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ダンシング・ポメガバース
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1
夢の中で、僕はポメラニアンになっていた。
僕は腐男子なので、これはポメガバースとすぐに気が付いた。
そこで喜んでミラロゥの元へかけていった。彼の足元にまとわりつき、頬をこすりつけて撫でてとアピールをする。
「来たな、ルノン」
「うん!」
「では、踊るんだ!」
な、なんだって!?
僕はポカンとミラロゥを見上げた。
そんな、この肉球が目に入らないのか! ぶんぶん風を切ってる尻尾は? ぴくぴく動く耳をつまみたくならないの?
「どうしたんだい、ルノン。さあ早く」
踊れって言われても、僕いまポメだよ。僕はしっぽを下げて、右往左往した。
「そうじゃないだろう? まずは右回転だ」
ミラロゥがダンスを教えるときみたいな厳しい顔つきになったので、僕は慌てて手を上げた、つもり。
「ルノン、踊ります!」
くるくる回ると、次は左、ジャンプ、ヘドバンなどと熱い指示が飛んでくる。
ミラロゥはタンバリンを手にノリノリなんだけど、こっちはちょっと目が回りそう。
おしりを軸にウィンドミルモドキを決めながら僕は叫んだ。
これ、いつまで続くの!?
悲鳴を上げたところで目が覚めた。
「いや、そこは撫でてよ!」
文句を言っても、ベッドにミラロゥの姿はない。その代わり、キッチンから空腹を誘ういい匂いが漂ってきた。
これは……。フレンチトーストかな。
ふて寝しようかと思ったけど、仕方ないから起きるか。夢の余韻に少々むくれながら寝室から出た僕だけど、ミラロゥの姿を見たらたまらなくなった。広い背中に抱きついた。
「ルノン、危ないから座って待っていなさい」
すげなくされて唸ってしまう。
「どうしたんだ、犬みたいに」
犬だったんだよ、さっきまでね!
2
ミラロゥが、黒ポメになってる。
夢を見ているせいか、これがミラロゥだって僕にはすぐわかった。ふわっふわだし、眉毛があるよ!
なんて姿をしてるんだよ、ミラロゥ。
僕は自分の頬を両手で挟んで身もだえた。
よしよし、ここは自分が撫でてもらえなかった分まで撫でまくってあげるからね。
笑み崩れながら手を伸ばしたのだが、黒ポメはひらりと避けた。
「そうじゃない、ルノン。私のために踊ってくれないか」
「また僕が踊るの⁉」
「嫌なのか?」
黒ポメは不満げに尻尾をゆらゆらさせた。
ぐうう、そういう顔も可愛い。
「わかったよ。だけど、その毛並みをすこし堪能してから……」
「ルノン、それはダンスのあとだ。それがマナーだろう」
こんな時まで謎マナーを出してくるとはさすがミラロゥ。ため息が出ちゃうよ。
僕の態度が気に入らなかったのか黒ポメは、「キュゥン」と鳴いた。
そんな、僕が悪いことしているみたいじゃないか。
「わかったわかった! ルノン、踊ります!」
やけっぱちに宣言して、両手を上げてポーズを決めてみせる。
足を上げたり腕を振ったりするうち、黒ポメによる熱血指導が始まった。
「ルノン、動きが単調になっているぞ。もっとリズムを感じて!」
叫びながら黒ポメは後ろ足で立ち上がり、キュッキュと腰を振った。
やばい、メチャメチャ可愛い。
だけど僕には彼のダンスを堪能する余裕がない。ミラロゥの指示はどんどん過剰になり、今や僕は華麗にトリプルアクセルを決めているところなのだ。
だけどなんとかして黒ポメのダンスを目に焼き付けたい!
そう願った瞬間に目が覚めてしまった。
「あー、もっと見たかった」
「何が見たかったって」
「そりゃミラロゥのダンスを……」
会話してしまったけど、これもう現実だな。
チロッと片目を開けてみたら、ミラロゥは手を枕にして、面白がるような目つきで僕を覗き込んでいた。
「そうか、足りなかったのか」
僕はプルプルと首を振り、ミラロゥの胸元に顔をうずめた。
昨夜たっぷりと愛し合ったばかりなのだ。
ここは二度寝を決め込んで、黒ポメのダンスを反芻するのが正解だ。
おわり
夢の中で、僕はポメラニアンになっていた。
僕は腐男子なので、これはポメガバースとすぐに気が付いた。
そこで喜んでミラロゥの元へかけていった。彼の足元にまとわりつき、頬をこすりつけて撫でてとアピールをする。
「来たな、ルノン」
「うん!」
「では、踊るんだ!」
な、なんだって!?
僕はポカンとミラロゥを見上げた。
そんな、この肉球が目に入らないのか! ぶんぶん風を切ってる尻尾は? ぴくぴく動く耳をつまみたくならないの?
「どうしたんだい、ルノン。さあ早く」
踊れって言われても、僕いまポメだよ。僕はしっぽを下げて、右往左往した。
「そうじゃないだろう? まずは右回転だ」
ミラロゥがダンスを教えるときみたいな厳しい顔つきになったので、僕は慌てて手を上げた、つもり。
「ルノン、踊ります!」
くるくる回ると、次は左、ジャンプ、ヘドバンなどと熱い指示が飛んでくる。
ミラロゥはタンバリンを手にノリノリなんだけど、こっちはちょっと目が回りそう。
おしりを軸にウィンドミルモドキを決めながら僕は叫んだ。
これ、いつまで続くの!?
悲鳴を上げたところで目が覚めた。
「いや、そこは撫でてよ!」
文句を言っても、ベッドにミラロゥの姿はない。その代わり、キッチンから空腹を誘ういい匂いが漂ってきた。
これは……。フレンチトーストかな。
ふて寝しようかと思ったけど、仕方ないから起きるか。夢の余韻に少々むくれながら寝室から出た僕だけど、ミラロゥの姿を見たらたまらなくなった。広い背中に抱きついた。
「ルノン、危ないから座って待っていなさい」
すげなくされて唸ってしまう。
「どうしたんだ、犬みたいに」
犬だったんだよ、さっきまでね!
2
ミラロゥが、黒ポメになってる。
夢を見ているせいか、これがミラロゥだって僕にはすぐわかった。ふわっふわだし、眉毛があるよ!
なんて姿をしてるんだよ、ミラロゥ。
僕は自分の頬を両手で挟んで身もだえた。
よしよし、ここは自分が撫でてもらえなかった分まで撫でまくってあげるからね。
笑み崩れながら手を伸ばしたのだが、黒ポメはひらりと避けた。
「そうじゃない、ルノン。私のために踊ってくれないか」
「また僕が踊るの⁉」
「嫌なのか?」
黒ポメは不満げに尻尾をゆらゆらさせた。
ぐうう、そういう顔も可愛い。
「わかったよ。だけど、その毛並みをすこし堪能してから……」
「ルノン、それはダンスのあとだ。それがマナーだろう」
こんな時まで謎マナーを出してくるとはさすがミラロゥ。ため息が出ちゃうよ。
僕の態度が気に入らなかったのか黒ポメは、「キュゥン」と鳴いた。
そんな、僕が悪いことしているみたいじゃないか。
「わかったわかった! ルノン、踊ります!」
やけっぱちに宣言して、両手を上げてポーズを決めてみせる。
足を上げたり腕を振ったりするうち、黒ポメによる熱血指導が始まった。
「ルノン、動きが単調になっているぞ。もっとリズムを感じて!」
叫びながら黒ポメは後ろ足で立ち上がり、キュッキュと腰を振った。
やばい、メチャメチャ可愛い。
だけど僕には彼のダンスを堪能する余裕がない。ミラロゥの指示はどんどん過剰になり、今や僕は華麗にトリプルアクセルを決めているところなのだ。
だけどなんとかして黒ポメのダンスを目に焼き付けたい!
そう願った瞬間に目が覚めてしまった。
「あー、もっと見たかった」
「何が見たかったって」
「そりゃミラロゥのダンスを……」
会話してしまったけど、これもう現実だな。
チロッと片目を開けてみたら、ミラロゥは手を枕にして、面白がるような目つきで僕を覗き込んでいた。
「そうか、足りなかったのか」
僕はプルプルと首を振り、ミラロゥの胸元に顔をうずめた。
昨夜たっぷりと愛し合ったばかりなのだ。
ここは二度寝を決め込んで、黒ポメのダンスを反芻するのが正解だ。
おわり
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ルノン君が人たらし過ぎてミラロゥさんの気苦労も絶えないでしょうが、ずっとあの2人は周りの素敵な人たちに囲まれて幸せに過ごして欲しいなぁと思います。
素敵な作品をありがとうございました。
また2人の番外編的なお話も期待しております♡♡
黒川さん、再読ありがとうございます!
フラッシュモブやインド映画なイメージが伝わって嬉しいです💕
ミラロゥの気苦労は本当これからも絶えなさそうですね~。
ルノンはミラロゥの興味が自分に向いていると実感できて安心ですし
ミラロゥの過保護は趣味みたいなものなので、周りも温かい目で見守ってくれるはず!
こちらこそ、素敵な感想ありがとうございます🥰
番外編は、またなにか思いついたら書きますね!
ポメガバースめっちゃかわいい!
あああああ、のはさんサイコー!
まめさん、さっそく感想をありがとうございます!
ポメガバース可愛いですよね😆
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更新ありがとうございます。
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