90 / 101
ドワーフの国編
第89話 作戦の真相
しおりを挟む
~1時間前~
「僕がおとりですか?」
「そう、ワーウルフの姿で衛兵の前に現れて、扉から離れた隙に私とソウタで侵入するの、中は白衣を着ないといけないけど、場所は私が知ってるから大丈夫」
「なるほどな、でもハウルって元の姿に戻れるの?」
「戻れますけど、戻ったらまた満月の日までそのままになってしまいますよ」
「そこは安心して!」
そういってオーティラがおもむろに取り出したのは片手で持てる程の大きさの石。みたところ何の変哲もない石だがオーティラは自信に満ち溢れた表情で話し始めた。
「これは”月の石”と呼ばれるものよ、月と同じ性質を持つらしいの、だからこれがあればもとに戻れるの!」
「らしい!? 確定ではないんですか? そんな無謀な作戦……」
ハウルは嫌がっている、それもそのはず、もしオーティラの持つ月の石が何の効果もない石の場合、ハウルは元の姿のまま、満月がくるまで待たなくてはいけない、それに、ソウタと離れてしまうことが何より嫌だったのだ。
「大丈夫だよ、私は運がいいから」
「いや、すいませんオーティラさんが運良くても意味ないと思うんですけど」
「でも、それしか方法はなさそうだしな」
ソウタは作戦に理解を示し、ハウルに視線を送った。
「嫌です! それだけは嫌ですよ、どうして僕がそんな役を……」
「これしかないんだから、幸い衛兵は1人だけハウル、あなたにすべてがかかってるのよ!」
ハウルは眉をひそめ、ウルっとした瞳でソウタを見つめる。しかしソウタの反応は非情だった。ハウルの肩に手を置き、オーティラの作戦に賛同したのだ。
「……行こう! 頼んだぞハウル」
「えぇ……」
「おそらくワーウルフになってる間は、月の石を持ってられないと思うから、どこかで置いておけばいけるんじゃない?」
「そうだな、例えば……あのドラム缶の上とか?」
ソウタが指さしたのは狭い路地に置かれているドラム缶だ。ところどころ朽ち果てているドラム缶の上には何とか月の石を置けるようだ。
「いい? 衛兵が離れて私たちが扉から侵入したのを確認したらこの月の石を見るのよ?」
「あぁ、もうやるんですね……わかりましたよ! ったく」
ハウルは渋々了承して、全神経を集中させる。次第に体毛が濃くなっていき、人型からワーウルフに変貌を遂げる。
「よし、ゴー!」
オーティラは高らかに前方を指さした。
「クゥゥン」
「あ、ワーウルフになったら言葉喋れなくなるんだ……―――」
~現在~
ハウルは月の石を見ると、体が変化していき、やがて人型に戻ることができた。
「はぁ、戻れた……よかったぁ」
ハウルは安堵の表情を浮かべながら、月の石を手に持った。サイレンが鳴り響く中、魔法学研究施設の扉の前には大勢のドワーフ兵が押し寄せている。何かを話し終わったあと、数人のグループに分かれて、バラバラに周囲を捜索し始める。このままここにいたのではもしかしたら捕まってしまうかもしれない。ハウルはソウタ達に迷惑を掛けないため、その場から素早く離れた―――
―――ソウタ達は魔法学研究施設の中に入り、白衣が置いてある部屋に辿り着いていた。
「外が何やら騒がしいな……」
外ではサイレンの音が鳴り響き、アナウンスのようなものが流れていた。
「おそらくハウルを追っかけてるんでしょうね」
「ハウルは大丈夫か? 早い所ルドーって人と話をしないとな」
オーティラはガサガサと服を漁り、白衣を2着取り出した。純白の汚れてない白衣をソウタに投げ渡し、クリップで胸元に留める名札を付けた。
「これで良し、どっからどうみても研究員でしょ」
「いやぁ、どうだろ顔バレてるんだろ? 見られたら一瞬で終わりだと思うぞ?」
「だから~、こうするんだよ」
オーティラは両手に魔力を込めてある呪文を唱えた。ソウタとオーティラの身体が優しい白い光に包まれる、次第に顔の骨格が変わり、もはや別人のようになっていた。
「な、なに? なんだよこれ、オーティラの顔が変わってる!?」
「凄いな……こんな呪文、聞いたことないよ?」
神さまも、見たことのない呪文のようだ。オーティラは別人になった顔で余裕の表情を浮かべる。
「へへ~、凄いでしょ? ギフト鉱石は3階の中央研究室だよ、急ごう!」
オーティラは扉から顔を出し、キョロキョロと辺りを見渡して、誰もいないことを確認すると駆け足で部屋を出ていく。
「オーティラって一体何者?」
「さぁ、少なくともまだ知らないことがいっぱいあるね、オーティラを失っちゃうよ私達も急ごう!」
「そうだな……」
ソウタもオーティラの後を追って、部屋を出た。
「僕がおとりですか?」
「そう、ワーウルフの姿で衛兵の前に現れて、扉から離れた隙に私とソウタで侵入するの、中は白衣を着ないといけないけど、場所は私が知ってるから大丈夫」
「なるほどな、でもハウルって元の姿に戻れるの?」
