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ガイル⑥

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(こんな息が合う女性は始めてだ)


ガイルは急に姪に頼まれたお願いに戸惑ったが、サラをダンスに誘った。遠慮がちにガイルに触れたが、曲が始まりガイルの意思と同じ動きを見せ、まるで二人の意識が重なりあっているようだ。優雅に舞う彼女は天女のように美しい。彼女も楽しいのか口角が上がっているようだ。


(彼女は・・・こんな風に笑うのだな)


叔母はいたずら心で曲を徐々に速めていた。二人の動きはテンポアップしていき、息が上がっていく。ガイルは負けじとサラを何度もクルリと回して抱き止めた。曲は再びゆっくりとなり、終了した。しばらくサラとガイルは見つめあっていると、拍手が聞こえた。


──パチパチパチ──


「サラ先生も、ガイルお兄様も凄かったです・・・」
「ふふふ、息がぴったりだったわねぇ」


レイラとルリが称賛する。


(そうだ、彼女たちがいたんだった)



もし二人がいなければガイルはサラに口付けていたであろう。完全にガイルはサラに夢中になり忘れていた。


「シーガル伯爵に上手くリードしていただいたお陰です」
「いや、君が上手でリードしやすかっただけだ」


叔母が二人の空気に気付き、ニヤニヤと笑みを浮かべている。


「伴侶のように息ぴったりだったわよ。そうだ、レイラ。私疲れちゃったわ~少しお茶休憩しましょう」


ルリは二人を部屋に残し、レイラを連れて部屋を出ていった。


「あの・・・「それで・・・」


二人同時に話し出してしまい、戸惑いの空気が流れる。


「すみません、なんでしょうかシーガル伯爵」
「い、いや。その、君と踊れてとても楽しかった」
「私も・・・一緒に踊れて光栄でした」


二人に沈黙が再び訪れる。女性を本気で褒めることにガイルは慣れておらず、不自然になってしまった。


(その辺の女性には、気軽に綺麗だと言えるのに・・・)


「じゃ、仕事に戻る。また、今夜待っている」
「はい・・・また今夜・・・」



ガイルは逃げるように部屋を出た。









「お久しぶり、提督・・・いや、今はシーガル伯爵って呼んだ方がいいかな」


白髪であり、もう年は六十を越えるであろうが、野心がまだまだあるというようにギラギラとした目を持った男が屋敷を訪れた。彼はヴェール伯爵で、ガイルと同じ伯爵だが、ガイルのように一代限りの伯爵ではなく、歴とした伯爵なのである。彼は海軍の裏のボスと呼ばれ、軍内の監視を行っていた。彼に逆らった大佐が、二等兵に大きく格下げされたことは、大きな噂となった。


「ヴェール伯爵、お久しぶりです」
「いやぁ、落ちぶれていたと聞いていたが、元気そうじゃないか」


葉巻を咥えながらヴェール伯爵が敬礼をするガイルに笑みを向けた。


「懐かしいなぁ。戦争では君のお兄さんと君の部下が死んだことは、残念であったが、あの作戦は勝利に導くことができたからな」
「・・・はい」


当時ガイルの無謀な作戦をヴェール伯爵に伝えるとヴェール伯爵は大賛成をし、ガイルの後押しをした。兄のパトリックは最後まで辞めようと言っていたのだが、ヴェール伯爵に称賛され、勝利を確信していたガイルは引くに引けなくなっていたのだ。


「しばらくここの別荘に滞在するからまた連絡をしてくれ。パーティーも開こうと思うから参加してくれよ」
「は、はい・・・」
「海軍の部下も参加する予定だ。君の知り合いもいるだろうから、楽しもうじゃないか」


ヴェール伯爵はそう言い残し、去っていった。

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