異世界転生(仮タイトル)

きこり

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第27話「来訪者」

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5月末日になる。これまで24時間体制でプールの突貫工事が進んでいた。


場所は図書館より我が家寄り。森を切り開いて遊園地を作る予定だ。
姉ちゃんの為に望んだプールを先に作る事になっている。

俺は今、図書館に籠っている。姉ちゃん達がいつもの勉強をしてるが、俺は別の部屋。

11人体制で技術の選別を行っている。翻訳者5人、技術者5人。
目立つ技術か、早く実現出来る技術を俺が選別する。

あまりにも封印された技術が多すぎた

この世界に人族が生まれて、まだ1000年と少し。
数百年~千年経てば前世の様に、この世界の人の手で開発されるかも知れない。

選別で多くの技術を飛ばしている為、ロランの翻訳の仕事は継続されていた。
俺が封印された本を開くとそのまま使えたので、渡して貰っている。

とても助かる。姉ちゃんを勉強させながら、ロランの仕事も確保出来た。
顔を見せに行きたいけど、明日の夜に一時帰宅出来るからここは我慢だ。


すでに発注してる技術は、マークスリ街のカメラと電子部品。
ガラスが産地で様々な工芸品や細工品があり、望遠鏡等も国外に輸出している街。

カメラは多岐に渡って利用可能であり、とても重要になるので真っ先に発注した。
姉ちゃんの誕生日が過ぎたら、俺もマークスリ街に向かう事になる。

ヒューイット街は医療機器を重点にするため、マークスリ街に協力している。
シルヴェール街では通信技術がほぼ確立していたが、送電線に大量の銅が必要になるので電波で利用する事を決めた。

火力発電所が動き出し、電力の供給の目途も立っている。
ゴミや人の排泄物を焼却処分している場所に、試験用の2基が併設されていた。他の領地にも許可をもらい15基まで増やす。

建造物や建設機械が得意なフロワール街には、国策事業に便乗して貰った。
変電所の建設と、道路に沿って送電線の埋設工事が始まる。

同時にトンネルを掘る怪物、シールドマシンの開発。
前世の物より小さくなるが、トンネル工事で難所とされる場所にシールドマシンを投入する。

ロバルデューは活気に溢れ、他の領地からも資金や作業員が集まってきた。
いずれ情報は漏れるだろう。だが癒しの魔法の目くらましとして、役に立ってくれるはずだ。

ーーーーー

「エディ君、そろそろ夕食だよ」

声をかけてきたのは翻訳者で、生徒会長みたいなお姉さん。

「カーラ、これだけ確認してからたべる」

2日間休むから出来るだけ翻訳された部分に目を通す。
今開いてるのはロラン達が翻訳したノート、嬉しくなってくる。

「ダメです。エディ君は、これから成長する年齢なのです」

そう言われノートを取り上げられた。仕方なく職員用の部屋に行く。
そして全員揃って夕食を食べる。皆と一緒に引き籠っているのもあり、すでに仲良くなっていた。

「エディ、ほれ」

そう言ってチケットを渡してくれるリーダーのオールドマン

「プール利用券・・もうできたの?」

「2日と3日に試験運用の名目で利用される。姉さんの同級生や友達が集まるぜ」

(3日ってレミの誕生日もか)

工事が始まってから12日。滅茶苦茶はええな

「魔族の連中が頑張ったらしいからな」

古代魔法パねえな。てか魔族がプール作るってどうなのよ?

「よく参加してくれたね」

「ああ、奴らは遊戯施設と聞いて飛びついてきたからな」

(さすが働かない種族だ)

そしてあと2時間程頑張り、午後8時に領主の屋敷へ戻った。

「ただいま」

「おかえり」

セレスがロビーの所で待ってくれていた

「食事は?」

「もうたべた」

「それじゃお風呂行く?」

「うん」

セレスとお風呂に入る。まあお姉さんぶっててもまだ5歳だ。
風呂を出て領主に報告する

「エディ、頑張り過ぎだろう?もう少し早く終わったらどうだ?」

「2日と3日は帰るし、もどったらマークスリに行くから」

「あまり根を詰めても、再現する技術者の方が足りんぞ?」

「そうかもだけど・・」

そして領主が封筒を渡してくれる

「これは?」

「今月分の報酬だ」

「プール作ってもらったよ?」

「あれはこの街の役に立つ。こっちが遊園地の報酬を払いたいぐらいだ」

「やっぱりゆうえんちにするの?」

「ああ。あんな遊戯施設は聞いた事無かったからな。子供の小遣いで遊べる様な、そんな場所にしたいと思ってる」

(安くしてくれるのか)

