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王都

16 あれと同類は嫌です

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「適当に座れ」
 案内されたのは廃材やゴミ捨て場から回収してきたもので出来た休憩所のような場所だった。
 お兄ちゃんに一生懸命ちょこちょことついて来ていたエレナちゃんがとってもかわいかった。
 ハンネス君も慣れた様子でエレナちゃんに歩調を合わせて、降りたり登ったりするところでさりげなくエスコートしてるのが非常にグッドです。ただ他人で男の俺に対するスルーっぷりが実に塩対応で悲しいです。
「あ、これお土産。パティスリーエドメのナジクサンド」
「こんなところに手土産持ってきたやつ初めて見たぞ」
 ふふふ、そんなこと言って、俺はハンネス君がエレナちゃんのキラキラした瞳と同じ輝きを宿してるのを見逃してないぞ。パティスリーエドメは美味しいからな!
「はいこれ。俺も食べよ、……んー、おいひい」
「んまい。さすがパティスリーエドメ、んまい」
「おにいひゃん、これ食べたことないヤツだけどおいひいね」
 ――――至福。
 妖精のように愛らしい子たちに囲まれながらおいしいお菓子を頬張れるとか、前世の俺は一体どんな徳を積んだというんだ。あれ? いまいち徳積んだ覚えねぇや。
「あ、それでね。さっき俺があの将来が心配になる少年に言ったことはきれいさっぱり忘れてほしいんだけど」
「言われなくてもわかってる。どこの貴族が未成年の使用人に名乗る程度の躾もせずに外で権力のある人間に会わせる仕事を振るんだ。俺でもわかるぞ、そんなもん。」
 あんなに騙されやすくて彼のおうちの財政は大丈夫なんだろうか? と呟くとハンネス君がいかにも沈痛といった表情を作って黙祷―――と呟いた。
 ああ、ご多聞に漏れない状況なのね。あの人を疑わない姿勢がいつか吉と出ればいいのだけど。
「で、俺商業ギルドに加入してるユーラスってものなんだけど、あ、これギルドカードね。ほいで、今作ってる企画段階の商品を完成させるために“すす”と“薪で出た灰”が欲しいのね。二人はかまど掃除の達人として商業ギルドのサブギルドマスターから非公式に紹介してもらったから、その二つを集めるのを手伝ってほしいんだけど……」
 できそう? と聞くとハンネス君はちょっと嫌そうに顔をしかめた。
「俺らをどうこうしようって甲斐性お前に無さそうだってのは、さっきから見てたから信じてやってもいいけど。おまえ、それ出来るって言ったらゴミ漁りより賃金が低くても違約金がどうのとかいって無理やりやらせようとする商人と同類に見られるから孤児相手にはやめた方がいいぞ」
「ああー、そういう見方もあるのか……。俺としては賃金提示した後で聞くと出来なくても出来るって言われそうで嫌なんだよな」
「悪いこと言わねえから先に金額出しとけ。他所は知れねぇけど王都の孤児は騙されたり無理やり言うこと聞かされたりしてるから、出来ないことを出来るって言ったりしないし、逆にそういう小賢しい真似すると嫌われる」
 じゃあこのぐらいっと、予定してる金額を告げると、また呆れた顔をして疲れたようにオッケーを出してくれた。手付金と灰やすすを回収する麻袋(1枚198円)手渡すと頭をひっぱたかれた。解せぬ。
「お前、ほんと王都で孤児に人気のない場所に連れていかれてるのにホイホイ呑気について行くなよ。大抵信用してない金持ってそうな奴なら袋叩きで金巻き上げられて終わりだからな。あと気軽に手付金とか渡すな! たまたま俺らが他の孤児たちのグループに入ってないから情報共有されてないだけで他の孤児にやったらあっという間に群がられるからな!!」
 さっきのでぶっちょボニートを笑えねーからな!! と力強く宣言された。エレナちゃんも同意見らしく小刻みに頷いている。
「俺だってさすがにそんなホイホイついてったりしないよ。この商業ギルドのサブマスから紹介されるぐらい信用がなかったらいくらなんでも孤児の根城についてきたりしないよ」
 ちぇーっと口をとがらせながらいうと、二人とも言われたことがうれしかったのか満更でもないような顔をしていた。
 照れ方が一緒でホントに兄妹なんだなぁと、しみじみ思った。
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