転生したら、ステータスの上限がなくなったので脳筋プレイしてみた

Mr.Six

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リシャーダの海賊編

第69話 満月の男

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 海賊船から轟音が鳴り響く。シーナたちは船の上にいるためか、海賊船で何が起こっているか確認できない。勿論空を飛ぶことは可能だが、仮に見に行ったことでソウタの邪魔になる可能性が高いと考えると、見に行くのもためらってしまう。

「シーナちゃん、行かなくて大丈夫か? こっちはもう少しで到着するんだ、見に行って加勢したほうが……」

「ダメだよ」

 ブルトンの助言を遮るようにシーナが否定する。縁に置いている手は、力強くギュッと縁を掴んでいる。

「私が行っても、足手まといになるだけだよ」

 シーナの心配がハウルに伝わったのか、唸り声を上げながら、突然動き出し、海賊船の上に向かっていった。

「あ、ねぇ、ハウル! どこ行くの、ハウル!」―――

 ―――ソウタはスタスタとタガードに向かって歩いている。

「それ以上、近づくな」

 レパルドがソウタを制止するが、ソウタは歩みを止めない。

「貴様の為に言っているのだ、それ以上近づくとおもちゃではなくなってしまうぞ?」

「なに?」

 ソウタは立ち止まり、振り返る。しばらくするとタガードの声がし始める。

「ははっ、結構いいパンチ持ってんじゃん。今のは効いたわ~」

 そういいながらタガードは頬を手でさすり、ソウタに向かって歩み寄った。

「俺の攻撃喰らってピンピンしてるって、コイツ……」

「今までびっくりされて、戦意喪失してきてるからな、真向に対峙する相手は初めてだな」

「あっ! アンタ神さまだろ!? ジルバさんが変な奴と一緒にいるって言ってたし」

 タガードは神さまをはしゃぎながら指をさす。タガードにはソウタの攻撃のダメージがそれほど残っていないように見える。

「中々の実力だな、さて……底を図ろうか」

 まるでソウタの高速移動のように、レパルドは姿を消した。

「嘘だろ! コイツも俺と同じスピードを持ってるのかよ!」

「いや、お前より上だ、我にはついてこれまい」

 レパルドはすでにソウタの後ろに張り付いており、ソウタに一撃を加えた。

「ぐあ! このやろ!」

 ソウタは振り向きざまに裏拳でレパルドに攻撃を加えようとするが、すでにレパルドの姿はなく、周りを見渡しても高速で動いているレパルドの残像がところどころで見えるだけだった。

「おい~、レパルドに気をとられてんじゃねぇよ~」

 タガードは上空に飛んでおり、ソウタめがけて右腕を振り下ろした。反応が遅れてしまい、ソウタはガードができず、脳天に攻撃を喰らってしまう。

「ぐっ! くそぉ!」

 ソウタは間髪入れずに反撃しようとするが、レパルドに背後から攻撃を受け、攻撃のタイミングをずらされる。

「ち、なんだよコイツら!」

 2人のコンビネーションはソウタにとって凄く厄介だった。高速で動くレパルドに気をとられていると、力技でタガードが攻撃を加える。かといってタガードに反撃をしようとすればレパルドが邪魔にはいり、ソウタに攻撃をさせようとしない。ソウタはこのままだとまずいと思い、一旦2人と距離をとる。

「くそっ、2人相手はきついな……こんなに厄介だったなんて」

「もう一人、ソウタと同じぐらいの強さを持つ者がいればな、ガルアとか」

「いや、ガルアじゃ多分勝てないね、もっと強い奴が必要だよ」

「なに、相談してんの、どうせ勝てないって俺たちには」

 神さまと話をしているとタガードが会話に入ってきた。足をトントンとして余裕な態度を見せるタガードを見て、ソウタは少し焦ってしまう。

「相手が1人なら問題なさそうだけどな、絶妙にもう1人がうざいな」

「ふん、我らは2人で1つ! そろそろ遊びを終わりにしようか」

「おっけ~、いくぜっ!」

 高速で動くレパルドをソウタが警戒するが、レパルドの動きに気をとられ、タガードの攻撃にまで意識を向けることができず、タガードの攻撃はソウタの心臓を狙っていた。

「まずい!」

 しかし、攻撃を受けようとすると、ハウルが戦闘に乱入し攻撃を受け止めた。

「ハウル! お前……」

「ガルルゥ」

「ふん、ワーウルフか、所詮狼のモンスター、我らの敵ではないわ!」

 レパルドはソウタからハウルに対象をかえ、ハウルと対峙することになり、ソウタはハウルを心配するが、タガードがハウルのもとに行かせないよう前に立ちはだかった。

「レパルド、コイツは頼むぜ、さぁソウタ! 俺とやろうぜ!」

「ハウル! お前じゃ勝てない、今すぐ引け!」

「グルルゥ!」

 レパルドは高速移動を駆使してハウルに何度も攻撃を加える。ハウルも必死についていくが、レパルドの圧倒的な力の差に長くはもたず、ついには攻撃によって吹き飛ばされてしまう。

「ハウル! くそぉ、そこをどけよ!」

「やだね~、勝手に乱入してきたんだ、死んだってたかがモンスターじゃねぇか」

「これで、終わりだ、死ね!」

 レパルドはハウルにとどめを刺そうと、一撃に力を込める。しかし夜に差し掛かり、月が雲によって次第に現れると、ハウルの様子がおかしくなる。筋肉が躍動し、骨格や体格も変化していく。ハウルの纏う気が明らかに変わっていくことを感じたレパルドは攻撃をやめた。

「貴様……誰だ?」

 そこには、犬耳を生やした、青年がそこに立っていた。
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