転生したら、ステータスの上限がなくなったので脳筋プレイしてみた

Mr.Six

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転生編

第13話 物理の境地

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  ソウタの体は成長を続けていた。

(軽く飛んだだけでこんなに飛ぶって……本気で飛んだらどうなるんだよ……)

 ソウタは上空で体制を整え、

 何とか着地した。

「ふぅ、怖かった~」

「長いこと空にいて出た言葉がそれか、うっすいなぁ」

「怖いしか出ないだろ、あの状況じゃ」

 ソウタはあたりを見渡す。

 ソウタがいる場所は開けた場所で、

 木々が目の奥で生い茂っている。

 木と木の間は間隔が人がやっと通れるほどに開いており、

 練習をするには丁度いいだろう。

 ソウタは木の近くまで歩くと、

 足に力をためて、

 一気に走り抜けた。

 シュババババババッ

 一瞬の内に木と木の間をすり抜け、

 すり抜けた際に生じた衝撃波によって、

 木々はまるで弓を引くように、

 大きく悲鳴を上げながら曲がったり戻ったりしていた。

「おぉ、木が揺れ動いてる……」

 ソウタは自分の身に起きていることを一つ一つ確認した。

 軽くジャブを放てば、

 大きな岩を軽々と浮かせるほどの突風を引き起こし、

 岩石に蹴りを放てば、

 まるで斬鉄剣で切ったのかと見間違えるほどの凄まじい切れ味を放つ。

 身に起こる全てが規格外、

 ソウタは自分の体に起こることが信じられずにいた。

「やばいな、俺の体マジでどうなってんだよ……」

「はっきり言って化け物だよな」

「うん、なんだろう、物理的に使ってるみたい……」

 ソウタはふとあることを思いついた。

「どうした、急に黙り込んで」

「なぁ、火ってどうやったらつくんだっけ?」

「どう……って、摩擦が生じて発火……とか?」

「ってことは……」

 ソウタはおもむろに指に力を込めた。

 指パッチンの要領で勢いよく、

 指を鳴らす。

 ボワァァン

 !!!!!

 ソウタは指パッチンをすることで火をつけることができるようだ。

「おぉ、おぉ、おぉ! マジか! アッツい! あっつっっ」

 ソウタは指についた火を急いで消す。

「おぉ、まさかの物理で火を扱えるとは」

「そうだな、ある種の魔法と思っていただいて……」

「そんな魔法みたことねぇよ」

 思わず神さまのツッコミが入る。

「この調子なら、脳筋思考で四大属性扱えんじゃね?」

 ソウタは火を扱えるようになったことで、

 他の属性を物理的にできるのではないかと考えた。

「まぁ、火はさっきと同じように指こすればできるから~、土属性はこうか?」

「うん、言ってることはもうめちゃくちゃだけどな」

 神さまが呆れていると、

 ソウタは両手の指を地面に勢いよく突き刺し、

 力を込めた。

「おぉい! 急にどうした地面に指突き刺して、指までバキバキか!」

「ぬおぉぉぉぉ!」

 ゴゴゴゴゴッ

 指を差したところからビキビキと音を立て、

 地面はひび割れ始める。

 次第に地面は浮き始め、

 ソウタは自分の体の数十倍もある巨大な土の塊を持ち上げた。

「ここからぁ、こう!」

 ソウタは勢いよく投げつけると、

 ものすごい速度で飛んでいき、

 周辺を粉々に吹き飛ばした。

「これで、”土魔法”習得っと」

 ソウタは凄く満足そうな表情を浮かべている。

「もうね、頭がバグってきてるよソウタ……魔法って呼んじゃってるから」

 神さまのツッコミはソウタには届かなくなってきていた。

「問題は水だな……おそらくだけど、空気中の水分を集めるように~」

「集まるわけねぇだろ、水を何だと思ってんだよ……」

 ソウタは手首を回し続けた。

 手首を中心に小さな乱気流が出来上がり、

 少しずつ水分が凝縮されていく。

「おい、マジか! 水が出来上がっていく……物理法則完全に無視か!」

 神さまは思いもしなかったのか、

 それ以上言葉にすることは無く、

 ただソウタの行動を見守っていた。

 乱気流に支えられた水は次第に大きくなっていく。

「よし、できたな。あとは銃弾の要領で回転を掛けて投げつければ……」

 ソウタは手首を回すのを止めて、

 水を掌で一気に押し出した。

 ビュンッ

 ハウルの横をギリギリ通り、

 ハウルの後ろの岩石に風穴を開けた。

「よし、これで水属性も習得っと。一応四大属性は習得したな……ん?」

 目を大きく見開き、

 何が起こったのかわからないハウルは、

 じっとソウタを見つめて、

 汗をダラダラと流していた。

「あぁ! ハウルごめん! 大丈夫か?」

「ワ、ワン……」

 ハウルはウルウルと目に泪をためて、

 ソウタを見つめていた。

 モンスターといえどこんな顔されると、

 どこか可愛く見えてしまう。

「そろそろ帰ってこのことをソフィアのばあさんに伝えた方がよくないか?」

「そうだな、時間もある程度立ってきたし、ソフィアさんのお世話でもするかなぁ」

 ソウタは少し疲れたのか、

 肩を自分で揉んだり、

 背伸びをしたりして、

 体をいたわる。

 物理的とはいえ、

 火、水、風、土を自在に操れるようになり、

 人間離れした動きと力を手にしたソウタは、

 少しばかりの優越感に浸っていた。

「本人の前で世話とか絶対言うなよ、魔法でボコボコにされるぞ」

「したくてもできねぇよ、怒らしたら怖いんだから。それじゃ、帰るぞハウル!」

「ワン!」

 ソウタはハウルの背中に乗り、

 急いでソフィアのもとに戻った。
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