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ドワーフの国編
第87話 オーティラの過去
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オーティラの家で会話をしていくうちにソウタ達はオーティラの事情についてわかったことがいくつかある。1つは妹セラヴィアの病気だ。【金属腐敗症】と呼ばれる、腐敗した金属の微粒子を長期間吸い込んだことで、内臓が錆びてやがて腐敗していくという恐ろしい病気で、治療をするには莫大な医療費と国外での治療が必要という事らしい。ドワーフの国は軍事的や経済的な技術力は群を抜いているが、医療は発展しておらず、ゴルドバでは治療できる医師はいない。
2つ目は、オーティラは素性を隠すため、テトラという名で鍛冶職人をしており、その名は世界を轟かせていた。魔法学研究施設にも研究目的で出入りをしていたが、数年前にドワーフの国で素性がバレたことですべての地位を剥奪され、魔法学研究施設の出入りも禁止、土地も没収され、この辺鄙なゴミ溜めのような場所に身を隠すようになったという、セラヴィアの病気が進行したのはその頃らしい。
3つ目は彼女たちの両親は幼いころに亡くなっているという事だ。ドワーフの父と人間の母の間に生まれたことで、素性を隠すように暮らしていたが、事故により2人を失った、それ以降妹と2人で生きてきたのだ。オーティラは壮絶な過去を持っているにも関わらず、明るく暮らしているのをみてソウタは尊敬ともとれる気持ちが込み上げてきた。
「そうか、オーティラは強いんだな」
「強いんじゃないよ、私は運がいいんだよ、妹はまだこうして生きてくれてる、絶対助けてやるんだ」
ソウタは少し考えて、オーティラにある提案を持ちかけた。
「なぁ、オーティラ、妹の治療費はどのくらいするんだ?」
「金貨で1000枚ぐらいは必要なの、今の私じゃ到底かき集められる額じゃないし……」
「その治療費、俺が出すよ、その代わりこのギフト鉱石で武器を作って欲しんだ」
ソウタの提案に少し考えたが、オーティラはすぐに答えを出した。
「それは無理ね」
「どうして?」
「ギフト鉱石を鍛えれるのはギフト鉱石だけ、もう一つギフト鉱石が無いと武器は作れないよ」
オーティラの話しによれば、ギフト鉱石は特殊な鉱石の為、強度、柔軟性が一致するギフト鉱石でなければ鍛え上げることはできないのだ。ソウタが少し落胆していると、オーティラが代替案を提案してきた。
「そうだ! 魔法学研究施設に研究中のギフト鉱石が1つあるはずよ、それを一緒に奪わない? ギフト鉱石が2つあれば武器はお望みの物を作ったげる!」
「盗むってことかよ! 絶対嫌だよ!」
ソウタは血相を変えてオーティラの提案を拒否した。
「どうしてよ、せっかくのチャンスなのに?」
「いいか!? 俺は一応国の王だぞ? なのにその王が盗みをしたなんてわかったらとんでもないことになるだろうが!」
ソウタのいう事も一理ある、しかし、武器が作れないのではゴルドバに来た目的を失ってしまうと危惧したハウルはオーティラに質問をした。
「ところでオーティラさん、魔法学研究施設はどの国の領地なのですか? ドワーフの国の上にあるという事はやはりドワーフの?」
「いや、ドワーフの国は地下だけなんだけど、魔法学研究施設だけはドワーフ、人間、ヴァンパイアの3か国が共同で作ってるから、どの領地というのはないよ、まぁ、中立ってとこね」
オーティラからの言葉を聞いて、ハウルはソウタに満面の笑みを振りまいた。
「聞きましたか? 中立であるなら、どの国のものでもありません、ご主人様行きましょう!」
「ハウルさ、その狂ったような俺への忠誠心は時に方向性を間違えてるぞ?」
「だけど、このままだと先に進まない、ソウタ、ここは潔く向かった方がいいんじゃないか? そもそも盗むという発想が良くない、もらい受けるというのはどうかな?」
「まぁ、確かにそれなら問題はなさそうだけどさ……」
「よし、というわけで魔法学研究施設に行ってみよう! セラヴィア、ちょっとお留守番お願いね?」
「うん、気を付けてね?」