「戻れますけど、戻ったらまた満月の日までそのままになってしまいますよ」
「そこは安心して!」
そういってオーティラがおもむろに取り出したのは片手で持てる程の大きさの石。みたところ何の変哲もない石だがオーティラは自信に満ち溢れた表情で話し始めた。
「これは”月の石”と呼ばれるものよ、月と同じ性質を持つらしいの、だからこれがあればもとに戻れるの!」
「らしい!? 確定ではないんですか? そんな無謀な作戦……」
ハウルは嫌がっている、それもそのはず、もしオーティラの持つ月の石が何の効果もない石の場合、ハウルは元の姿のまま、満月がくるまで待たなくてはいけない、それに、ソウタと離れてしまうことが何より嫌だったのだ。
「大丈夫だよ、私は運がいいから」
「いや、すいませんオーティラさんが運良くても意味ないと思うんですけど」
「でも、それしか方法はなさそうだしな」
ソウタは作戦に理解を示し、ハウルに視線を送った。
「嫌です! それだけは嫌ですよ、どうして僕がそんな役を……」
「これしかないんだから、幸い衛兵は1人だけハウル、あなたにすべてがかかってるのよ!」
ハウルは眉をひそめ、ウルっとした瞳でソウタを見つめる。しかしソウタの反応は非情だった。ハウルの肩に手を置き、オーティラの作戦に賛同したのだ。
「……行こう! 頼んだぞハウル」
「えぇ……」
「おそらくワーウルフになってる間は、月の石を持ってられないと思うから、どこかで置いておけばいけるんじゃない?」
「そうだな、例えば……あのドラム缶の上とか?」
ソウタが指さしたのは狭い路地に置かれているドラム缶だ。ところどころ朽ち果てているドラム缶の上には何とか月の石を置けるようだ。
「いい? 衛兵が離れて私たちが扉から侵入したのを確認したらこの月の石を見るのよ?」
「あぁ、もうやるんですね……わかりましたよ! ったく」
ハウルは渋々了承して、全神経を集中させる。次第に体毛が濃くなっていき、人型からワーウルフに変貌を遂げる。
「よし、ゴー!」
オーティラは高らかに前方を指さした。
「クゥゥン」
「あ、ワーウルフになったら言葉喋れなくなるんだ……―――」
~現在~
ハウルは月の石を見ると、体が変化していき、やがて人型に戻ることができた。
「はぁ、戻れた……よかったぁ」
ハウルは安堵の表情を浮かべながら、月の石を手に持った。サイレンが鳴り響く中、魔法学研究施設の扉の前には大勢のドワーフ兵が押し寄せている。何かを話し終わったあと、数人のグループに分かれて、バラバラに周囲を捜索し始める。このままここにいたのではもしかしたら捕まってしまうかもしれない。ハウルはソウタ達に迷惑を掛けないため、その場から素早く離れた―――
―――ソウタ達は魔法学研究施設の中に入り、白衣が置いてある部屋に辿り着いていた。
「外が何やら騒がしいな……」
外ではサイレンの音が鳴り響き、アナウンスのようなものが流れていた。
「おそらくハウルを追っかけてるんでしょうね」
「ハウルは大丈夫か? 早い所ルドーって人と話をしないとな」
オーティラはガサガサと服を漁り、白衣を2着取り出した。純白の汚れてない白衣をソウタに投げ渡し、クリップで胸元に留める名札を付けた。
「これで良し、どっからどうみても研究員でしょ」
「いやぁ、どうだろ顔バレてるんだろ? 見られたら一瞬で終わりだと思うぞ?」
「だから~、こうするんだよ」
オーティラは両手に魔力を込めてある呪文を唱えた。ソウタとオーティラの身体が優しい白い光に包まれる、次第に顔の骨格が変わり、もはや別人のようになっていた。
「な、なに? なんだよこれ、オーティラの顔が変わってる!?」
「凄いな……こんな呪文、聞いたことないよ?」
神さまも、見たことのない呪文のようだ。オーティラは別人になった顔で余裕の表情を浮かべる。
「へへ~、凄いでしょ? ギフト鉱石は3階の中央研究室だよ、急ごう!」
オーティラは扉から顔を出し、キョロキョロと辺りを見渡して、誰もいないことを確認すると駆け足で部屋を出ていく。
「オーティラって一体何者?」
「さぁ、少なくともまだ知らないことがいっぱいあるね、オーティラを失っちゃうよ私達も急ごう!」
「そうだな……」
ソウタもオーティラの後を追って、部屋を出た。
12
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。
亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。
さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。
南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。
ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる