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エルフの森編
第35話 森の狩人
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濃霧は晴れているが、木は風の影響で大きく曲がり、ソウタの周りを中心にして、木々が外側を向いている。岩は吹き飛ばされ、地面がえぐれており、ソウタの周りには何もない状態だ。
「あら、これは……まずいよね?」
「エルフが見たら、絶対怒ると思うぞ?」
そうこうしていると、何処からともなく、声が聞こえてくる。
「あれ? 僕の霧魔法が吹き飛ばされてるぞ?」
「私の幻覚魔法が効いてないのかしら? 天使とワーウルフには効いたんだけど」
声を聞く限りおそらく少年と少女だ、エルフの子供だろうか? ソウタは集中し、耳を研ぎ澄ませた。おそらく攻撃を仕掛けてくるはず、シーナとハウルの場所が分からない以上、こちらからはうかつに動けない……耳を澄ませていると、後方から矢の風切り音が聞こえた。ソウタは避けて矢が飛んできた方向を向いた。
「ゲェ! 避けたぞ!」
「まずいバレるわ!」
ガサガサと木に隠れているのだろうが、隠れきれてない。身体は残して顔だけを隠している。やはりエルフの子供のようだ。
「いや、それ隠れてるって言わねぇから」
ソウタはひとっ飛びで、エルフのそばに飛ぶと、そこには茶色い革製の布を継ぎ合わせたような服と、体格に合わない弓と矢筒、額には布を巻いたエルフの男の子と女の子がこちらを見て驚いている。
「うわぁ、な、なんでバレたんだ!?」
「そりゃ、バレるだろ、体隠れてないんだもん」
ソウタがそう言い放つと、まるで覚悟を決めたようにズカッと地面に胡坐をかいて座った。
「くそぉ、こうなったら僕たちの負けだ、煮るなり焼くなり好きにしろ!」
「いや、俺は仲間の居場所を教えてほしいだけなんだけど」
ソウタの言葉に反応し、女の子のエルフが恐る恐る尋ねた。
「天使とワーウルフですか?」
「そうだよ、シーナとハウルっていうんだけど」
「ワーウルフは人間には懐きませんよ? 彼らは獰猛なモンスターです。この森の生態系を崩すかもしれないから、サラザールさんが連れて行ったと思います」
ソウタは頭を抱えた。忘れていた、ハウルはワーウルフで人間には懐かないモンスターだと、このままではハウルの身も危ない、シーナの居場所がわからない以上、うかつにこちらから動くこともできない。恐らく、この子たちにハウルの事を言っても信じてもらえないだろう。
「とにかく、シーナとハウルは返してもらうぞ、君たちのエルフの王とやらにも用があるんだ、代わりに案内してもらおうか」
「僕たちの住む渓谷に? やなこった!」
「渓谷には人間を入れるなと長老様に言われておりますので」
「……そうか、なら仕方ないな。実は俺は……」
そういって、ソウタは不気味な笑みを浮かべ、高らかに笑った。
「エルフの子供の肉が大好きなんだ! お前たちはとっても美味しそうだな。仲間の居場所を吐かないならお前たちに用はない。食べてやるぞ~!」
「ぎゃぁぁあ!」
「ご、ごめんなさい!」
2人は泣きじゃくり、逃げようとするが、ソウタは服を掴んで逃がさない。ソウタは心が痛んだ。
「ソウタ、お前……何もそこまでしなくても……」
「仕方ないだろ、シーナとハウルを助けるためだからな。さぁ、お前たちをどう料理してくれようか!」
泣きじゃくる2人を抱え、森の外に帰る振りをする。しかし、ソウタの腕を音もなく何かが貫いた。
「いてっ! な、なんだ?」
血が滴り、激痛が走る。ソウタは痛みの走る腕を見ると、見事に貫通している。
「くそ、親玉だなこりゃ! 相当手ごわいぞ」
「サラザールさんだ!」
「助けにきてくれたんだ」
2人は泣き叫ぶのをやめて、一斉にわめき始めた。サラザール? 一体何者だ? 少なくともかなりの手練れに違いない。恐らく狙撃の名手だろう。直線状にいると危険と判断したソウタは、物陰に隠れた。
「くそ、どこから狙ってやがるんだ?」
「ふん、隠れても無駄だぞ、サラザールさんの弾はどこまでも追いかける『追跡』のスキルの持ち主だ! 直線状だろうが、弾は曲がって必ずお前を狙うxかいhccdっし」
女の子はソウタに抱えられながら、喋る男の子の口を両手で塞いだ。
「喋ったらダメでしょ、フィル!」
「ご、ごめんよアエル……」
「なるほど、君たちはフィルとアエルって言うんだな」
ソウタは2人を抱えながら、相手の次の動きを予測した。しかし、フィルの言う通りに弾が曲がるとしたら、隠れることはむしろ危険だ。ソウタはフィルにダメもとで尋ねてみることにした。
「なぁ、フィル。そのサラザールって人は凄いのか?」
「そりゃ、もちろんさ! サラザールさんは木に擬態するのが上手いからな、僕なんか1日中くまなく探しても見つからな……はっ!?」
フィルは恐る恐るソウタに視線を送った。ソウタの顔は満面の笑みでフィルを見ている。
「このバカフィル!」
「ず、ずるいぞ人間! そうやってエルフを騙すんだな!」
「別に、俺は凄い人かどうかを聞いただけなんだけど? なるほど、木に擬態するんのか……」
ソウタは体を晒し、注意深く木を見ていく。身体は擬態できても皮膚や武器までは擬態はできないだろう、それに、仮に銃のような武器なら、なにかしらのヒントがあるかもしれない。
