転生したら、ステータスの上限がなくなったので脳筋プレイしてみた

Mr.Six

文字の大きさ
上 下
74 / 101
リシャーダの海賊編

第73話 人間の底力

しおりを挟む
「ちっ、なんだこいつら……」

 タガードは苛立っていた。ソウタとハウルは攻撃を続けているが、今までとはどこか違う。攻撃に重みはなく、力が伝わってこない。何か作戦があるとは感づいているが、それがなんなのかわからない。変わらず単調な攻撃、次第にタガードは嫌気がさしてくる。

「ハウル、このまま攻撃を続けるぞ!」

「勿論です、作戦続行でいきましょう!」

「なにが……作戦だ……ただ俺に攻撃を続けてるだけじゃねぇか! もう我慢ならねぇ、ぶっ飛ばしてやる!」

 タガードは怒りに震えながらも、ソウタ達の攻撃を受け流し反撃魔法を放つ機会を伺っていた。しかし、その怒りはとうとう限界に達する。タガードは反撃魔法をソウタ達に放つため、ソウタ達の体勢を崩しにかかり、ついに攻撃に転じたのだ。

「おらぁ!」

 ソウタの攻撃を簡単に受け流し、ソウタは体勢を崩した。

「うおぉっ!?」

(殺った!)

 ソウタの顔の前にはタガードの両の掌。魔力を込められた掌は瞬時に輝きを放ち、巨大な閃光と共に、地平線のかなたまで魔力を開放した。それは今までのどの反撃魔法よりも強かった。しかし、ソウタはこの瞬間を待っていた。体勢を崩していたソウタはすぐに立て直し、タガードの反撃魔法を回避した。ソウタはわざと崩したのだ。

「今だ、ハウル!」

「了解です、ご主人様!」

「なにっ!?」

 ハウルは消えるほどの素早い動きでタガードの背後をとった。反射的にタガードは背後を振り向き、ハウルに警戒をするが、すでに両腕はソウタに向けられている。ハウルに意識が向いている、このコンマ数秒の時間をソウタは見逃さなかった。

「くらえぇ!」

 ソウタは懐に潜り込み、右拳に全神経を集中させる。腕の筋肉が肥大し、丸太ほどの大きさに変化していき、血管が浮き出るほど力を込めた。人体で唯一衝撃を受け止める場所、タガードの腹に渾身の一撃を決めることだけをソウタは考えていた。

「くそぉ! てめぇら……」

 タガードもそう簡単には攻撃を受けるつもりはない。必死に硬直する腕を引きちぎるような程、強引に腕を動かし、ソウタの攻撃を腕でガードした。だが、ソウタの攻撃は腕の振りで火をおこし、水を集め、風を巻き起こし、岩を持ち上げるほど強力。ただ純粋に振りぬくことだけを考えたソウタの攻撃はタガードのガードの上からタガードの腹をぶち抜いた。

「ぐほぉうっ!」

 メキメキっと腰の骨が軋む音が体に響き渡る。

 まずい! マズイマズイマズイ!

 なんだこの威力!?

 これが人間の持つ力か!?

 ありえねぇ、なんだこのバカげた力は!

 こんなのもう一発喰らったら……

 タガードは瞬間的に危険を感じ取った。獣の本能だ。身体も宙に浮き、身動きも息もできず、タガードは必死に思考を張り巡らす。ここを脱しないと確実にやられる。どうにかして反撃魔法をもう一度この男に……。しかし、タガードの思いはハウルによって打ち砕かれる。ハウルはタガードより高く舞い上がり、両腕を掴むと、もう一度ソウタのもとまでタガードを投げつけた。

「今です、ご主人様!」

「いくぞっ!!」

 投げられたタガードは両手に魔力を込めようとする。しかし、わずかしか魔力が集まらない、先程反撃魔法を放っているからか、両手にはまだダメージが蓄積されていない。ソウタは甲板で右拳にもう一度力を集中させている。

「くそぉ、てめえら……!」

「どうした? 人間にこんな力があると思わなかったんだろ? これがお前が弄んできた人間の力だ! 人間を……なめんじゃねぇぞ!」

 ソウタは心からの叫びと共に、タガードの顎をアッパーで打ち抜いた。力任せの全力のアッパーはタガードの顎を変形させ、骨を粉々に砕いた。あまりの衝撃により、タガードは一瞬で意識を失い。空高く体を宙に浮かせた。甲板に勢いよく叩きつけられタガードはピクリとも動かなくなり、ソウタは力強く右腕を空へ突き上げた。

「はぁ、はぁ、さすがにもう動かないよな……」

「はい、見事な一撃でしたご主人様」

「やば、もう体疲れた……」

「僕が支えます、寄りかかってください」

「いや、ハウル小さいじゃん……」

「……」

 ハウルは静かにソウタを睨み、頬を膨らませた。すると、海賊船はビキビキと音を立てながら崩れ始める。

「な、なんだ!?」

「おそらく、もう少ししたら沈没しますね。暴れすぎですよ、ご主人様」

 海水がすでに足元まで来ている。このままだと海賊船と共に海の藻屑になってしまう。

「とりあえず……離れるか」

「……ですね」

 ソウタとハウルは、タガードたちを後にまずは避難をするため海賊船から脱出する。

 Mr.Sixの独り言
 ここまで読んでくれてありがとうございます!
 書いてて思ったのは、タガードとレパルド外見逆がよかったなと思ったね。
 タガードは虎型の獣人でシュッとしてスリムな体型なのに豪速のハンター。
 なのに、レパルドはゴリマッチョで神速のハンターって笑
 絶対逆だったろ!
 次から気を付けよ……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

処理中です...