21 / 21
6-2:妻がお祈りしまして……
しおりを挟む
教壇では神父が神のお告げをしていた。
父は言いましたとか、神の言葉ですだとか、
まだ俺には難しい言葉ばかりだ。
神が見守っているといっているが、俺たちは神から見放されているのかもしれない。
そうでなければ、こんなことにはなっていないし。
美鈴は目を花音に隠されていることで、なんとか教会に中に入ることができているが、
ずっと、そうするわけにもいかないだろう。
そろそろ、神のお告げも終わる。
「花音、そろそろママに見せたらどうだ?」
俺は小声で花音に耳打ちした。
「うん、そうだね」
花音はそっと、美鈴の目から手をどかした。
「うぅ、あぁ……!!!!! あぁー!!!!!」
美鈴は急に目を伏せ始め、跪いた。
何、何?
怖い怖い!
急にどうした?
その姿はまさに異様ともとれる光景だった。
両膝をつき、両手を前にして、顔を伏せながら拝んでいる。
まるで、神にお祈りしているかのような姿だ。
うめき声を上げながら、拝むように崩れ落ちる美鈴を周りの人達は、
気になって、神の言葉を聞かずこちらを見ている。
そりゃそうか。
急に叫んだら、みんな気になるよな。
でも、このままにするわけにはいかないし、
「花音! 目を隠せ!」
「あ、あぁ、うん!」
花音は急いで、美鈴の目を手で隠す。
一体、何に怯えているんだろうか?
俺は周りを見渡した、
神父の後ろには巨大なイエス・キリストが磔にされている十字架が飾られている。
もしかして……これ?
十字架に反応した?
嘘だろ、十字架に反応って吸血鬼じゃないんだから!
「おぉ~、おぉ……」
まだ、苦しんでる……
なんかダメージでも入ったか?
RPGじゃないぞ!
「そこの方々、大丈夫ですか?」
神父は気になったのか、教壇の上から話しかけてきた。
「あぁ、大丈夫です。ちょっと初めて来たもので混乱したみたいで」
俺と花音は美鈴が目立たないよう、人達の視界に入らないように体をくねくねと動かす。
「安心してください、神はあなた方についています。心配せずに祈りを捧げましょう」
神父はそういって神の言葉を続けた。
安心はできないんです神父様……
放っておけば、いつまた何かが起こるかもしれません。
俺たちには神ではなくゾンビがついているんです。
祈りを捧げれば彼女はなぜか苦しむんです。
神父の神の言葉はその後も続き、およそ10分ほどの時間が経過した。
美鈴はあれからは落ち着き、静かに椅子に座っている。
俺と花音は美鈴に目隠ししている手を交代しながらなんとかしのぐ。
はっきり言ってしっかりと祈る余裕はない。
当初の目的がまったく果たされぬまま刻々と時間だけが過ぎた時、
事件は起きた。
「ねぇ、何してるの?」
突然男の子がおもちゃを持って美鈴に話しかけに来たのだ。
「どうしたの僕? 危ないからママの所に帰りな?」
俺は優しく男の子に母親の所に帰るよう促す。
だが、男の子はどうやら美鈴のことが興味深々なようだ。
じっと、美鈴を見つめる。
「ねぇ、この人って生きてるの?」
!?
なんだ急に!
俺と花音は一瞬ドキッとした。
子供の勘みたいなやつか!?
だとしたら怖すぎる。
「ど、どうしてそう思うの?」
花音は動揺が隠せない。
声は震え、目も泳いでいた。
「だって、動かないんだもん。お人形さん?」
確かに、美鈴は目を隠しているからか動いていない。
そこを見られてるってことか。
「そ、そんなことないよ、ママは動くよ? ほらっ」
「ば、バカ!」
花音は美鈴の目から手をどかした。
ギロッ
美鈴は男の子に視線をやる。
「うわぁぁぁぁん!!!!!」
男の子はあまりの恐怖に大泣きをしてしまう。
美鈴は睨んだのではなく、ただ自然に下に視線がいっただけ。
だが、人形かなにかだと思っていた男の子にとって、
突然、動き出したことは恐怖だったに違いない。
男の子は走って母親の所に向かった。
「ちょ、ちょっとマー君どうしたの?」
あー、めんどくさくなりそうだな。
父は言いましたとか、神の言葉ですだとか、
まだ俺には難しい言葉ばかりだ。
神が見守っているといっているが、俺たちは神から見放されているのかもしれない。
そうでなければ、こんなことにはなっていないし。
美鈴は目を花音に隠されていることで、なんとか教会に中に入ることができているが、
ずっと、そうするわけにもいかないだろう。
そろそろ、神のお告げも終わる。
「花音、そろそろママに見せたらどうだ?」
俺は小声で花音に耳打ちした。
「うん、そうだね」
花音はそっと、美鈴の目から手をどかした。
「うぅ、あぁ……!!!!! あぁー!!!!!」
美鈴は急に目を伏せ始め、跪いた。
何、何?
