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エルフの森編
第56話 あらぬ疑い
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突然入ってきたエルフに、エイルは大きな声で叫んだ。
「おい、今立て込んでおるのだ一体何の騒ぎだ!」
「そ、それがガルディア王国から文書が届いております……!」
「それが何だというのだ、文書が届いただけであろう」
「しかしながら……我らエルフが魔王軍に寝返ったと文書には書かれているのです!」
「なんだと!? えぇい、その文書をよこせ!」
エイルは兵士から文書を取り上げ、文書の中身を確認した。
『エルフの王、エイル・リュミオールよ、魔王軍にエルフの誇る重要資源を渡しているという極めて重大な国家規律違反をしている現場を目撃したと報告が上がっている。このことを受け、我らガルディア王国はエルフの国に対して開示を要求する。もし要求が受けられない場合は他国と共同戦線を張り、エルフの国を侵略することをここに宣言する。 ガルディア王国 クレスト・リヴ・ガルディア』
文書を読んだエイルは、怒りのあまり文書をクシャっと力強く握りしめた。
「バカな……エルフが魔王軍に寝返るだと!? そんなバカげたことがあるわけなかろう、クソ……忌々しい人間め!」
このままでは国と国の全面戦争になりかねない、とはいえ現にフィエルが魔王軍に資源を渡していたのは紛れもない事実。フィエルはすでにエルフと関係がないことを証明する必要があるが、その方法がないことにエイルは顔に手を当ててうなだれている。
「なぁ、サラザール、ずっと気になってたけどさ、エルフが誇る資源ってなんなの?」
「あぁ、それは『魔晶石』だ。魔晶石は魔力を凝縮した結晶のこと、ハントの森は魔力に満ち溢れているからな、次第に魔力を凝縮し始め結晶化していくらしい」
「マジか! それをフィエルは魔王軍に渡してたのかよ! ひっでぇやつだな!」
「魔晶石は魔法の威力を高めることもできれば、武器や防具にも利用できる。それが魔王軍に渡ったとなれば、魔王軍はより強力になることは間違いない」
エイルは立ち上がり、大声を張り上げた。
「どうすればいいのだ! このままでは戦争になりかねん、打開する方法はないのか?」
「方法はないことではありません、近日に『世界緊急会議《レヴェリー》』を配信し、フィエルを差し出すのです。我々は無実無根だとそこで証明できれば戦争は回避できると思います」
サラザールは淡々とエイルに打開策を説明した。サラザールの頭の回転は速く、見事な打開策を生んだことにその場にいた全員が納得した。
「それはいい! よし、すぐに準備に取り掛かろう。おい、全世界に投影するんだ!」
「はっ!」
エルフの兵士は急ぎ足で部屋を出ていった。
「なぁ、投影って?」
ソウタは気になってシーナに小声で尋ねた。
「映像を映し出す投影魔法よ。姿かたちは勿論、音も伝えることができるの」
「へぇ、現代のテレビみたいなもんか……」
「うん? テレビ? なにそれ」
「あぁ! いや、なんでもないよ!」―――
―――翌日、エルフは釈明をするため投影魔法で、ガルディア王国と通信して3
日後に全世界の国と世界緊急会議《レヴェリー》を開くことになった。それまでの間はフィエルの遺体は丁重にエイルの屋敷で保管することに決まった。
「いよいよ、今日が会議の日か」
ソウタはドキドキが止まらなかった。ここで世界の国がエルフを寝返った国と認定すれば天使と竜人族の時と同様、戦争になるかもしれない。しかも今度はガルディア王国……おそらく被害は前の比ではないだろう、投影魔法の準備が次々とされていき、エイルは玉座に座り、時間まで目を瞑っている。
「さて、そろそろ時間のようだな。おい、フィエルの遺体をここに持ってきてくれないか?」
「かしこまりました!」
サラザールの指示で、エルフの兵士がフィエルの遺体を取りに向かった。そして予定の時間を迎える。投影魔法によって、世界の国の王の顔が映し出され、巨人の王、ドワーフの王、多くの顔ぶれが並ぶ中、ソウタの国はソウタの代行としてアリアが映し出された。
「どうも、ソウタ様お元気そうで何よりです」
「あぁ! アリアさんなんかすいません、俺の代わりに出てもらって……」
ソウタが頭を下げると、アリアはふふっと微笑んだ。
「全然問題ありません、シーナ? あなたは問題なくやれてますか?」
アリアの問いに、シーナは少し元気なさそうに答える。
「え、えぇ。大丈夫……です」
「世界の王たちよ、世界緊急会議《レヴェリー》に出席いただき感謝する。まずはこのエイル、皆にお礼を伝える」
「前置きはいい、エルフが魔王軍に加担していないという証拠を早く証明してくれ」
ガルディア王国の王、クレストはニヤニヤしながらエイルを急かした。
「確かに……このままではエルフに送っている交易を停止しなくてはいけなくなる。失望はしたくない、早く信じる根拠を提示してくれたまえ」
巨人の王、ルードスがクレストに同調し、エイルは咳払いをして、話しを始めた。
「で、では。これよりお見せするのは我が国から魔晶石を魔王軍に流した密猟者だ。この者はエルフの国を抜け出そうとした者で、我々エルフではもはやない。それを踏まえたうえで判断して欲しい」
エイルがそう話していると、エルフの兵士が慌ただしく入ってきた。
「た、大変です! フィエルの遺体がどこにもありません!」
「おい、今立て込んでおるのだ一体何の騒ぎだ!」
「そ、それがガルディア王国から文書が届いております……!」
「それが何だというのだ、文書が届いただけであろう」
「しかしながら……我らエルフが魔王軍に寝返ったと文書には書かれているのです!」
「なんだと!? えぇい、その文書をよこせ!」
エイルは兵士から文書を取り上げ、文書の中身を確認した。
『エルフの王、エイル・リュミオールよ、魔王軍にエルフの誇る重要資源を渡しているという極めて重大な国家規律違反をしている現場を目撃したと報告が上がっている。このことを受け、我らガルディア王国はエルフの国に対して開示を要求する。もし要求が受けられない場合は他国と共同戦線を張り、エルフの国を侵略することをここに宣言する。 ガルディア王国 クレスト・リヴ・ガルディア』
文書を読んだエイルは、怒りのあまり文書をクシャっと力強く握りしめた。
「バカな……エルフが魔王軍に寝返るだと!? そんなバカげたことがあるわけなかろう、クソ……忌々しい人間め!」
このままでは国と国の全面戦争になりかねない、とはいえ現にフィエルが魔王軍に資源を渡していたのは紛れもない事実。フィエルはすでにエルフと関係がないことを証明する必要があるが、その方法がないことにエイルは顔に手を当ててうなだれている。
「なぁ、サラザール、ずっと気になってたけどさ、エルフが誇る資源ってなんなの?」
「あぁ、それは『魔晶石』だ。魔晶石は魔力を凝縮した結晶のこと、ハントの森は魔力に満ち溢れているからな、次第に魔力を凝縮し始め結晶化していくらしい」
「マジか! それをフィエルは魔王軍に渡してたのかよ! ひっでぇやつだな!」
「魔晶石は魔法の威力を高めることもできれば、武器や防具にも利用できる。それが魔王軍に渡ったとなれば、魔王軍はより強力になることは間違いない」
エイルは立ち上がり、大声を張り上げた。
「どうすればいいのだ! このままでは戦争になりかねん、打開する方法はないのか?」
「方法はないことではありません、近日に『世界緊急会議《レヴェリー》』を配信し、フィエルを差し出すのです。我々は無実無根だとそこで証明できれば戦争は回避できると思います」
サラザールは淡々とエイルに打開策を説明した。サラザールの頭の回転は速く、見事な打開策を生んだことにその場にいた全員が納得した。
「それはいい! よし、すぐに準備に取り掛かろう。おい、全世界に投影するんだ!」
「はっ!」
エルフの兵士は急ぎ足で部屋を出ていった。
「なぁ、投影って?」
ソウタは気になってシーナに小声で尋ねた。
「映像を映し出す投影魔法よ。姿かたちは勿論、音も伝えることができるの」
「へぇ、現代のテレビみたいなもんか……」
「うん? テレビ? なにそれ」
「あぁ! いや、なんでもないよ!」―――
―――翌日、エルフは釈明をするため投影魔法で、ガルディア王国と通信して3
日後に全世界の国と世界緊急会議《レヴェリー》を開くことになった。それまでの間はフィエルの遺体は丁重にエイルの屋敷で保管することに決まった。
「いよいよ、今日が会議の日か」
ソウタはドキドキが止まらなかった。ここで世界の国がエルフを寝返った国と認定すれば天使と竜人族の時と同様、戦争になるかもしれない。しかも今度はガルディア王国……おそらく被害は前の比ではないだろう、投影魔法の準備が次々とされていき、エイルは玉座に座り、時間まで目を瞑っている。
「さて、そろそろ時間のようだな。おい、フィエルの遺体をここに持ってきてくれないか?」
「かしこまりました!」
サラザールの指示で、エルフの兵士がフィエルの遺体を取りに向かった。そして予定の時間を迎える。投影魔法によって、世界の国の王の顔が映し出され、巨人の王、ドワーフの王、多くの顔ぶれが並ぶ中、ソウタの国はソウタの代行としてアリアが映し出された。
「どうも、ソウタ様お元気そうで何よりです」
「あぁ! アリアさんなんかすいません、俺の代わりに出てもらって……」
ソウタが頭を下げると、アリアはふふっと微笑んだ。
「全然問題ありません、シーナ? あなたは問題なくやれてますか?」
アリアの問いに、シーナは少し元気なさそうに答える。
「え、えぇ。大丈夫……です」
「世界の王たちよ、世界緊急会議《レヴェリー》に出席いただき感謝する。まずはこのエイル、皆にお礼を伝える」
「前置きはいい、エルフが魔王軍に加担していないという証拠を早く証明してくれ」
ガルディア王国の王、クレストはニヤニヤしながらエイルを急かした。
「確かに……このままではエルフに送っている交易を停止しなくてはいけなくなる。失望はしたくない、早く信じる根拠を提示してくれたまえ」
巨人の王、ルードスがクレストに同調し、エイルは咳払いをして、話しを始めた。
「で、では。これよりお見せするのは我が国から魔晶石を魔王軍に流した密猟者だ。この者はエルフの国を抜け出そうとした者で、我々エルフではもはやない。それを踏まえたうえで判断して欲しい」
エイルがそう話していると、エルフの兵士が慌ただしく入ってきた。
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