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ドワーフの国編
第94話 第四師団長”死霊のリアーラ”
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黒いシルエットは音を立てずソウタ達に近づく、黒いドレスをなびかせ妖艶な雰囲気を醸し出しながらも、ソウタ達はそれが手の触れる距離にくるまで気が付かなかった。最初に気づいたのは神さまだった、ソウタ達がセラヴィアに視線を向ける中、少しホッとした神さまは後ろを振り返ると、それはソウタのすぐそばまで来ていたのだ、気づくのがもう少し遅ければ、もしかしたら手遅れだったかもしれない。瞬間的に神さまは叫んだ。
「ソウタ! 避けろ!」
神さまの言葉に瞬間的に反応したソウタとオーティラ、セラヴィアを離し、距離をとるため、真横に避ける。ソウタ達は受け身を取り、顔を上げるとそこには見たことのない女が不気味に立っていた。
「あら、避けるのね、さすがジルバが見込んだ男……かしら?」
「誰だ!」
黒いドレス、長くて艶のある黒髪、胸元をざっくりと開け、こちらを誘っているかのような立ち振る舞い。声も色っぽく、血のように染まった唇。ソウタはすぐに理解した。
コイツは強い……。
気付いた時にはソウタの額には大量の汗が流れ出ていた。その女は静かに口を開く。
「やっぱり”生”はダメね、死人が一番だわ。こうして会うのは初めてかしら? 私は魔王軍第四師団長”死霊のリアーラ”よ」
ソウタの目の前の女はそう言った。死霊のリアーラ、その名の通り死霊を操ることができる魔王軍の師団長の中で唯一の女性だ。第四師団のモンスターはそのほとんどが生きておらず、ゾンビやアンデット、ゴーストといった不死の軍団だ。彼らに意志はなく、唯一リアーラの命令に忠実に動く傀儡と同様でリアーラはその莫大な魔力で彼らを自在に動かす。
「お前が、セラヴィアを……?」
オーティラの言葉は怒りが混じったような低くて鈍い声だった。不敵に笑うリアーラは嘲るように答えた。
「そうね、この子は病気だから『治してあげるから言うとおりに動いて』と言ったんだけど、使えないわね……これだから生きてる者は嫌いなのよ」
そういって、リアーラはセラヴィアの腰を足で踏みつけ、ぐりぐりと押し付けた。
「おい、セラヴィアちゃんから足をどけろよ!」
「別にいいじゃない、もうあと少しで死ぬ運命なんだから……それにこの子の心配している場合かしら」
リアーラは外を向くよう首を横に振った。ソウタ達は窓に視線を向けると、窓に近づかなくても分かるほど、外はまさに地獄絵図のような光景が広がっていた。建物は火に包まれ、いたるところで火の手が上がっている。リアーラと対峙していたから気づかなかったが、外からはドワーフたちの悲鳴がそこかしこから聞こえてくる。
「なんだ……外で何が起こってるんだ?」
「私の可愛い子たちがこの国を襲ってるの、斬っても殴っても、何をしても死なない不死身の子たちがね」
外には動く屍のゾンビがゴルドバを襲っていた。ゾンビだけでなく、剣を持ち兵士のように動き続けるスケルトン、騎士のように骨だけの馬に乗ってゴルドバを縦横無尽に駆け回るデュラハンは、圧倒的な数と不死の力でドワーフの軍を寄せ付けない。リアーラは不敵な笑みを浮かべながら、ソウタ達に語りかける。
「どうするの? 外に助けに行けばこの子はどうなるかしらね?」
外に応援に行けば、セラヴィアをまた利用されるかもしれないし何よりギフト鉱石を奪われてしまうことはソウタの武器を作ることができなってしまう事を意味している。かといってこのまま国の危機を野放しにすることはできない。しかしオーティラはまるでそんなことはお構いなしに立ち上がりリアーラと対峙することを決めていた。
「ソウタ、あなたは国を助けてあげてくれる?」
「俺が? オーティラはどうするんだ?」
オーティラは両手に魔力を集めながら、リアーラを睨みつける。オーティラの魔力によって、オーティラを取り巻く空間はまるで炎のように揺れ動く。そしてリアーラを強く睨みつけた。
「あの女は私が相手する!」
「あら、あなたが私を? 冗談もいい加減にしてほしいわ」
リアーラは余裕の表情を崩さず、オーティラを一蹴した。しかし、ソウタはその場から離れなかった。
「何してるの? 早く行って!」
「大丈夫だよ、外にはほらハウルがいるだろ?」
