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天空の城編
第15話 天使と竜の確執
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山小屋で天使の女の子がベッドでぐっすりと寝ていた。
女の子の額には水にぬれたタオルが置かれており、
ソウタが定期的に取り換えている。
「なかなか目覚めないな」
見たところ傷もそれほど深くないし、
外傷もひどい所は見当たらない。
そろそろ目覚めてもいいはずだが……
しかし、
ソウタは目のやり場に困っていた。
なぜなら、
目の前で眠っている女の子が誰が見ても美少女だからだ。
髪は金髪で長く、
肌は白くきめ細かい。
小柄だが出るとこは出ていて、
ソフィアの若いころの服が似合っている。
ソワソワしているとソフィアが話しかけてくる。
「何をその子の前でウジウジしてんだい! じっとできないのか?」
「いや、だってさ……その~なんというか」
ソウタがそうこうしているうちに、
女の子はゆっくりと目を開け始める。
「……ここは?」
女の子の声でソウタは振り返ると、
女の子と目が合った。
目は澄んだ青い瞳をしていて、
ソウタは思わずドキッとしてしまう。
「あ、えっと、起きたの?」
突然声を掛けられ、
女の子はベッドの上でバタバタとし始めた。
「え、あ、だ、誰!? なんなの!」
ベッドにあった枕をソウタに投げつけ顔に当たると、
ズルっと枕が床に落ちた。
「あの~、別に何かしようってわけじゃないんだけど……」
「えっ? 竜人族の追っ手じゃないの?」
「何? その竜人族って」
ソウタは聞きなれない言葉を耳にした。
竜人族は天使の住む天空の城、ジアドラの真下の孤島を住みかとする一族だ。
なんでも竜の鱗を身に纏い、
人の形をした竜と噂されているらしい。
天使と同じく翼を生やし、
昔は仲睦まじく共存をしていたらしいが、
大昔にあった紛争により関係に亀裂が入り、
以後、
大地は竜人族、
空を天使がそれぞれ国を作るようになったのだ。
「竜人族は戦闘民族さ、古代の生き物ドラゴンを使役することができるんだが。なるほど、そこから逃げてきたってことだね」
「あ、え~っと」
女の子はモジモジして、
ソフィアを見つめていた。
「あぁ、すまなかったね、私はソフィアだよ、この子はソウタだ。お嬢さんの名は?」
「……シーナ」
うつむきながら顔を赤らめる。
「え~っとシーナさん? 追っ手ってことは天使と竜人族は戦争中ってこと?」
「そうなんだ、アイツら『空の支配権を奪われた』とか何とかいって、大義名分を掲げて戦争を仕掛けてきたんだ。ドラゴンの中でも至高の種であるエンシェントドラゴンを5体も空に放ちやがって……」
シーナはシーツをグシャッと両手に握りしめ、
怒りを露わにした。
ドラゴンは崇高な種であり指で数えるほどしかない。
その中でもエンシェントドラゴンは特に知能が高く、
1匹で小国程度であれば陥落させるとまで言われるほどの種である。
「ほぉ、エンシェントドラゴンねぇそりゃ一溜りもないね。」
ソフィアはエンシェントドラゴンについてまるで知っているような口ぶりだった。
シーナはうつむきながら話を続けた。
「だからあたしは同盟国のガルディア王国に援軍の要請をと思って逃げてた途中で竜人族の追っ手に追いつかれちゃって……」
エンシェントドラゴンの恐怖が体に染みついているのか、
シーナは体をガタガタと震わせ始める。
「そういうことかい、なら話は早いね。今すぐガルディア王国に向かって事情を説明すれば援軍をもらえるだろう。ソウタ、シーナをガルディア王国まで連れてってやんな」
「マジかよ!」
ソウタは内心不安で堪らなかった。
ガルディア王国はソウタを追放した国。
兵士から笑われ、
王様からは嘲笑されたからだ。
果たして俺が行っても問題ないのだろうか?