こうしてソウタは渋々、魔法学研究施設に行くことになった。ソウタ達を見送った後、セラヴィアは1人、深いため息をついていた。自分も一緒についていきたかった、久しぶりに姉のオーティラに会えたと思ったら、またすぐに独りになってしまった。その孤独感がセラヴィアに大きな心の傷を作っていたのだ。
「いいなぁ、私もみんなのように動けたらいいのに……」
「その願い……叶えてあげるわよ?」
セラヴィアの背後から妖艶な声が響いた。
2つ目は、オーティラは素性を隠すため、テトラという名で鍛冶職人をしており、その名は世界を轟かせていた。魔法学研究施設にも研究目的で出入りをしていたが、数年前にドワーフの国で素性がバレたことですべての地位を剥奪され、魔法学研究施設の出入りも禁止、土地も没収され、この辺鄙なゴミ溜めのような場所に身を隠すようになったという、セラヴィアの病気が進行したのはその頃らしい。
3つ目は彼女たちの両親は幼いころに亡くなっているという事だ。ドワーフの父と人間の母の間に生まれたことで、素性を隠すように暮らしていたが、事故により2人を失った、それ以降妹と2人で生きてきたのだ。オーティラは壮絶な過去を持っているにも関わらず、明るく暮らしているのをみてソウタは尊敬ともとれる気持ちが込み上げてきた。
「そうか、オーティラは強いんだな」
「強いんじゃないよ、私は運がいいんだよ、妹はまだこうして生きてくれてる、絶対助けてやるんだ」
ソウタは少し考えて、オーティラにある提案を持ちかけた。
「なぁ、オーティラ、妹の治療費はどのくらいするんだ?」
「金貨で1000枚ぐらいは必要なの、今の私じゃ到底かき集められる額じゃないし……」
「その治療費、俺が出すよ、その代わりこのギフト鉱石で武器を作って欲しんだ」
ソウタの提案に少し考えたが、オーティラはすぐに答えを出した。
「それは無理ね」
「どうして?」
「ギフト鉱石を鍛えれるのはギフト鉱石だけ、もう一つギフト鉱石が無いと武器は作れないよ」
オーティラの話しによれば、ギフト鉱石は特殊な鉱石の為、強度、柔軟性が一致するギフト鉱石でなければ鍛え上げることはできないのだ。ソウタが少し落胆していると、オーティラが代替案を提案してきた。
「そうだ! 魔法学研究施設に研究中のギフト鉱石が1つあるはずよ、それを一緒に奪わない? ギフト鉱石が2つあれば武器はお望みの物を作ったげる!」
「盗むってことかよ! 絶対嫌だよ!」
ソウタは血相を変えてオーティラの提案を拒否した。
「どうしてよ、せっかくのチャンスなのに?」
「いいか!? 俺は一応国の王だぞ? なのにその王が盗みをしたなんてわかったらとんでもないことになるだろうが!」
ソウタのいう事も一理ある、しかし、武器が作れないのではゴルドバに来た目的を失ってしまうと危惧したハウルはオーティラに質問をした。
「ところでオーティラさん、魔法学研究施設はどの国の領地なのですか? ドワーフの国の上にあるという事はやはりドワーフの?」
「いや、ドワーフの国は地下だけなんだけど、魔法学研究施設だけはドワーフ、人間、ヴァンパイアの3か国が共同で作ってるから、どの領地というのはないよ、まぁ、中立ってとこね」
オーティラからの言葉を聞いて、ハウルはソウタに満面の笑みを振りまいた。
「聞きましたか? 中立であるなら、どの国のものでもありません、ご主人様行きましょう!」
「ハウルさ、その狂ったような俺への忠誠心は時に方向性を間違えてるぞ?」
「だけど、このままだと先に進まない、ソウタ、ここは潔く向かった方がいいんじゃないか? そもそも盗むという発想が良くない、もらい受けるというのはどうかな?」
「まぁ、確かにそれなら問題はなさそうだけどさ……」
「よし、というわけで魔法学研究施設に行ってみよう! セラヴィア、ちょっとお留守番お願いね?」
「うん、気を付けてね?」
こうしてソウタは渋々、魔法学研究施設に行くことになった。ソウタ達を見送った後、セラヴィアは1人、深いため息をついていた。自分も一緒についていきたかった、久しぶりに姉のオーティラに会えたと思ったら、またすぐに独りになってしまった。その孤独感がセラヴィアに大きな心の傷を作っていたのだ。
「いいなぁ、私もみんなのように動けたらいいのに……」
「その願い……叶えてあげるわよ?」
セラヴィアの背後から妖艶な声が響いた。
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