ありがたく報酬を貰って部屋に戻る。ロランに貰った財布を取り出す。

「やくにたつと思わなかった」

ロランのおかげなのか、呪いなのか・・自分でお金を稼ぐとは思いもしなかった。
ウエストバッグに入れベッドに倒れ込む。ロランに貰った枕を抱きしめてると涙が出てくる。

「コンコン」

ドアがノックされる

「エディ、大丈夫?」

そう言いながらセレスが入って来た。俺を見て駆け寄り抱きしめてくれる。
ここに来た時も涙が止まらなかった。それを見たセレスがずっと一緒に居てくれた。


ーーーーー


翌朝。まだ日が出る前の時間、俺は祭壇から出る。グリモアに今の行動が間違っていないか確認をした。

(このまま続けてと言われたけど、何時まで何だろう?)

顔を洗って歯を磨く。今日が終われば一時帰宅出来る。

「よし」

屋敷の中を散歩する。いつも長距離を歩いていたので鈍らない様に歩いている。
外ではしない。いずれバレるが、それまでは屋敷の中を歩く。

朝食を皆で食べる。セレスはいつも世話をしてくれる。
領主もロレインも苦笑いだ。

でもセレスには救われていた

少しだけセレスと一緒に勉強する。学塾が夏休みに入ったので、今日はロレインも居た。

「エルとエディはやっぱり姉弟だね。どっちも勤勉すぎるよ」

「ねえちゃんがんばってる?」

「ん~頑張ると言うより、執念みたいな物を感じるよ」

(姉ちゃん頑張り過ぎかな?まあ怠けるより良いけど)

「ロランも何かすごく変わったね。始めて会った頃と全然違う」

「そうなの?」

「うん。エディに影響されたんだろうね」

「たしかにサボり癖みたいなのはなくなったけど」

「そうじゃなくて成長が始まった?」

(成長?)

そしてお迎えが来た。俺一人が毎日屋敷から出ていると怪しまれるからだ

「カーラ、おまたせ」

「忘れ物ない?」

「いつも聞くけどなにも持たないよ?」

「そ、そうだったね」

ウエストバッグ一つで全て間に合うのだ。誕生日で貰った靴を履いて出発した


ーーーーー


冒険者ギルドSide

「オリヴィエ、隣のベルモン領にデリス王国から旅行者が来たと、あちらのギルドから連絡がありました」

ティアがオリヴィエに話かける。冒険者ギルドのサブマスターである

「デリスから?こんな時期に?」

「身分は隠してる様ですが貴族の関係者みたいです」

「他には?」

「護衛の冒険者が6人。ベルモン領の冒険者ギルドに立ち寄って身分証明したそうです」

「銅板かな?目的は?」

「国策事業の道路工事を視察したいと」

「何で今?」

「知りませんよ?」

「それもそうね」

「この地に来るでしょうか?」

「今来られると困るわね」

「どうします?立ち入りを拒否します?」

「理由が無いし?」

「領主様に連絡した方が良いでしょうか?」

「そうね。マスターも居ないし私が行ってくるわ。書類ちょうだい」


ーーーーー


旅行者一行

デリス王国からやって来た旅行者達。サストレ伯爵の我儘娘、フレア・サストレ17歳。
従者と侍女を連れ、視察名目でレヴィネール王国に来ていた。

視察といっても厄介払いである。今デリス王国では重要な会議が連日続いている。
ゼフィラム帝国の兵士が、ロバルデューで誘拐未遂をおこしたので投獄したとレヴィネール王国が発表した。

サストレ伯爵は、煩い娘に金を渡し旅行に出したのである。伯爵はフレアがレヴィネール王国に来た事をまだ知らない。

「この国って田舎なのに、道はすごく快適ね。暑さも本国程じゃないわ」

金髪縦巻きロールをいじりながらフレアは窓の外を見る。
従者が応える

「そうですね。しかもこんな広い道だとは思いませんでした」

「何で石畳なのに揺れないの?」

「石の間を何かで埋めていますね。丁寧な仕事です」

2頭の馬が曳く大型の馬車だが、レヴィネール王国の国道と言える道は馬車が3台並走出来る幅がある。

「こんなに広いってそれだけ軍隊が多いのかしら?」

「それらしき者は見当たりませんねえ」

すれ違うのは運送業や旅行者、仕事に向かう作業員、商会が直々に運ぶ荷車である。
フレアはすれ違う馬車や荷車を見る

「護衛って一人か二人なのね。どんだけ貧しいのかしら?」

「単純に、腕に覚えがあるのかも知れませんよ」

「ふーん」

この馬車は6人の冒険者に護衛されている。彼らはそれぞれ馬に乗っている。
馬車の窓を開けて会話しているので、護衛している冒険者に会話が聞こえていた。

(バカかこの我儘娘。国力の差が道を見ただけでわかるだろ?)