ソウタは周りの目を気にしていた。
ソウタの目は泳ぎ、
表情も強張っている。
「ソウタ、気にすることはないよ。以前の君とは違うんだから」
神さまはソウタの頭の中で励ました。
ソウタの不安な気持ちが伝わったのだろうか、
なぜ分かったのかはわからないが、
神さまの言葉にソウタは少しホッとした。
「ふぅ~、そうだな。考えても仕方ないか……よし、ハウル行くぞ!」
ソウタは深呼吸をして、
ガルディア王国に向かうことを決意した。
「な~に言ってんだい? ハウルは私とシーナを乗せるんだよ」
ハウルは犬座りをしながら目を大きく見開いて、
ソフィアを見つめていた。
「え、じゃあ俺は?」
ソウタは自分を指さす。
ソフィアとシーナの移動手段は分かるが、
自分の移動手段が分からない、
一体どうやって移動したらいいんだろうか?
「そんなの言わなくたってわかるだろう?」
「えっ?」
ソウタは嫌な予感しかしなかった―――
―――「ったく、なんで俺だけ……」
ソウタはガルディア王国に向かっていた。
「ほら! 何ゆっくり移動してるんだい? ハウルがスピードを合わせてるじゃないか!」
「ちぇっ……」
そう、
ソウタは木の上を飛んで移動していたのだ。
木々の蔦や枝を巧みに利用して、風を切って進んでいく。
サイファンの森を後にしてガルディア王国へと急ぐソウタの姿は、
さながら森の住人のようだ。
ソウタの能力であれば、
サイファンの森からガルディア王国までの距離は容易く移動できる。
ソフィアはそれが分かっていたのだろう、
ソウタはソフィアに聞こえないようブツブツと小言を言いながら王国に向かう。
サイファンの森に初めて足を踏み入れた時、
半日以上を要した道が
今ではその距離を1時間足らずで移動しているのだ。
ガルディア王国に戻ると、
ソウタはボソッと呟いた。
「まさかこんな早く帰ってくるとは思わなかったよ……」
ソウタは一抹の不安を抱きながらも、
ガルディア王国に足を踏み入れた。
女の子の額には水にぬれたタオルが置かれており、
ソウタが定期的に取り換えている。
「なかなか目覚めないな」
見たところ傷もそれほど深くないし、
外傷もひどい所は見当たらない。
そろそろ目覚めてもいいはずだが……
しかし、
ソウタは目のやり場に困っていた。
なぜなら、
目の前で眠っている女の子が誰が見ても美少女だからだ。
髪は金髪で長く、
肌は白くきめ細かい。
小柄だが出るとこは出ていて、
ソフィアの若いころの服が似合っている。
ソワソワしているとソフィアが話しかけてくる。
「何をその子の前でウジウジしてんだい! じっとできないのか?」
「いや、だってさ……その~なんというか」
ソウタがそうこうしているうちに、
女の子はゆっくりと目を開け始める。
「……ここは?」
女の子の声でソウタは振り返ると、
女の子と目が合った。
目は澄んだ青い瞳をしていて、
ソウタは思わずドキッとしてしまう。
「あ、えっと、起きたの?」
突然声を掛けられ、
女の子はベッドの上でバタバタとし始めた。
「え、あ、だ、誰!? なんなの!」
ベッドにあった枕をソウタに投げつけ顔に当たると、
ズルっと枕が床に落ちた。
「あの~、別に何かしようってわけじゃないんだけど……」
「えっ? 竜人族の追っ手じゃないの?」
「何? その竜人族って」
ソウタは聞きなれない言葉を耳にした。
竜人族は天使の住む天空の城、ジアドラの真下の孤島を住みかとする一族だ。
なんでも竜の鱗を身に纏い、
人の形をした竜と噂されているらしい。
天使と同じく翼を生やし、
昔は仲睦まじく共存をしていたらしいが、
大昔にあった紛争により関係に亀裂が入り、
以後、
大地は竜人族、
空を天使がそれぞれ国を作るようになったのだ。
「竜人族は戦闘民族さ、古代の生き物ドラゴンを使役することができるんだが。なるほど、そこから逃げてきたってことだね」
