積極的にバラすタイプの鶴

のは

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ちょっとやつれた?

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 琉冬の部屋をどこにしようか考えて、ひとまず俺の部屋の隣にと思ったのだけど、そう言えば物置代わりにしてたんだった。ふとんの置き場もない。
 両親の寝室を使わせるのは何となく嫌だし、居間って言うのも……。
「ええと、とりあえず今日のところは俺の部屋にふとん敷くんでもいい?」
「はい。もちろんです」
「ごめんな。あ、風呂入るんなら入ってきてもいいよ。俺は朝シャワー派なんで、大学遅れないようにそこだけ融通して」
「了解しました」


 風呂あがりのイケメンは浴衣でした。首筋を伝う汗がなんか色っぽいんですけど。目のやり場に困るんですけど!
「あの、ビール飲む? 風呂あがりにうまいよね」
「いただきます」
 冷蔵庫からビールを二つとりだして、一つを琉冬に手渡す。
 ビールを流し込んで上下する喉仏とか、ちょっと空いた胸元とか、缶を掴むしなやかな指とかなんか目をやってしまう。

「どうかしましたか?」
「え、あー、いや」
 琉冬がふわりと笑うので、俺は慌てて話題を探した。
 じゃないと意味もなく見てたってバレちゃうからね。
「えーと、えっと……。そうだ! 嫁ってことは、夜のアレも入ってんの?」
 って、何を聞いてるかな俺は!

「はい。もちろんです」
 あっさりと頷かれてしまったし、もちろんなんだね。
「そ。そうなんだ。小学生がこなくてよかったなあ」
「お望みでなければ強制は致しませんよ」
「へ、へー? ……望んだら?」
「上がいいですか、下がいいですか」
「選べんのお!?」
 それはもちろん上だよね。と思って琉冬を見て俺は我に返った。

「……し、下で」
 だって、このイケメンもてなせると思う? 無理だね。でもセックスには興味がある。めちゃめちゃある。だってこの人なんか色っぽいし。
「分かりました」
 琉冬は立ち上がり、俺の顔を上向かせてそっとキスをした。
 うん。コイツを抱くとか絶対に無理。
 キスだけでもう、くらくらするもん。

 正直に言おう、イケメンのセックスはすごく良かった。そりゃもう。
 美味しいご飯とイケメンによる、とろけそうなセックス。
 最高じゃね。もう女の子と付き合えなくてもいいや。
 琉冬との生活は、思ってた以上に快適で快感だ。良い嫁もらったな。抱かれてんの俺だけど。

 でも最近、なんとなく琉冬がやつれたように見える。夏バテかな。
 寒いところにすむ鳥らしいからな、鶴って。
 それは、半分正解だった。


「あのこれ、フリマアプリかなんかで売ってもらえませんか」
「フリマアプリ」
 使ったことないな、そんなもん。
 でもとりあえず琉冬が取り出したものを見てみる。
「ストール? どうしたのこれ、いいものなんじゃない?」
 おしゃれ上級者が巻いてそうなヤツ。手触りがすごくいい。
「織りました」
「織った!? あ、鶴と言えば機織り!? いや、アレ自分の毛むしるんだろ! まさかそれでやつれてたの!?」

「お気づきでしたか。恥ずかしい」
「いや、恥ずかしいじゃなくて、そんなことしちゃダメだって。どうしたの、なんか金策? なにが欲しいの」
「実は俺、暑いのが苦手で。エアコンをつけて欲しいんですが、エアコンって高いんでしょう? 少しでも足しになればと」
「わー! つけるつける! エアコンくらいつけるから羽むしらないで! 琉冬の体の方が大事だよ! あと、これも……。売っちゃうのもったいないよ。そのくらいなら、俺が使っていい?」
「え!?」
「あ、うん。それがいい。エアコン代ってことで。ダメかな」
「ダメじゃないです……」

 照れて赤くなった頬がすごくきれいで、ムラムラする。それに、ちょっと腹も立った。
「っていうかさ、正体バレたら去るみたいな話じゃないっけ?」
 そんなの困るんだけど。恐れと腹立ちで俺は琉冬の腕をつかんだ。
 けれど琉冬はしれっと言った。
「最初から知ってるんだから無効ですよ」
 あまりにあっさり言うので、俺は拍子抜けしてしまった。
「そういうもん? まあ、琉冬がいなくならないんならいいけどさ」
「去るつもりならエアコンつけてとは言いませんよ」
 そりゃそうか。

「でもほんと、これからは羽むしる前に相談してよ? 俺には琉冬が必要なんだ。だから、出てくなんて言うなよな?」
「はい」
 返事と共に俺たちの唇が重なった。
「……します?」
「します。あ、でも、暑いんだったら無理しなくても」
「暑くてもしたい」
「あ、はい……」
 彼の高い鼻が俺の平凡な鼻にこすれる。何度目かのキスで、彼の眼差しが変わる。
 俺はその瞬間を見るのが好きだった。

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