怖い怖い!
急にどうした?
その姿はまさに異様ともとれる光景だった。
両膝をつき、両手を前にして、顔を伏せながら拝んでいる。
まるで、神にお祈りしているかのような姿だ。
うめき声を上げながら、拝むように崩れ落ちる美鈴を周りの人達は、
気になって、神の言葉を聞かずこちらを見ている。
そりゃそうか。
急に叫んだら、みんな気になるよな。
でも、このままにするわけにはいかないし、
「花音! 目を隠せ!」
「あ、あぁ、うん!」
花音は急いで、美鈴の目を手で隠す。
一体、何に怯えているんだろうか?
俺は周りを見渡した、
神父の後ろには巨大なイエス・キリストが磔にされている十字架が飾られている。
もしかして……これ?
十字架に反応した?
嘘だろ、十字架に反応って吸血鬼じゃないんだから!
「おぉ~、おぉ……」
まだ、苦しんでる……
なんかダメージでも入ったか?
RPGじゃないぞ!
「そこの方々、大丈夫ですか?」
神父は気になったのか、教壇の上から話しかけてきた。
「あぁ、大丈夫です。ちょっと初めて来たもので混乱したみたいで」
俺と花音は美鈴が目立たないよう、人達の視界に入らないように体をくねくねと動かす。
「安心してください、神はあなた方についています。心配せずに祈りを捧げましょう」
神父はそういって神の言葉を続けた。
安心はできないんです神父様……
放っておけば、いつまた何かが起こるかもしれません。
俺たちには神ではなくゾンビがついているんです。
祈りを捧げれば彼女はなぜか苦しむんです。
神父の神の言葉はその後も続き、およそ10分ほどの時間が経過した。
美鈴はあれからは落ち着き、静かに椅子に座っている。
俺と花音は美鈴に目隠ししている手を交代しながらなんとかしのぐ。
はっきり言ってしっかりと祈る余裕はない。
当初の目的がまったく果たされぬまま刻々と時間だけが過ぎた時、
事件は起きた。
「ねぇ、何してるの?」
突然男の子がおもちゃを持って美鈴に話しかけに来たのだ。
「どうしたの僕? 危ないからママの所に帰りな?」
俺は優しく男の子に母親の所に帰るよう促す。
だが、男の子はどうやら美鈴のことが興味深々なようだ。
じっと、美鈴を見つめる。
「ねぇ、この人って生きてるの?」
!?
なんだ急に!
俺と花音は一瞬ドキッとした。
子供の勘みたいなやつか!?
だとしたら怖すぎる。
「ど、どうしてそう思うの?」
花音は動揺が隠せない。
声は震え、目も泳いでいた。
「だって、動かないんだもん。お人形さん?」
確かに、美鈴は目を隠しているからか動いていない。
そこを見られてるってことか。
「そ、そんなことないよ、ママは動くよ? ほらっ」
「ば、バカ!」
花音は美鈴の目から手をどかした。
ギロッ
美鈴は男の子に視線をやる。
「うわぁぁぁぁん!!!!!」
男の子はあまりの恐怖に大泣きをしてしまう。
美鈴は睨んだのではなく、ただ自然に下に視線がいっただけ。
だが、人形かなにかだと思っていた男の子にとって、
突然、動き出したことは恐怖だったに違いない。
男の子は走って母親の所に向かった。
「ちょ、ちょっとマー君どうしたの?」
あー、めんどくさくなりそうだな。
0
『妻がゾンビになりまして……』を閲覧していただきありがとうございます。良かったら、高評価、コメントお待ちしています。ちなみに、私の中で、美鈴は吉高由里子さん、花音は今田美桜さん、亮は鈴木亮平さんをイメージしてました。これからも、作品をよろしくお願いします。
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる