上 下
65 / 101
リシャーダの海賊編

第64話 巨大な海賊船

しおりを挟む
 ソウタ達は船の上にいた。リシャーダ港で一番の航海士であるルブトンと、漁師である屈強の男たち十数人を船員として連れてシャイルー島に向かう。航海士であるルブトンはさすが港町で1番と言われるだけあり、的確な指示と判断力で男たちに仕事を与える。

「あぁ~、船の上って気持ちいいね~。海の香りが心地いいわ~」

 シーナは気持ちいい潮風に当たりながら、体を伸ばす。そんな中、ソウタはというと……

「シーナ……元気だな……、俺は……ダメみたぁぁぁあぁおろろろろろろ」

「ぎゃあぁぁ! 大丈夫ソウタ!?」

 ソウタは船の揺れに酔ったのか、海に向かって嘔吐をして、シーナは後ろから背中をさすってソウタを看病している。

「おい、まさか船の上が苦手とはな……それで海賊と戦えんのか? 全く不甲斐ないな」

 ブルトンはソウタの姿を見ながら呆れていた、ここからはシャイルー島の海流に乗る。今よりもさらに船の揺れは激しくなるため、ソウタが船酔いに耐えれるのか懸念していた。

「だ、大丈夫……なんとか頑張って戦うからああぁぁおろろろろ」

「……信用ねぇな、ったく。本当に大丈夫か? いいか! お前ら、もう少しでシャイルー島の海流に乗るぞ、気を引き締めろよ、落っことされるぞ!」

「おぉ!」

 船員たちはブルトンの言葉に励まされ、士気を高める。次第に天候が悪くなり、波も高くなっていく。暗雲が立ち込める中、ブルトンはより的確に指示をできるよう全神経を集中させていた。

「おい、シーナちゃん、ソウタを船室に連れて行ってやんな、ハウルも連れてってやってくれ。こっちは大丈夫だから」

「え、でもみんな頑張ってるし、何か手伝うことがあれば……」

「バカ野郎! 勘違いすんな、この海流は素人には抜けられん、ここはプロである俺たちに任せな、お前さんらには海賊を退治するって役目があるのを忘れるなよ」

 ブルトンの言葉を聞いていた1人の船員が、ソウタの腕を持って、脇に首を回した。

「ほら、ここは俺たちに任せて、あんたたちはしっかり休んでくれ、その代わり海賊たちはよろしく頼むぜ!」

「……わかりました! ほら、ソウタ行くよ」

「うぅ……ごめん、ありがとう……うえぇ」

 船室には簡易的なベッドとテーブル、テーブルの上には果物が盛りつけられたバスケットが置かれてある。ソウタはベッドに横になって酔いをさましていた。

「あぁ~、きっつ気分悪いわ~」

「ねぇ、本当に戦えるの?」

 シーナはハウルに果物を手で与えながらソウタの身体を心配した。

「そりゃ、いざとなれば戦いますよ」

「どうだか……そういえば、酔い止めの薬を置いてくれてたみたいだから飲みなよ」

 そういって、シーナはハウルに果物を与えた後、立ち上がって酔い止めの薬を探し始めた。

「まじか、それ欲しいかも……」

「まったく、ソウタの耐性の無さはほとほと呆れるな」

「「誰のせいだよ!」」

 神さまの言葉にソウタとシーナは声を揃えてツッコんだ。

「ほんと、神さまって無責任なんだか……」

 シーナが話していると、突如船が大揺れに見舞われた。テーブルの上に置いてあった果物は揺れによって地面を転がり、シーナはバランスを崩してしまう。

「な、なに!? この揺れは?」

 シーナが外の様子を気にしていると、船室の扉が勢いよく開けられた。

「た、大変だ! か、海賊だ! やつらが現れた!」

 とうとう海賊が現れたのだ。おそらく奴らの乗っている海賊船がこちらの船にぶつかったことで大きな揺れが発生したのだろう。

「とうとう現れたか、ソウタ行けるか?」

「あぁ、行けるよぉぉぉおろろろ」

「もう! ソウタは自分で酔い止めを飲んで急いで来て! 私は先にいってるから!」

 シーナは外の様子を確認するため、男と一緒に急いで船室を出て行った。

「ブルトンさん! 大丈夫……って嘘?」

 シーナの目に飛び込んできたのは、こちらの船のおよそ5倍はあるであろう巨大な海賊船だ。海賊船はボロボロで帆もところどころ破れており、まるで戦い終わった船のようだ。海賊船からはこちらのロープが引っかけられ、武器を持ったコボルトがこちらの船に襲い掛かっている。コボルトは毛に覆われ、犬の顔を持つモンスターだ。人間と同じように両の足で歩くことができ、強力な顎と爪を要しながら、武器を使うこともできる知能を併せ持つモンスターで、船に乗り込んでは船員に攻撃を仕掛けていた。

「まずい! どうにかしないと、ハウル一緒に戦うよ!」

「グルルゥ、ワン!」

 シーナとハウルは迫りくるモンスター達と一戦を交えることになった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

前世の記憶で異世界を発展させます!~のんびり開発で世界最強~

櫻木零
ファンタジー
20XX年。特にこれといった長所もない主人公『朝比奈陽翔』は二人の幼なじみと充実した毎日をおくっていた。しかしある日、朝起きてみるとそこは異世界だった!?異世界アリストタパスでは陽翔はグランと名付けられ、生活をおくっていた。陽翔として住んでいた日本より生活水準が低く、人々は充実した生活をおくっていたが元の日本の暮らしを知っている陽翔は耐えられなかった。「生活水準が低いなら前世の知識で発展させよう!」グランは異世界にはなかったものをチートともいえる能力をつかい世に送り出していく。そんなこの物語はまあまあ地頭のいい少年グランの異世界建国?冒険譚である。小説家になろう様、カクヨム様、ノベマ様、ツギクル様でも掲載させていただいております。そちらもよろしくお願いします。

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我
ファンタジー
 日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。  仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。  そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。  そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。  忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。  生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。  ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。 この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。 冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。 なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

処理中です...