妻がゾンビになりまして……

Mr.Six

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4-2:妻と買い物に行きまして……

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 部屋から出てきた美鈴はまさに俺にとっての天使だった。

花音は美鈴のセンスを引き継いでいるのか、良いセンスを持っている。

そのセンスも相まって、美鈴が綺麗に見えた。

長い黒髪は、ハーフアップで髪留めで止めており、

血色のない顔色はチークか何かで隠していて、

白のワンピースと紺色のジーンズが絶妙に美鈴のボディラインをより強調している。

花音センス良すぎか?

それとも俺のタイプが分かってるのか?

わざとか?

なんでもいい、ただ言えることは。

「可愛い……」

俺はしばらく言葉にできず美鈴を見ていた。

相変わらず美鈴は俺を睨んでいるが……

「おい、ママ見すぎだってば。鼻の下伸ばして変態オヤジみたい」

いや、口悪いな花音。

鼻の下ぐらい伸ばすだろ。

伸ばしたっていいだろうよ。

「い、いや伸ばしてないって」

俺は恥ずかしくなって、口元を腕で隠した。

「ねぇ、ママ可愛すぎ! 私達姉妹みたいじゃない?」

花音は凄くはしゃいでいた。

久しぶりの美鈴との外出なんだ。

テンションも上がるか。

てか

「花音、ママを可愛くしたかっただけだろ!」

花音は目を大きくしてこっちを見てきた。

そのあと、美鈴の肩に手を置きながら笑い始めた。

「ははっ、分かった? だって、久しぶりの外じゃん? 可愛くしないとね」

「あぁ~」

美鈴は変わらず、感情が分からないが、どこか喜んでいるようにも見えた。

本当は俺が守ってやりたいけど、俺だと逆に迷惑かけそうだからな。

ここは花音に任せるしかないか。

「仕方ないか、でもいいか花音、ママのことちゃんと頼むぞ。俺だと噛みつかれてバレちゃうからな」

「わかってますって、じゃあ、行こう!」

本当にわかってんのか?

何かあれば、俺たちの生活が危険になるんだが……

花音は美鈴の腕を引っ張って、外に停めてある車まで一緒に向かった。

まぁ、何かあれば止めれば大丈夫かな。

なにより、花音があんなに喜んでいるのに、行かせない理由は無いか。

俺は2人の車に向かう姿を見て、自然と笑みがこぼれた。

「ちょっと、2人とも待ってくれって」

そして、車の鍵を持って、車に乗り込み近くのスーパーまで車を走らせた―――





―――スーパーに到着して、俺たちは車から降りる準備をした。

「わぁ、さすが土曜日のスーパー人多すぎ!」

花音は車から降りて、人の多さに驚いていた。

いつも、土日は部活とかでこういうところには家族で来てなかったからな。

美鈴と出かけるとしても、服を買いに行くとかだろうから、

花音からしたら新鮮なのか?

てか、花音と美鈴って、まるで姉妹みたいだな。

来る前に花音が言ってたことはあながち間違いじゃないか。

俺は2人を車から少しの間見た後に車を降りた。

しかし、改めて見るとここのスーパーは大きいな。

この辺りでは結構大きいスーパーで、人もかなり多い。

食材だけでなく、雑貨や洋服、ゲームセンターもあるスーパーマーケットだ。

まぁ、一種の複合施設だからな。

付近の住民はみんなここで買い物しているのだろう。

「はい、2人とも集合~!」

「も~、なんなの?」

俺は2人を集めた。

これからは、ちょっとした言動、行動が命取り。

注意して、少しでも周りから見られないようにしないとな。

「いいか、2人とも絶対に目立つようなことするなよ?」

「もう、心配し過ぎって。ねぇ、ママ」

「あぁ~」

いや、もう不安でしかないけどね。

1人は『あぁ~』か『うぅ~』しか言わないし。

もう一人は、はしゃぎすぎて行動が大胆になりそうだし。

う~ん、やっぱり連れてくるのは間違いだったか?

俺は1人で車の前で悩んでいたが、気づいたら2人はすでに店頭に向かっていた。

どれだけ楽しみにしてるんだ。

俺は一抹の不安を抱えながら、どうにか払拭するため、

ここは楽しむことにした。

不安を抱えていても、仕方ないしな。

「あ、おい2人とも! ったく!」

俺は駆け足で2人のもとに向かった。
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