妻がゾンビになりまして……

Mr.Six

文字の大きさ
上 下
18 / 21

5-3:妻とお化け屋敷に行きまして……

しおりを挟む
 美鈴はどうやら花音とはぐれたようだ。

「美鈴、花音と合流でもするか」

「うぅ~」

そうか、美鈴は夜行性だった。

暗い所だと活発になるんじゃないか?

だとしたら早く出ないといけないかもしれないな。

「とりあえず、先に出るか美鈴行くぞ」

俺たちは部屋の外に出ようとした。

すると、壁から5人のゾンビが現れた。

「うおぉ~」「がぁぁ……あぁ」「あ~」

ゾンビよりも何よりも、音にびっくりしてしまう。

俺は美鈴の腕を引っ張り、部屋の外に出ようとする。

しかし、美鈴は微動だにしない。

「ん? 美鈴?」

もしかして、スイッチでも入ったんじゃ?

「うぅぅぅぅぅ……がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

美鈴は怒り狂ったように暴れ始め、ゾンビ役の人達を襲い掛かる。

「うおぉ、お? うわ、なんだこの人!」

ゾンビ役の人、ごめん、君もやっぱり人だったか。

「美鈴! おい、人を襲わないの!」

美鈴はゾンビ役の人達を追いかけまわしている。

本来は追いかける側が追いかけられてるシュールな絵面だ。

とはいえ、このままほっとくわけにもいかないな。

美鈴はゾンビ役の1人に掴みかかり、力任せに体を振り回す。

「う、うわぁぁ! や、やめてくれぇ」

まずい! このままじゃ噛みつきかねないぞ!

「美鈴、こら!」

俺は美鈴を後ろから羽交い絞めした。

「うぅ、うがぁぁ!」

美鈴は俺の腕の中でもがいている。

「おいおい、お前何かやったんじゃないのか?」

ゾンビ役の1人が、襲われた人に問い詰める。

あぁ、もう世界観台無しだわ。

皆、素に戻っちゃってるよ。

「えぇ!? 僕何もしてないですよ!」

そうです、何もしてませんあなたは。

悪いのはこちらサイドなんで。

そうこうしているうちに、扉が開く。

「はぁ、やっと解けたよ。真ん中って発想はなかったわ……ん?」

そこには、謎を解いて突破してきた花音がやってきた。

「おぉ、いいところに花音、ママを止めてやってくれ」

「どういう状況?」

「え~っと、花音が思い描く最悪のケースが発生していると思ってくれれば大丈夫だ」

「あぁ~……おっけ」

花音は、美鈴を抑えるために腕を掴んだ。

少しずつ、美鈴は落ち着きを取り戻し始める。

花音がいないと落ち着けないってどんな心理状態なんだろう。

「ったく、なんなんですか!」

そうなんだよ、まぁ本人たちはびっくりするよな。

目の前で追いかけてきてるのが本物のゾンビだって。

普通は信じないよ。

どうにかしてごまかさないとな。

「すいません、今日お化け屋敷で逆にゾンビみたいに襲い掛かったらどうなるかなぁって思って、嫁に協力してもらったんです」

俺、普通に最悪な夫だな。

そんなこと嫁にやらすなよな。

「その割にはだいぶ演技入っちゃってますけど」

ゾンビ役の人達が、美鈴の周りに集まり始める。

「だとしたら、迫真の演技だよな」

「あぁ、ぜひうちにスカウトしたいぐらいだな」

「襲い方もゾンビみたいだったし」

「別嬪さんだし、もしかしたら看板ゾンビになれるかも」

看板ゾンビって何?

看板娘みたいに言わないでくれる?

てか、非常に大人気なんですけど美鈴さん……

嬉しいような、悲しいような。

「すいません、ちょっと世界観ぶち壊して申し訳ないんですけど、先に進んで謎解きだけでもしていいですか?」

俺は、これ以上ここにいると、変に混乱させたりしてまずいと思い、

先に進ませてほしいとお願いをした。

「あぁ、でもこれ以上変なことはしないでくださいね」

俺はゾンビ役の1人に注意され、苦笑いをしながら頷く。

「本当に申し訳ありませんでした。ほら、花音、美鈴行くぞ」

「う、うん。行こうママ」

「うぅ~……」

まだ演技入ってますね。

もうお化け屋敷じゃないよ。

だってもう怖くないもん。

目の前のゾンビが一番怖いわ。

世界観を美鈴が全部持っていったよ。

俺は、何とか道中にある謎解きをしていき、

最後の謎解きのある部屋までたどり着いた。
しおりを挟む
『妻がゾンビになりまして……』を閲覧していただきありがとうございます。良かったら、高評価、コメントお待ちしています。ちなみに、私の中で、美鈴は吉高由里子さん、花音は今田美桜さん、亮は鈴木亮平さんをイメージしてました。これからも、作品をよろしくお願いします。
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...