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一章:子供を拾う

王都

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「まさか女の子だったとはなぁ。しかもこんなに可愛い子供が、森に一人でいてたなんて信じられないよ」


ヴィンセントはすぐにカイルに報告しに行った。リリィは分厚いコートのフードを被せられ、重たそうにモゾモゾと動いていた。


「ああ、俺のオーラにも動じていないようだった」
「君の全開オーラに耐えられるのは僕と国王くらいだからねぇ」


オーラは普段生活をしている中では弱めることができるのだが、それでもヴィンセントのオーラはかなり漏れているようで、長時間一緒にいると気分が悪くなったりするようだ。カイルも同じくオーラが濃厚で、ヴィンセントと一緒に渡りあえる唯一のパートナーである。彼らの滞在しているテントが他のものより離れているのも、他の兵士を思ってのことだ。そんなオーラを全開にしたヴィンセントに森で会ったにも関わらず、本人リリィはケロリとしている。


「まあ、君が育てる上で都合が良いじゃないか。普通の子供なら今頃体に不調があってもおかしくないし」
「ああ、そうだな」


ヴィンセントはリリィを信頼できる他の者に託そうと思っていたのだが、リリィはヴィンセントから一切離れようとしない様子で、一度試しにリリィに向けてオーラを放ったのだがそれに気分を悪くしている様子もない。


(俺の家に連れていくか)


ヴィンセントはしばらくリリィの面倒を見ることを決めた。








「ほら、ここが俺の家だ。家、い、え」
「・・・いえ?」
「そうだ」


ヴィンセントの家は王都を抜けてすぐの道にひっそりと建っている。家は小さいのに庭は無駄に広いのだが、それもヴィンセントのオーラに関係している。戦前は彼のオーラは安定していて実家には使用人も数人いたのだが、戦争で親や兄弟が死に、彼のオーラの強さもあり未成年ながら戦地の前線に毎回繰り出され、彼の精神は病んでしまったのだろう。寝ている最中体内からオーラが暴れるようになったのだ。


「けほっ、けほっ」


(掃除しないとな・・・)


暴れるオーラは使用人の精神へも影響する。長年勤めていた使用人も辞め、彼は一人で孤独に過ごすことようになった。家は物は少ないが留守の期間が長くホコリが溜まっているようだった。ヴィンセントは窓を開け冷たい空気を入れた。


「ほら、飯食べるぞ」


リリィはお腹を空かしているらしく、椅子にチョコンと行儀よく座った。綺麗に食べる様子は
まるで良いところのお嬢さんのようで、東の国ではそこまで身分は低くなかったのではないかと考える。


「はふぅ」
「はは、まだ熱いだろう」


リリィは熱いスープに驚き、冷たい水をごくごくと飲んで舌を冷やしていた。


「ほら、ふぅー」


ヴィンセントはスープをフーフーと冷まして、リリィの口に持っていってあげた。


(本当に小動物みたいだな)


ヴィンセントのスプーンに口を寄せスープを一生懸命飲む様子はまるで餌付けされる動物のようだ。そんなリリィの様子に満更でもなくヴィンセントはスープが空になるまで食べさせてあげた。(途中からはスープも冷めて食べさせる必要はなかったのだが)


「むにゃぁ」


食べ終わりソファーで寛いでいると、一緒に座っていたリリィはスヤスヤと眠ってしまったようだ。ヴィンセントもずっと続いた戦いに疲れ、一緒に眠りについた。







『人殺し』
『殺人兵器!』


(やめろ・・・)


『あいつはこの国の兵器として一生働かせる』
『不憫な男・・・』



(俺は・・・兵器じゃない・・・人間だ)



「ヴィー、ヴィー、※※※」



遠くから声が聞こえてくる。どこか温かく可愛いらしい声だ。ヴィンセントの上に乗っかる小さな重みも心地よい。



(ああ、安心する・・・)



ヴィンセントはその声を聞きながら久しぶりに深い眠りについた。
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