「俺にもまだ勝機はあるな……」
ソウタはまだ諦めていなかった。
「あら、これは……まずいよね?」
「エルフが見たら、絶対怒ると思うぞ?」
そうこうしていると、何処からともなく、声が聞こえてくる。
「あれ? 僕の霧魔法が吹き飛ばされてるぞ?」
「私の幻覚魔法が効いてないのかしら? 天使とワーウルフには効いたんだけど」
声を聞く限りおそらく少年と少女だ、エルフの子供だろうか? ソウタは集中し、耳を研ぎ澄ませた。おそらく攻撃を仕掛けてくるはず、シーナとハウルの場所が分からない以上、こちらからはうかつに動けない……耳を澄ませていると、後方から矢の風切り音が聞こえた。ソウタは避けて矢が飛んできた方向を向いた。
「ゲェ! 避けたぞ!」
「まずいバレるわ!」
ガサガサと木に隠れているのだろうが、隠れきれてない。身体は残して顔だけを隠している。やはりエルフの子供のようだ。
「いや、それ隠れてるって言わねぇから」
ソウタはひとっ飛びで、エルフのそばに飛ぶと、そこには茶色い革製の布を継ぎ合わせたような服と、体格に合わない弓と矢筒、額には布を巻いたエルフの男の子と女の子がこちらを見て驚いている。
「うわぁ、な、なんでバレたんだ!?」
「そりゃ、バレるだろ、体隠れてないんだもん」
ソウタがそう言い放つと、まるで覚悟を決めたようにズカッと地面に胡坐をかいて座った。
「くそぉ、こうなったら僕たちの負けだ、煮るなり焼くなり好きにしろ!」
「いや、俺は仲間の居場所を教えてほしいだけなんだけど」
ソウタの言葉に反応し、女の子のエルフが恐る恐る尋ねた。
「天使とワーウルフですか?」
「そうだよ、シーナとハウルっていうんだけど」
「ワーウルフは人間には懐きませんよ? 彼らは獰猛なモンスターです。この森の生態系を崩すかもしれないから、サラザールさんが連れて行ったと思います」
ソウタは頭を抱えた。忘れていた、ハウルはワーウルフで人間には懐かないモンスターだと、このままではハウルの身も危ない、シーナの居場所がわからない以上、うかつにこちらから動くこともできない。恐らく、この子たちにハウルの事を言っても信じてもらえないだろう。
「とにかく、シーナとハウルは返してもらうぞ、君たちのエルフの王とやらにも用があるんだ、代わりに案内してもらおうか」
「僕たちの住む渓谷に? やなこった!」
「渓谷には人間を入れるなと長老様に言われておりますので」
「……そうか、なら仕方ないな。実は俺は……」
そういって、ソウタは不気味な笑みを浮かべ、高らかに笑った。
「エルフの子供の肉が大好きなんだ! お前たちはとっても美味しそうだな。仲間の居場所を吐かないならお前たちに用はない。食べてやるぞ~!」
「ぎゃぁぁあ!」
「ご、ごめんなさい!」
2人は泣きじゃくり、逃げようとするが、ソウタは服を掴んで逃がさない。ソウタは心が痛んだ。
「ソウタ、お前……何もそこまでしなくても……」
「仕方ないだろ、シーナとハウルを助けるためだからな。さぁ、お前たちをどう料理してくれようか!」
泣きじゃくる2人を抱え、森の外に帰る振りをする。しかし、ソウタの腕を音もなく何かが貫いた。
「いてっ! な、なんだ?」
血が滴り、激痛が走る。ソウタは痛みの走る腕を見ると、見事に貫通している。
「くそ、親玉だなこりゃ! 相当手ごわいぞ」
「サラザールさんだ!」
「助けにきてくれたんだ」
2人は泣き叫ぶのをやめて、一斉にわめき始めた。サラザール? 一体何者だ? 少なくともかなりの手練れに違いない。恐らく狙撃の名手だろう。直線状にいると危険と判断したソウタは、物陰に隠れた。
「くそ、どこから狙ってやがるんだ?」
「ふん、隠れても無駄だぞ、サラザールさんの弾はどこまでも追いかける『追跡』のスキルの持ち主だ! 直線状だろうが、弾は曲がって必ずお前を狙うxかいhccdっし」
女の子はソウタに抱えられながら、喋る男の子の口を両手で塞いだ。
「喋ったらダメでしょ、フィル!」
「ご、ごめんよアエル……」
「なるほど、君たちはフィルとアエルって言うんだな」
ソウタは2人を抱えながら、相手の次の動きを予測した。しかし、フィルの言う通りに弾が曲がるとしたら、隠れることはむしろ危険だ。ソウタはフィルにダメもとで尋ねてみることにした。
「なぁ、フィル。そのサラザールって人は凄いのか?」
「そりゃ、もちろんさ! サラザールさんは木に擬態するのが上手いからな、僕なんか1日中くまなく探しても見つからな……はっ!?」
フィルは恐る恐るソウタに視線を送った。ソウタの顔は満面の笑みでフィルを見ている。
「このバカフィル!」
「ず、ずるいぞ人間! そうやってエルフを騙すんだな!」
「別に、俺は凄い人かどうかを聞いただけなんだけど? なるほど、木に擬態するんのか……」
ソウタは体を晒し、注意深く木を見ていく。身体は擬態できても皮膚や武器までは擬態はできないだろう、それに、仮に銃のような武器なら、なにかしらのヒントがあるかもしれない。
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ソウタはまだ諦めていなかった。
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