妻がゾンビになりまして……

Mr.Six

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6-1:妻がお祈りしまして……

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 明日は待ちに待った土曜日だ。

やっと、ゲームを進められるぞ!

俺は夕食の支度をしながら、明日のことを考えていた。

「よし、できたな。花音、美鈴ご飯だぞ!」

大きな声で2人に呼び掛けると、のそのそと出てきた。

「うぅ~」

相変わらず、美鈴は唸るだけ。

最近は慣れてしまってこの程度では驚かなくなっている自分に気づく。

花音は風呂から出たばかりなのか、パジャマ姿で出てきた。

「「いただきます」」

俺が食事をしていると、花音が突然提案してきた。

「ねぇ、明日なんだけどさ」

俺は何かあるとすぐに察知をして、すぐに返事をした。

「ダメだ! 俺は明日ゲームをするからどこにもいかないぞ!」

「まだ何も言ってないでしょ!? あのさ、教会でお祈りしない?」

俺は食事の手を止めた。

「お祈り?」

「うん、ほらママっていつまでこのままなのかわからないでしょ?だから、ママが治るのを教会でお祈りするの」

なるほどな、教会か……

考えたこともなかったな。

自分たちで治すことしか考えてなかったからな。

「でも、どこの教会に行くんだ? 有名な教会とかか?」

花音はニヤリと笑顔を見せて、手に持っていた箸を机に置いた。

「それが、良い所があるんだよ。海沿いにある綺麗な教会なんだけどね、人もあんまりいないからママを連れていくにはちょうどいいと思うんだ!」

人がいない教会なら安心……かな?

まぁ、ゲームは最悪帰ってきてからでもできるからな。

しょうがない、花音のわがままに付き合ってやるか。

「午前中には終わらせるぞ」

俺はそういって、みそ汁を飲んだ。

「やったー! さすがパパ、話が分かるね」

花音は箸を持って、勢いよく目の前の料理を食べ始めた。

ったく、調子がいい奴だな。

ムシャムシャ

俺たちが話している間も美鈴は必死に生肉を喰らっていた。

あぁ、まったくそんな必死に食べちゃって、可愛いなぁ

美鈴の為にも、できることは全部やらないとな―――




―――俺たちは翌日、海沿いの教会に向かった。

まだ5月だからか、海風が肌寒く、海の香りもどこか心地いい。

教会は大きいとは言わないが、蔓が教会に絡まっていて、

映えスポットとして申し分ない。

もしかしてだが、

「ねぇ! 見て雰囲気めちゃいいんだけど! 写真、写真!」

花音はスマホを取り出し、おもむろに写真を撮り始めた。

やっぱり、自分が来たいだけだったか花音!

誰よりも自分が楽しみにしてるし!

自撮りもしてるし、なんかオシャレにしてるし。

だが、俺が一番驚いたこと。

それは、

「うぅ、あぁ! あぁ……」

教会の前でオロオロしている美鈴だ。

えっ?

教会ってゾンビはNGなの?

そういう設定なのか?

「美鈴、ほら行くよ」

俺は美鈴の腕を引っ張って教会の中に入ろうとした。

「あぁ! あぁ……うぅ~!」

美鈴は頑なに中に入りだがらない。

なんで、そんなに入りたがらないんだ?

花音もついているし、問題はなさそうだけど。

美鈴は全体重を後ろにかけ、中に入らないよう必死に抵抗している。

「ママ? どうしたの中に入ろうよ!」

花音は美鈴の腕を引っ張る。

「あぁ、うぅ~……」

美鈴は花音の呼びかけに応じるのに、今日だけは効果がない。

顔はどこか何かに怯えているようだ。

「なぁ、花音ちょっと美鈴の目を塞いだらどうだ?」

俺は無謀ともいえる策を花音に提案してみた。

「あぁ、やってみようか、ママごめんね」

花音は美鈴の後ろに回り込み、両手で目を隠す。

「うぅ~、あぁ」

美鈴は力を抜いて、中に連れていくことができた。

いや、連れて行けるのか!

見えなかったら大丈夫ってことなんだろうけど、

どういう設定なんだよ。

ゾンビってあくまで俺たちがそう定義しているだけで、

ゾンビではないはずなんだが、

だが、何かを見たことで怯えていることは確かだな。

その何かを追求しないと、もしかしたら美鈴にはストレスなのかもしれない。

俺たちは、みんなが集まる集会所に向かい、席についた。
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