「あ、え~っと」
女の子はモジモジして、
ソフィアを見つめていた。
「あぁ、すまなかったね、私はソフィアだよ、この子はソウタだ。お嬢さんの名は?」
「……シーナ」
うつむきながら顔を赤らめる。
「え~っとシーナさん? 追っ手ってことは天使と竜人族は戦争中ってこと?」
「そうなんだ、アイツら『空の支配権を奪われた』とか何とかいって、大義名分を掲げて戦争を仕掛けてきたんだ。ドラゴンの中でも至高の種であるエンシェントドラゴンを5体も空に放ちやがって……」
シーナはシーツをグシャッと両手に握りしめ、
怒りを露わにした。
ドラゴンは崇高な種であり指で数えるほどしかない。
その中でもエンシェントドラゴンは特に知能が高く、
1匹で小国程度であれば陥落させるとまで言われるほどの種である。
「ほぉ、エンシェントドラゴンねぇそりゃ一溜りもないね。」
ソフィアはエンシェントドラゴンについてまるで知っているような口ぶりだった。
シーナはうつむきながら話を続けた。
「だからあたしは同盟国のガルディア王国に援軍の要請をと思って逃げてた途中で竜人族の追っ手に追いつかれちゃって……」
エンシェントドラゴンの恐怖が体に染みついているのか、
シーナは体をガタガタと震わせ始める。
「そういうことかい、なら話は早いね。今すぐガルディア王国に向かって事情を説明すれば援軍をもらえるだろう。ソウタ、シーナをガルディア王国まで連れてってやんな」
「マジかよ!」
ソウタは内心不安で堪らなかった。
ガルディア王国はソウタを追放した国。
兵士から笑われ、
王様からは嘲笑されたからだ。
果たして俺が行っても問題ないのだろうか?
ソウタは周りの目を気にしていた。
ソウタの目は泳ぎ、
表情も強張っている。
「ソウタ、気にすることはないよ。以前の君とは違うんだから」
神さまはソウタの頭の中で励ました。
ソウタの不安な気持ちが伝わったのだろうか、
なぜ分かったのかはわからないが、
神さまの言葉にソウタは少しホッとした。
「ふぅ~、そうだな。考えても仕方ないか……よし、ハウル行くぞ!」
ソウタは深呼吸をして、
ガルディア王国に向かうことを決意した。
「な~に言ってんだい? ハウルは私とシーナを乗せるんだよ」
ハウルは犬座りをしながら目を大きく見開いて、
ソフィアを見つめていた。
「え、じゃあ俺は?」
ソウタは自分を指さす。
ソフィアとシーナの移動手段は分かるが、
自分の移動手段が分からない、
一体どうやって移動したらいいんだろうか?
「そんなの言わなくたってわかるだろう?」
「えっ?」
ソウタは嫌な予感しかしなかった―――
―――「ったく、なんで俺だけ……」
ソウタはガルディア王国に向かっていた。
「ほら! 何ゆっくり移動してるんだい? ハウルがスピードを合わせてるじゃないか!」
「ちぇっ……」
そう、
ソウタは木の上を飛んで移動していたのだ。
木々の蔦や枝を巧みに利用して、風を切って進んでいく。
サイファンの森を後にしてガルディア王国へと急ぐソウタの姿は、
さながら森の住人のようだ。
ソウタの能力であれば、
サイファンの森からガルディア王国までの距離は容易く移動できる。
ソフィアはそれが分かっていたのだろう、
ソウタはソフィアに聞こえないようブツブツと小言を言いながら王国に向かう。
サイファンの森に初めて足を踏み入れた時、
半日以上を要した道が
今ではその距離を1時間足らずで移動しているのだ。
ガルディア王国に戻ると、
ソウタはボソッと呟いた。
「まさかこんな早く帰ってくるとは思わなかったよ……」
ソウタは一抹の不安を抱きながらも、
ガルディア王国に足を踏み入れた。
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