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2-2:妻が暴れまして……
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「ママ、大丈夫!?」
花音は美鈴に近寄り抱きかかえる。
俺は噛まれて血が出ている肩を抑えながら、美鈴に近づく。
「ぐっ、美鈴は大丈夫か?」
「うん、大丈夫ぐっすり眠ってるよ」
「とにかく、ベッドの上で寝かせましょう」
医師の指示のもと、美鈴はベッドの上で横になった。
「信じられません、まさか奥さんがご主人と娘さんのことを覚えているとは」
「そうですね、でも、なんで娘の花音の言葉には反応したんでしょう」
俺は噛まれた肩を看護師に治療してもらいながら医師に聞いた。
「おそらく、家族の絆……でしょうね。愛とでも言うべきでしょうか」
「ママ、私たちのこと覚えていてくれたんだ」
花音は美鈴を見ながら泣き始める。
俺は娘の花音の肩に手を置いた。
「あぁ、そうだよ。きっとそうに違いない」
「ご主人さん、ちょっと提案があるんですが」
俺が花音と話をしていると、医師が話しかけてきた。
「はい、何ですか?」
「奥さんはこのまま病院にいるより、ご自宅で療養された方がいいと思うのですが」
「いいんですか?」
「はい、ご主人がよければですが」
確かにここにいたら美鈴はまた誰かを襲ってしまうかもしれない。
次誰かを襲ったら、その時は怪我だけでは……
俺は、医師の言う通りに美鈴を自宅に連れて帰ることにした。
「先生、それじゃ、お願いしてもいいですか?」
「わかりました、それでは手続きの方を。それと」
医師は声を詰まらせながら話す。
「このことはくれぐれもご近所さんや身近な方には知らせないのがいいかと」
「え、どういうことですか?」
「伝えたとしても、周りに混乱を招くと思いますし、理解を得られるかわかりません」
そうだ、美鈴は生きているとはいえ、今の状況を他の人に理解してもらえるかどうかわからない。
ましてや、それをこぎつけて面白がる輩も出てくるだろう。
娘の花音にまで迷惑をかかるかもしれない。
俺は助言を守り、周りには他言しないよう医師と約束した。
花音は最初から話すつもりがなかったらしく、二つ返事で了承をしてくれた。
「よし、美鈴! 車で帰ろうか」
俺は美鈴の車に乗せるため、腕を支えようとしたのだが、
「がぁぁ!」 ガプッ!
「あーっ! 痛いって美鈴! なんだよ、俺のこと思い出したんじゃないのかよ!」
「ぷっ、パパのことは忘れたってさ」
美鈴に噛まれている俺を見て、花音は笑った。
「そんなこと言ってないで、助けてくれよ! 噛む力尋常じゃないんだから!」
ん? 待って。
「ねぇ、花音、今『パパ』って言ってくれた?」
「!!」
花音は急に顔を赤くした。
「べ、別に私のパパなんだから、言ったっていいでしょう! ダメなの!?」
「えっ、凄いキレるじゃん!」
いや、花音の凄い顔がマジなんですけど……
でも、嬉しいな。
その顔を見て俺は、やっと昔のように話ができるんだと思って、思わず口元が緩んでしまった。
が……
「いや、マジで痛いって」
美鈴の噛む力は徐々に強くなってきている。
噛まれているところはおそらく内出血を起こしているだろう。
「頭撫でたら大丈夫なんじゃない?」
花音に笑われながら助言され、痛みをこらえながら頭を撫でた。
「がぁー! あぁ、うぅ」
美鈴は頭を撫でると、噛むのをやめて、離してくれた。
「ねぇ、頭を撫でたら噛むのをやめるって、どういうゾンビだよ」
「まぁ、でもいいじゃん、ママが帰ってきてくれるならさ」
「まったく、ほら、美鈴、花音お家に帰ろ」
俺はそういって、2人を車に乗せて帰宅した。
さて、これからやることはいっぱいあるけど、
きっと、俺たち家族なら大丈夫。
2人のことは俺が絶対守っていく。
でも、まずは……
「うがぁぁぁ!」 ガプッ
「だぁー! 美鈴痛ぇってば! なんで定期的に俺のこと忘れんだよ!」
「ぷっ、ママに嫌われてたりして」
花音は腹を抱えて笑い、俺を助ける素振りはない。
「まずは、俺のことを覚えてもらわないとダメなのか?」
俺は、決意するとともに深いため息をついた。
花音は美鈴に近寄り抱きかかえる。
俺は噛まれて血が出ている肩を抑えながら、美鈴に近づく。
