1 / 36
騎士団のお仕事
しおりを挟む「セル副団長、こちら頼まれていた資料です」
「ありがとう、レイちゃん」
少しふわりとした金色の巻き髪に、天使のような可愛らしい少年がレイに笑顔を向けた。
──キュンキュンキュンキューン──
レイは高鳴る胸を押さえた。彼の神々しさにレイはもう少しで鼻血がでそうである。
(私の上司が天使すぎる・・・)
レイが彼の顔を密かに堪能していると、後ろからもう一人の上司の声がした。レイは振り向く。
「おい、レイ。今から団員たちの剣の打ち合い始めるから記録しといてくれ」
「は、はい。ジェイク団長」
ジェイクはこの騎士団の団長である。彼の額にはクッパリと傷があり、極悪人の顔をしていて、鍛えた胸筋がボタンを圧迫し、はち切れそうになっている。そんな彼は見た目からも騎士団員たちの恐怖の対象となっているようだ。しかしレイは彼が本当は優しく、同僚で親友のセルの前ではその顔が柔らかくなり、女性たちが皆甘いため息を付いていることを知っている。
(ああ・・・ここで働けて良かった)
レイはそれなりに裕福な商家に生まれたのだが、数年前両親が新たに立ち上げたビジネスに失敗し、裕福だった生活から一転、極貧生活となったのだ。レイは両親の家計を助けようと王都の本屋で働いていたのだが、そこが閉店することとなってしまったのだ。
「あら、レイちゃん。それじゃ仕事なくなっちゃうの?」
「そうなんですよエリカさん・・・この仕事とっても楽しかったんですけど・・・」
解雇前のある日、店を片付けていると妊娠してお腹が大きく膨らんだエリカと呼ばれている夫人が店長に連れられ入ってきた。彼女はこの本屋の常連で、貴族なのか閉店後こうやって店を貸し切って本を吟味する。いつもレイと話しながら本を選ぶのだが、レイと彼女は本の趣味が似ていて話がいつも盛り上がるのだ。
「何個か面接行ったんですけど、駄目で・・・」
エリカはレイを本当に心配してくれているようで、腕を組みながら「うーん」唸っている。すると手をパンッ合わせ、良いことを思い付いたといった顔をした。
「あ、そうだ。私が仕事、紹介してあげる」
「え・・・そんな、悪いですよ」
「いいのいいの!!しかも給金も悪くないし、ちゃーんとした所だから安心して。とりあえず面接だけでも行ってみて!!」
エリカは後ろに控えていた護衛らしき男に何やら伝える。そして次の日、エリカの招待状の入った封筒と面接の場所を伝えられた。
(うーん、せっかく紹介してくれたんだし、面接行ってみよう)
こうしてレイは紙に書かれた住所まで、乗り合い馬車で向かったのだった。
26
お気に入りに追加
2,829
あなたにおすすめの小説

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

獅子の最愛〜獣人団長の執着〜
水無月瑠璃
恋愛
獅子の獣人ライアンは領地の森で魔物に襲われそうになっている女を助ける。助けた女は気を失ってしまい、邸へと連れて帰ることに。
目を覚ました彼女…リリは人化した獣人の男を前にすると様子がおかしくなるも顔が獅子のライアンは平気なようで抱きついて来る。
女嫌いなライアンだが何故かリリには抱きつかれても平気。
素性を明かさないリリを保護することにしたライアン。
謎の多いリリと初めての感情に戸惑うライアン、2人の行く末は…
ヒーローはずっとライオンの姿で人化はしません。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
責任を取らなくていいので溺愛しないでください
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
漆黒騎士団の女騎士であるシャンテルは任務の途中で一人の男にまんまと美味しくいただかれてしまった。どうやらその男は以前から彼女を狙っていたらしい。
だが任務のため、そんなことにはお構いなしのシャンテル。むしろ邪魔。その男から逃げながら任務をこなす日々。だが、その男の正体に気づいたとき――。
※2023.6.14:アルファポリスノーチェブックスより書籍化されました。
※ノーチェ作品の何かをレンタルしますと特別番外編(鍵付き)がお読みいただけます。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる