BLゲームの世界に転生したら騎士二人の♂♂の受けとなった。

ほのじー

文字の大きさ
上 下
5 / 36

初めての戦地

しおりを挟む


「セル副団長、お願い、目をさまして・・・!!」


レイはセルの服からドクドクと滲み出る血を必死に両手で押さえていた。セルのいつも優しそうな顔には表情はなく、死神のように顔は青白い。簡易ベッドの上でセルは生死をさ迷っていた。


(神様・・・お願いします・・・彼を助けてっ・・・!!)



+++



~半日程前に遡る~



レイが今朝いつものように出勤し、平和に仕事をしていたところで、最悪なニュースが飛び込んできた。



『国境付近でゴールドロッド王国の兵士たちが攻めいってきています!!』
『皆のもの、準備を!!』


(・・・なんでこんな急にっ・・・)


最近は平和になっていたこの国に水害で食料が不足した隣国が攻めいってきたようだ。第二騎士団員たちはすぐに準備に取りかかり、レイも皆の準備の手伝いで忙しく動いていた。


「レイ・・・お前は後衛部隊の医務隊員たちのサポートにまわっていてくれ」
「は、はい・・・!!」
「大丈夫。第二騎士団に勝てない敵はいないから・・・安心して待ってて、レイちゃん」


こういった状況に慣れていないレイの様子にジェイクとセルがレイに安心させてくれる言葉をくれた。こんな状況でも末端の人間である自分を心配してくれる二人にレイは涙が出そうになる。


(駄目だ・・・ちゃんと笑顔で見送らないと・・・)


「・・・っ・・・私に仕事の紹介状書いてからじゃないと・・・死ぬのは許しませんからね・・・」
「ふっ、分かってる。ちゃーんと帰ってきて、お前にいっぱい仕事させないとな」
「あはは、レイちゃん言うねぇ」


ジェイクとセルはレイが大丈夫であると察したのだろう、二人は団員たちを引き連れ、戦地へと向かっていった。



(・・・彼らが無事帰ってきますように・・・)


レイは天に祈った。



+++



(これが・・・現場・・・)


仮設の医務テントに生臭い血の匂いが充満している。既に医師たちは数人の怪我をした騎士たちを治療に当たっていた。状況は悪いらしく、他の騎士団たちが応援に駆けつけているようだ。


(ジェイク団長・・・セル副団長・・・本当に大丈夫かしら)


そう不安に駆られていると、ポツポツと怪我をした団員たちが運ばれてくる。皆命を亡くす程の怪我ではなく、安心して治療を手伝っていた。しかしその様子も徐々に変化していく。



「早く・・・早く治療をお願いします!!」



深刻な怪我人たちが増えてきたところで、若い騎士が焦った表情で一人の男性を背負いながら医務テントの中に入ってきた。背中には一人の団員がグッタリとしており、血も大量に流れていた。医師も急いで手術の準備に取りかかっている。


「え・・・セ、セル副団長・・・!!」


(なんで・・・なんで・・・)


瀕死になって倒れている男がセルであることに気がついた。彼を運んできた騎士の説明によると、ジェイクが新人の騎士のミスをカバーしていた際に敵がジェイクを後ろから切りつけようとした。それをセルが庇い、剣はグサリと刺さってしまったそうだ。そしてジェイクはセルの怪我に動揺しながらも戦い続けている。


(そんな・・・こんな血を流したら・・・死んじゃう・・・)


レイは医者の指示に従い、ガーゼをセルのお腹に押し付けた。すぐにガーゼは赤く染まるも、レイは必死に出血部分を圧迫したりと手伝いながら医者が治療するのを見守った。数時間後、医者が手を止め手術用の手袋を外した。


「やることはやった・・・あとは彼の回復力次第だ」


医師はそう言って他の団員の治療に当たる。レイはセルのベッド脇で彼の手を握った。


「お願い・・・セル副団長・・・死なないで・・・」


レイは涙を流しながら祈った。


「セル副団長が死んだら・・・ジェイク団長がどんだけ悲しむと思ってるんですか・・・愛してるんでしょう?」


レイはゲームの中の彼を思い出した。


「あんな運動好きで、性欲だらけの男・・・セル副団長以外に誰が相手してくれるっていうんですか・・・普通の人は体壊れちゃいますからね」


レイはセルの綺麗な顔に付いた血を拭った。こうやって見ると、本当に天使が眠っているようである。日も暮れ、戦いは明日まで掛かりそうだと言っていた。レイも少しは寝るように言われたが、レイは魘されて高熱を出すセルの横で額の冷たいタオルを何度も交換しながら、その場を離れなかった。


+++


(ん・・・あれ・・・少し寝ちゃってた)


夜中何度も魘されるセルに、レイが知るジェイクの話を聞かせてあげた。するとセルの呼吸は落ち着き、深い眠りに落ちるのだ。何度もそうしているうちに、レイもセルの側の簡易ベッドの横で寝てしまったようだ。少し出てしまった涎をゴシゴシと手の甲で拭きながらセルの様子を確認しようと顔を上げると、セルがレイを見ていた。


「おはよう・・・レイちゃん」


(え・・・セル副団長・・・目を・・・目を覚ましてる・・・夢?夢なの?)


レイは目を擦り、瞬きを何度もする。やはりそこには目を覚ましたセルがいた。セルは弱々しい様子なのにも関わらずレイに安心させようとしたのか、ニコリと笑顔を見せた。レイはたまらなくなり、涙腺が崩壊する。


「セ・・・セル副団長!!生きてた!!良かった!!うわ~~ん」
「僕が・・・そんな簡単に死ぬ分けたないじゃない」


レイは号泣した。セルは鼻水が出るのも気にせず号泣するレイが可笑くて笑っている。それでお腹に力が入ったのか、セルの顔が歪んだ。


「・・・痛っ」
「あ・・・そうだ、お医者様呼んできますね!!」


医者がセルをチェックする。この様子だと、彼は大丈夫そうだと言っていた。


──バンッ


医務テントに一人の騎士が歓びの表情で入ってきた。


『ジェイク団長が、一人で敵地に乗り込んで敵軍を全滅しました!!』
『おおおおおおおおおおお!!』


怪我をした兵士たちのうなり声のような低い歓声があかった。多くの兵士が涙を流している。


(よかった・・・よかった・・!!)




しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

獅子の最愛〜獣人団長の執着〜

水無月瑠璃
恋愛
獅子の獣人ライアンは領地の森で魔物に襲われそうになっている女を助ける。助けた女は気を失ってしまい、邸へと連れて帰ることに。 目を覚ました彼女…リリは人化した獣人の男を前にすると様子がおかしくなるも顔が獅子のライアンは平気なようで抱きついて来る。 女嫌いなライアンだが何故かリリには抱きつかれても平気。 素性を明かさないリリを保護することにしたライアン。 謎の多いリリと初めての感情に戸惑うライアン、2人の行く末は… ヒーローはずっとライオンの姿で人化はしません。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

責任を取らなくていいので溺愛しないでください

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
漆黒騎士団の女騎士であるシャンテルは任務の途中で一人の男にまんまと美味しくいただかれてしまった。どうやらその男は以前から彼女を狙っていたらしい。 だが任務のため、そんなことにはお構いなしのシャンテル。むしろ邪魔。その男から逃げながら任務をこなす日々。だが、その男の正体に気づいたとき――。 ※2023.6.14:アルファポリスノーチェブックスより書籍化されました。 ※ノーチェ作品の何かをレンタルしますと特別番外編(鍵付き)がお読みいただけます。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...