妻がゾンビになりまして……

Mr.Six

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3-2:妻が怒りまして……

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美鈴はゆっくりとこちらに歩いてくる。

まずい! この人達に噛みつきでもしたら、逆にこっちがなんか言われるぞ!

俺はすぐに花音の袖を引っ張った。

「花音、ママを頼んだ!」

花音は状況をすぐに理解してくれた。

「う、うん! ママ、こっちの部屋に行こう」

「あぁー……」

花音は急いで、美鈴を引っ張り部屋に返す。

その状況を見て渡辺が、驚きながら口を開いた。

「先程の方は、えっと奥さんですか?」

まぁ、そうなるよな。

「はい、手術の方は成功して今は自宅で療養中なんです」

「その割には、どこにも傷はありませんでしたが」

やばい、なんて言い訳したらいいんだ!?

医師からはゾンビになったことは言うなって言われてるし。

「お、思った以上に回復力が高かったみたいで……」

何? 回復力って。

自分でもびっくりするわ。

脳天かち割れてんだぞ?

回復力どうこうの話じゃないだろう。

流石にバレるかな?

俺はチラッと渡辺を見た。

「そうですか、無事でしたか」

渡辺は安堵の表情を浮かべていた。

通じちゃったよ~。

え、渡辺さん意外と純心なんだ。

今シリアスな展開なはずなんだけど、だいぶおかしな方向に向かってるぞ。

すると、浦見が口を開く。

「なんだ、無事じゃないですか」

「は?」

今、なんて言った?

「おい、浦見!」

「渡辺さん、ちょっと黙ってください」

「うっ、滝沢様……」

俺は我慢の限界に来ていた。

「浦見さん、今なんて言いました?」

「はい? 渡辺部長と同じことを言っただけですよ?」

「浦見さんの場合は違う意味合いに聞こえましたが?」

俺はゆっくりと立ち上がる。

「失礼ですけど、うちの嫁は頭の脳の一部を切り取ってるんですよ?」

俺は話し続ける。

「人の嫁を殺そうとしといて、『無事じゃないですか』ってあまりに失礼じゃないですか?」

「いや、でも死んでないんでしょ? よかったじゃないですか」

プチッ

俺は机を両手で大きく叩いた。

「あんた! いい加減にしろよ! 俺たちがどんな思いで生活していると思ってる!」

「怪我ですんでよかったって言いたいんですよ? それのどこが悪いんですか?」

浦見はまるで自分は悪くなくなったかのような言い方だった。

正直、ここまで怒りが込み上げてくるとこいつを懲らしめてやらないといけない気持ちになってしまう。

「渡辺さん、貴方の会社はどういう教育されてるんですか?」

俺は浦見に起こっても仕方ないと思い、渡辺と話すことにした。

「申し訳ありません、すべて教育を怠った私の責任です」

「こんな奴が、バスを運転しているとか耐えられません。またいつか同じ事故を起こしますよ?」

「おい、それはあなたには関係ないだろ!」

浦見が俺たちの会話に割って入ってきた。

だが、俺は無視をして渡辺と話を続けた。

「申し訳ありませんが、今日の所はもうお引き取りください。慰謝料とかに関しては弁護士を通じてお話しさせていただきます」

「い、いえ、滝沢様、私どもは示談の交渉を……このことが世間に知れたら」

「それはそちらの都合です。こちらには関係ありません。というより、ここにきて示談とかどういうつもりなんですか?」

渡辺の額には大量の汗が滲み出ていた。

「そ、それはそうですが」

「ふん、どうせ結局お金が欲しかった、そうでしょ?」

「なんだと?」

コイツ、どこまでもこっちをイラつかせる態度をとりやがる奴だな。

そっちがその態度なら、もう謝罪なんて必要ない。

こっちもそれなりの対応をさせてもらう。

「……わかりました。では交渉の余地はありません。渡辺さん、すみませんが示談には応じるつもりはありませんので」

俺は目の前にあるお茶の入ったコップを片付けに入る。

「そんな、滝沢様、どうかお考え直しをして頂けませんか? この通りです!」

渡辺は椅子から離れて土下座をする。

俺はコップを台所に置いてから、膝をついて渡辺の肩に手を置いた。

「渡辺さん、すみません。私はもう許すことはできません。顔を上げてください」

「奥さんは元気なんだ、もしかしたら嘘なのかもしれませんよ?」

「お前……!」

俺は思わず浦見に殴りかかろうとした。

だが、今までの話を聞いていたのか花音の大きな怒声が家中に響き渡る。
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『妻がゾンビになりまして……』を閲覧していただきありがとうございます。良かったら、高評価、コメントお待ちしています。ちなみに、私の中で、美鈴は吉高由里子さん、花音は今田美桜さん、亮は鈴木亮平さんをイメージしてました。これからも、作品をよろしくお願いします。
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