転生したら、ステータスの上限がなくなったので脳筋プレイしてみた

Mr.Six

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ドワーフの国編

第89話 作戦の真相

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 ~1時間前~
「僕がおとりですか?」

「そう、ワーウルフの姿で衛兵の前に現れて、扉から離れた隙に私とソウタで侵入するの、中は白衣を着ないといけないけど、場所は私が知ってるから大丈夫」

「なるほどな、でもハウルって元の姿に戻れるの?」

「戻れますけど、戻ったらまた満月の日までそのままになってしまいますよ」

「そこは安心して!」

 そういってオーティラがおもむろに取り出したのは片手で持てる程の大きさの石。みたところ何の変哲もない石だがオーティラは自信に満ち溢れた表情で話し始めた。

「これは”月の石”と呼ばれるものよ、月と同じ性質を持つらしいの、だからこれがあればもとに戻れるの!」

「らしい!? 確定ではないんですか? そんな無謀な作戦……」

 ハウルは嫌がっている、それもそのはず、もしオーティラの持つ月の石が何の効果もない石の場合、ハウルは元の姿のまま、満月がくるまで待たなくてはいけない、それに、ソウタと離れてしまうことが何より嫌だったのだ。

「大丈夫だよ、私は運がいいから」

「いや、すいませんオーティラさんが運良くても意味ないと思うんですけど」

「でも、それしか方法はなさそうだしな」

 ソウタは作戦に理解を示し、ハウルに視線を送った。

「嫌です! それだけは嫌ですよ、どうして僕がそんな役を……」

「これしかないんだから、幸い衛兵は1人だけハウル、あなたにすべてがかかってるのよ!」

 ハウルは眉をひそめ、ウルっとした瞳でソウタを見つめる。しかしソウタの反応は非情だった。ハウルの肩に手を置き、オーティラの作戦に賛同したのだ。

「……行こう! 頼んだぞハウル」

「えぇ……」

「おそらくワーウルフになってる間は、月の石を持ってられないと思うから、どこかで置いておけばいけるんじゃない?」

「そうだな、例えば……あのドラム缶の上とか?」

 ソウタが指さしたのは狭い路地に置かれているドラム缶だ。ところどころ朽ち果てているドラム缶の上には何とか月の石を置けるようだ。

「いい? 衛兵が離れて私たちが扉から侵入したのを確認したらこの月の石を見るのよ?」

「あぁ、もうやるんですね……わかりましたよ! ったく」

 ハウルは渋々了承して、全神経を集中させる。次第に体毛が濃くなっていき、人型からワーウルフに変貌を遂げる。

「よし、ゴー!」

 オーティラは高らかに前方を指さした。

「クゥゥン」

「あ、ワーウルフになったら言葉喋れなくなるんだ……―――」

 ~現在~

 ハウルは月の石を見ると、体が変化していき、やがて人型に戻ることができた。

「はぁ、戻れた……よかったぁ」

 ハウルは安堵の表情を浮かべながら、月の石を手に持った。サイレンが鳴り響く中、魔法学研究施設の扉の前には大勢のドワーフ兵が押し寄せている。何かを話し終わったあと、数人のグループに分かれて、バラバラに周囲を捜索し始める。このままここにいたのではもしかしたら捕まってしまうかもしれない。ハウルはソウタ達に迷惑を掛けないため、その場から素早く離れた―――

 ―――ソウタ達は魔法学研究施設の中に入り、白衣が置いてある部屋に辿り着いていた。

「外が何やら騒がしいな……」

 外ではサイレンの音が鳴り響き、アナウンスのようなものが流れていた。

「おそらくハウルを追っかけてるんでしょうね」

「ハウルは大丈夫か? 早い所ルドーって人と話をしないとな」

 オーティラはガサガサと服を漁り、白衣を2着取り出した。純白の汚れてない白衣をソウタに投げ渡し、クリップで胸元に留める名札を付けた。

「これで良し、どっからどうみても研究員でしょ」

「いやぁ、どうだろ顔バレてるんだろ? 見られたら一瞬で終わりだと思うぞ?」

「だから~、こうするんだよ」

 オーティラは両手に魔力を込めてある呪文を唱えた。ソウタとオーティラの身体が優しい白い光に包まれる、次第に顔の骨格が変わり、もはや別人のようになっていた。

「な、なに? なんだよこれ、オーティラの顔が変わってる!?」

「凄いな……こんな呪文、聞いたことないよ?」

 神さまも、見たことのない呪文のようだ。オーティラは別人になった顔で余裕の表情を浮かべる。

「へへ~、凄いでしょ? ギフト鉱石は3階の中央研究室だよ、急ごう!」

 オーティラは扉から顔を出し、キョロキョロと辺りを見渡して、誰もいないことを確認すると駆け足で部屋を出ていく。

「オーティラって一体何者?」

「さぁ、少なくともまだ知らないことがいっぱいあるね、オーティラを失っちゃうよ私達も急ごう!」

「そうだな……」

 ソウタもオーティラの後を追って、部屋を出た。
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