「ハウル……? もしかしてワーウルフの事かしら? 大丈夫なの? いかにワーウルフと言えど不死身な軍団には手も足も出ないと思うけど」
「あ~、その辺は心配ないかな?」
ソウタは外の心配をする様子はない、それどころか頭をポリポリと掻き始め、余裕な態度さえ見せ始める。
「あら、どうして?」
「だって、アイツ、俺より強いから」
「ソウタ! 避けろ!」
神さまの言葉に瞬間的に反応したソウタとオーティラ、セラヴィアを離し、距離をとるため、真横に避ける。ソウタ達は受け身を取り、顔を上げるとそこには見たことのない女が不気味に立っていた。
「あら、避けるのね、さすがジルバが見込んだ男……かしら?」
「誰だ!」
黒いドレス、長くて艶のある黒髪、胸元をざっくりと開け、こちらを誘っているかのような立ち振る舞い。声も色っぽく、血のように染まった唇。ソウタはすぐに理解した。
コイツは強い……。
気付いた時にはソウタの額には大量の汗が流れ出ていた。その女は静かに口を開く。
「やっぱり”生”はダメね、死人が一番だわ。こうして会うのは初めてかしら? 私は魔王軍第四師団長”死霊のリアーラ”よ」
ソウタの目の前の女はそう言った。死霊のリアーラ、その名の通り死霊を操ることができる魔王軍の師団長の中で唯一の女性だ。第四師団のモンスターはそのほとんどが生きておらず、ゾンビやアンデット、ゴーストといった不死の軍団だ。彼らに意志はなく、唯一リアーラの命令に忠実に動く傀儡と同様でリアーラはその莫大な魔力で彼らを自在に動かす。
「お前が、セラヴィアを……?」
オーティラの言葉は怒りが混じったような低くて鈍い声だった。不敵に笑うリアーラは嘲るように答えた。
「そうね、この子は病気だから『治してあげるから言うとおりに動いて』と言ったんだけど、使えないわね……これだから生きてる者は嫌いなのよ」
そういって、リアーラはセラヴィアの腰を足で踏みつけ、ぐりぐりと押し付けた。
「おい、セラヴィアちゃんから足をどけろよ!」
「別にいいじゃない、もうあと少しで死ぬ運命なんだから……それにこの子の心配している場合かしら」
リアーラは外を向くよう首を横に振った。ソウタ達は窓に視線を向けると、窓に近づかなくても分かるほど、外はまさに地獄絵図のような光景が広がっていた。建物は火に包まれ、いたるところで火の手が上がっている。リアーラと対峙していたから気づかなかったが、外からはドワーフたちの悲鳴がそこかしこから聞こえてくる。
「なんだ……外で何が起こってるんだ?」
「私の可愛い子たちがこの国を襲ってるの、斬っても殴っても、何をしても死なない不死身の子たちがね」
外には動く屍のゾンビがゴルドバを襲っていた。ゾンビだけでなく、剣を持ち兵士のように動き続けるスケルトン、騎士のように骨だけの馬に乗ってゴルドバを縦横無尽に駆け回るデュラハンは、圧倒的な数と不死の力でドワーフの軍を寄せ付けない。リアーラは不敵な笑みを浮かべながら、ソウタ達に語りかける。
「どうするの? 外に助けに行けばこの子はどうなるかしらね?」
外に応援に行けば、セラヴィアをまた利用されるかもしれないし何よりギフト鉱石を奪われてしまうことはソウタの武器を作ることができなってしまう事を意味している。かといってこのまま国の危機を野放しにすることはできない。しかしオーティラはまるでそんなことはお構いなしに立ち上がりリアーラと対峙することを決めていた。
「ソウタ、あなたは国を助けてあげてくれる?」
「俺が? オーティラはどうするんだ?」
オーティラは両手に魔力を集めながら、リアーラを睨みつける。オーティラの魔力によって、オーティラを取り巻く空間はまるで炎のように揺れ動く。そしてリアーラを強く睨みつけた。
「あの女は私が相手する!」
「あら、あなたが私を? 冗談もいい加減にしてほしいわ」
リアーラは余裕の表情を崩さず、オーティラを一蹴した。しかし、ソウタはその場から離れなかった。
「何してるの? 早く行って!」
「大丈夫だよ、外にはほらハウルがいるだろ?」
「ハウル……? もしかしてワーウルフの事かしら? 大丈夫なの? いかにワーウルフと言えど不死身な軍団には手も足も出ないと思うけど」
「あ~、その辺は心配ないかな?」
ソウタは外の心配をする様子はない、それどころか頭をポリポリと掻き始め、余裕な態度さえ見せ始める。
「あら、どうして?」
「だって、アイツ、俺より強いから」
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