「ぐっ、美鈴は大丈夫か?」
「うん、大丈夫ぐっすり眠ってるよ」
「とにかく、ベッドの上で寝かせましょう」
医師の指示のもと、美鈴はベッドの上で横になった。
「信じられません、まさか奥さんがご主人と娘さんのことを覚えているとは」
「そうですね、でも、なんで娘の花音の言葉には反応したんでしょう」
俺は噛まれた肩を看護師に治療してもらいながら医師に聞いた。
「おそらく、家族の絆……でしょうね。愛とでも言うべきでしょうか」
「ママ、私たちのこと覚えていてくれたんだ」
花音は美鈴を見ながら泣き始める。
俺は娘の花音の肩に手を置いた。
「あぁ、そうだよ。きっとそうに違いない」
「ご主人さん、ちょっと提案があるんですが」
俺が花音と話をしていると、医師が話しかけてきた。
「はい、何ですか?」
「奥さんはこのまま病院にいるより、ご自宅で療養された方がいいと思うのですが」
「いいんですか?」
「はい、ご主人がよければですが」
確かにここにいたら美鈴はまた誰かを襲ってしまうかもしれない。
次誰かを襲ったら、その時は怪我だけでは……
俺は、医師の言う通りに美鈴を自宅に連れて帰ることにした。
「先生、それじゃ、お願いしてもいいですか?」
「わかりました、それでは手続きの方を。それと」
医師は声を詰まらせながら話す。
「このことはくれぐれもご近所さんや身近な方には知らせないのがいいかと」
「え、どういうことですか?」
「伝えたとしても、周りに混乱を招くと思いますし、理解を得られるかわかりません」
そうだ、美鈴は生きているとはいえ、今の状況を他の人に理解してもらえるかどうかわからない。
ましてや、それをこぎつけて面白がる輩も出てくるだろう。
娘の花音にまで迷惑をかかるかもしれない。
俺は助言を守り、周りには他言しないよう医師と約束した。
花音は最初から話すつもりがなかったらしく、二つ返事で了承をしてくれた。
「よし、美鈴! 車で帰ろうか」
俺は美鈴の車に乗せるため、腕を支えようとしたのだが、
「がぁぁ!」 ガプッ!
「あーっ! 痛いって美鈴! なんだよ、俺のこと思い出したんじゃないのかよ!」
「ぷっ、パパのことは忘れたってさ」
美鈴に噛まれている俺を見て、花音は笑った。
「そんなこと言ってないで、助けてくれよ! 噛む力尋常じゃないんだから!」
ん? 待って。
「ねぇ、花音、今『パパ』って言ってくれた?」
「!!」
花音は急に顔を赤くした。
「べ、別に私のパパなんだから、言ったっていいでしょう! ダメなの!?」
「えっ、凄いキレるじゃん!」
いや、花音の凄い顔がマジなんですけど……
でも、嬉しいな。
その顔を見て俺は、やっと昔のように話ができるんだと思って、思わず口元が緩んでしまった。
が……
「いや、マジで痛いって」
美鈴の噛む力は徐々に強くなってきている。
噛まれているところはおそらく内出血を起こしているだろう。
「頭撫でたら大丈夫なんじゃない?」
花音に笑われながら助言され、痛みをこらえながら頭を撫でた。
「がぁー! あぁ、うぅ」
美鈴は頭を撫でると、噛むのをやめて、離してくれた。
「ねぇ、頭を撫でたら噛むのをやめるって、どういうゾンビだよ」
「まぁ、でもいいじゃん、ママが帰ってきてくれるならさ」
「まったく、ほら、美鈴、花音お家に帰ろ」
俺はそういって、2人を車に乗せて帰宅した。
さて、これからやることはいっぱいあるけど、
きっと、俺たち家族なら大丈夫。
2人のことは俺が絶対守っていく。
でも、まずは……
「うがぁぁぁ!」 ガプッ
「だぁー! 美鈴痛ぇってば! なんで定期的に俺のこと忘れんだよ!」
「ぷっ、ママに嫌われてたりして」
花音は腹を抱えて笑い、俺を助ける素振りはない。
「まずは、俺のことを覚えてもらわないとダメなのか?」
俺は、決意するとともに深いため息をついた。
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『妻がゾンビになりまして……』を閲覧していただきありがとうございます。良かったら、高評価、コメントお待ちしています。ちなみに、私の中で、美鈴は吉高由里子さん、花音は今田美桜さん、亮は鈴木亮平さんをイメージしてました。これからも、作品をよろしくお願いします。
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