転生したら、ステータスの上限がなくなったので脳筋プレイしてみた

ドワーフの国編

第86話 ドワーフの国、到着！

　ソウタ達の疲れはすぐに吹き飛んだ。目に映ったドワーフの国ゴルドバは、まさに近未来の都市の姿をしていた。空には幻想的な空飛ぶ車が飛び交い、はるか上空には巨大なクリスタルが光を発し、ゴルドバを昼間のように照らし、様々な形の街灯が周囲を明るく包み込んでいた。空洞の筒が空中に設置され、中には透き通った生活水が流れている。

　建物の煙突からは煙が立ち昇り、彼らの商売をする建物は、土で塗り固められ、ドワーフの技術で見事に磨き上げられ、それらは蟻塚のような外観を持ち、地下世界の繁栄を象徴していた。

　都市の中央には、地上へと続く巨大な建物がそびえ立ち、魔法学研究施設へ続いている。その建物の周囲にはドワーフの居住区が立ち並び、さらに奥深くには地中の建物とは思えないほどの豪華な欧風のお城が建設されており、ゴルドバの中心に位置していた。

　ソウタはゴルドバの都市を目の当たりにし、あまりの壮観な光景に圧倒されていた。

「うわぁ！　すっげぇ、車みたいなのが空飛んでるよ、なにあれ！？」

「あぁ、あれ？　『スカイヤー』っていって、1日ぐらいならずっと飛べれるやつだよ。魔力で空を浮遊、推進するよう設計されてるの」

「へぇ、乗ってみたいな！　どこで乗れるの？」

「一応レンタルできるけど、後で嫌って程乗れるから今はいんじゃない？」

「オーティラさん、この後はどうするんですか？」

　ハウルはオーティラに尋ねると、オーティラは迷いなく歩き始めた。

「まずは私の家に行こうか、確か武器が欲しんだっけ？」

「そうだけど、もしかして作ってくれるの！？」

「そんなわけないでしょ、ドワーフの国まで案内するって言ったでしょ？　ギフト鉱石をもう少し見させてよ」

　ソウタはオーティラが作ってくれると期待をしていたのか、酷く落ち込んだ様子を見せ、とぼとぼとオーティラの後ろについていった。しばらく歩くと、狭い路地を抜け、臭気臭い異様な雰囲気の場所に辿り着く。見たところ、金属のようなものが形を成してガラクタのようにそこかしこに無造作に廃棄されている。金属からは錆びのようなものや、金属の溶けたような跡などがあり、それらがこの異様な匂いを発しているようだった。

「な、なにここ？」

「うぅ、僕はちょっと苦手ですねここ」

　ハウルの鼻は敏感のため、この臭気臭いのは苦手だ。そのせいかハウルは鼻を何度も手で塞いでは口で息をするといった仕草を繰り返す。

「ここはスクラップ置き場だよ、ドワーフたちが使えなくなった鉱石や、加工に失敗した金属を捨ててるんだよ」

　ソウタ達にとっては刺激的な場所だが、その先にはガラクタで作られたであろう、ボロボロの小屋が一軒ポツンと建てられていた。

「もしかして、ここがオーティラの？」

「そうだよ、ここが私の家」

　ソウタは目の前の光景に驚愕した。それはオーティラの住む小屋の壁に貼り付けられた無数の張り紙。張り紙には『呪われた子』『出ていけ！』『疫病神』といった心無い言葉が書かれている。

「なんだよ、これ……」

「ん？　別に気にしてないよ？　ほら、入って！」

　オーティラは特に気にする様子なく、小屋の扉を開ける。ソウタ達はなるべく気にしないようにオーティラに言われるまま小屋の中に入っていく。

「コホッ、コホッ、あ、おねえちゃんおかえり」

　小屋に入ると小さなベッドが目に入る。そのベッドの上には6歳ぐらいの幼女が寝ていた。病弱で布団に下半身を入れ、咳をしながら、オーティラに話しかけ、ソウタ達に気が付くと、弱弱しく頭を下げた。

「あ、ども、え～っと」

「ほら、セラヴィアゆっくりしてないとダメでしょう。ご飯食べた？」

「え～、でもおねえちゃんが帰ってこないか心配で」

　オーティラはセラヴィアの肩を優しく触れてベッドに寝るように指示を出す。

「オーティラ、この子は？」

「私の唯一の家族、妹のセラヴィアよ」

「初めまして、セラヴィアです。おねえちゃんがお世話になってます」

「何言ってんの？　世話してんのは私だから」

「んなわけあるか、世話したの俺じゃん！」

　オーティラは笑顔でソウタの顔を指さした。

「セラヴィア！　この人達がセラヴィアを助けてくれるよ、なんたって金づる……あ、いや優しい人たちだから！」

　ソウタはオーティラの言葉を聞き逃さなかった。

「おぉい、今金づるって言ったろ！　聞こえてたぞ」

「え～っと、金づるさんよろしくお願いします」

「ははっ、金づるで覚えられてるね」

「オーティラが変なこと教えるからだろ！」

　ソウタ達はしばらくボロボロの小屋で目的を忘れ談笑を続けた。