親は仕事で忙しく、体力のないレイはネイトとボール遊びなどやってあげられなかったので彼は寂しい思いをしたはずである。


「そうだ、ジェイクさんかセルさんがレイ姉と結婚してくれたら一番最高じゃん」


(な、なんてこと言ってんのよ!!ネイトったら!!)


「どう?レイ姉、すげー優良物件だぜ?あんな綺麗なのにずっと地味だの言ってるし、性格も真面目だし」


ネイトはレイを宣伝し始めた。レイはそんなネイトに恥ずかしくなる。


(いやいや、同性愛者に、女性宣伝してどーすんの)


「僕は、君のお姉さんのこと、お嫁さんにしたいくらい、好きだよ」
「ああ、俺だって彼女を嫁さんにしたい」
「え、本当か!?」


ネイトはジェイクとセルを交互に見て目を輝かせる。そしてお互い手をグーにしてその拳をコツンとぶつけた。男しか分からない合図である。


「ちょ、ちょっと、うちの弟に冗談はそのくらいにしておいてください!!ジェイク団長、セル副団長」


レイは堪らず仁王立ちで三人の前に躍り出た。ネイトは内緒話を聞かれたかのように、気まずそうにしている。


「ネイトも、ジェイク団長とセル副団長に私なんかを勧めないの!」
「え~、だってよぉ」


ネイトは鼻の頭を掻きながら言い訳を始めた。


+++


「じゃ、ジェイクさん、セルさん、頑張って!!レイ姉すっげー鈍感だし抜けてるから、ビシッと頼むぜ」
「ああ、任せておけ。また来いよ」
「ネイト君は安心してお姉さん預けといてね」


ネイトはジェイクとセルにとても懐いたようだ。二人の貴重な時間を彼に使わせてしまい、レイは申し訳なくなる。


「遊んでいただいて、ありがとうございました、ジェイク団長、セル副団長」
「いや、こちらこそ楽しませてもらった。お前の幼少期の話も聞けたしな」
「ちょ、ちょっ///何聞いたんですか!!」
「レイちゃんが、もう結構年取ってからお漏らしして、弟に押し付けようとしたとか・・・うん、可愛いなぁ」


(ネイト、何言ってんのよー!!)


それからジェイクとセルはネイトと文通を始め、時々ネイトからレイの情報を暴露されていることを知った。レイはネイトを職場に連れてきてあげたことを、深く、深く後悔したのであった。

    
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

【完結】魔王様、溺愛しすぎです!

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「パパと結婚する!」  8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!  拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。  シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264) 挿絵★あり 【完結】2021/12/02 ※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過 ※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過 ※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位 ※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品 ※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24) ※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品 ※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品 ※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

処理中です...