別の冒険者も同様である

(田舎ねえ・・まあ大きな町は避けてるからなあ。貴族様がバカだから堂々と立ち寄れねえわ)

唯一の女性冒険者は冷や汗ものである

(頼むから、この国の冒険者には喧嘩売らないでね!)

三差路に辿り着く。直進は通行止め。先頭を行く冒険者が停止し、後ろも続いて止まる。
その手にはこの国の地図と広報誌を持っている。外国人向けに作られている物は、ギルドで貰う事が出来る。

(ここを右に行くとロバルデューと繋がる新しい道に行けるのか)

広報誌は国や領主が発行している。国策道路の進捗状況が一目で分かる様に載せれらていた。

「何で止まるのよ?」

「道の確認でしょう?」

「まるで私たちが田舎者みたいじゃない」

「まあ初めて来る土地ですし・・お、進む様ですよ」

馬車の中でも広報誌を開く

「どうやらこの方向に新しい道が作られている様です」

「十分広い道なのにまだ作るの?無駄金ね」

「ほぼ一直線でロバルデューと繋がる様です。距離も半分以下になる様ですね」

「山とか川とかどうするのよ?」

「森も切り開き、橋やトンネルを使うと書かれていますよ」

「木を切るなんてダメな政策ね」

「一部の古い道は、森に生まれ変わるとなっております。どうやら切った分だけ植林する様ですね」

「へえ」

環状道路に着く。高低差を減らす為、一部に盛り土をして作られていた。
交差する場所に警備員が居て、先頭の冒険者が話しかける。

「この道、通る?」

(外国の方か)

「建設中。ロバルデュー行ける。イネス街行けない」

「視察許可ある」

そう言い書類を出し、警備員が見る

「イネス街方向、工事中。気を付けて進む」

「ありがとう」

そして一行は環状道路に乗り、度肝を抜かれた

「なんなのこの広さ?」

「道も何でしょう?何かを塗っている?」

アオキが生前に構想していた道路が、この時代になり実現可能になった。
先頭の冒険者が降り、路面を調べる

「固く無いのに固い?これは何だ?」

他の冒険者も驚く

「よく見ると細かな石が混ざってますね。水もこの隙間に入って行く様です」

※レヴィネール王国が開発したアスファルト。原油はまだ発見されていない為、ゴム系の植物油を加工した物と砕石、排泄物の加工材等を混ぜて作った物。
地球の道に比べて厚みが少なく柔らかいが、衝撃が減る分馬の脚に優しくなる。車やトラックは無いので十分な耐久性を持つ。

「この大きな馬車も5台は並べられるな」

工事が行われている方向に進む

「・・・いったい何なのこの国」

フレアは機嫌が悪い。王太子がレヴィネールをバカにしていたので、笑い物にしてやろうと思いここまでやって来たのだ。

「快適ですなあ。どこまでも真っ直ぐな道ですよ?」

「たまにある変な棒が無かったら景色も良いのにね!」

「ふむ・・どうやら魔導灯の様です。夜に明かりが点く様です」

「こんな事に魔石を使うの?よほど頭の悪い人が作ったのね」

近々電灯に変わる予定である

「どうやら工事現場の様です。これは橋ですな」

フレアが馬車の窓から顔を出す

「ここ、渡し船で渡った大きな川よね?もう戻ったの?」

巨大なクレーンが両岸から鋼材を釣り上げていた

「何あれ?」

「せっかく視察に来たのです。降りて見せてもらいましょう」

「あれを動かすって、どれだけ大きな魔石を使ってるの?」

「聞いてみましょう。ピトフ、お願いします」

「ええ」

先頭の冒険者が作業員に視察許可書を見せながら話かける。
作業員は責任者を呼びに行った。

「ここの責任者が来てくれる様ですよ」

責任者がヘルメットが入った箱を抱えてやってくる。女性だった

「責任者のコリンヌです。ヘルメットを被って頂けないと案内出来ません」

ヘルメットを見た金髪縦巻きロールのフレアは、さらに機嫌を悪くする


ーーーーー


黙々と技術の選別を続けていると声がかかる。

「エディ君、今日はもう終わりましょ」

「もうそんなじかん?」

「ええ。お姉さんも待ってるわよ」

(姉ちゃん!)

技術書や書類、ノートを皆で片付ける

「それじゃあ4日におねがいします」

「ああ」「ふふ、ゆっくりしなさい」「「おつかれー」」


急いで表に出た。まず姉ちゃんが抱きしめてくれた。
そう言えば姉ちゃん大きくなってる?ずっと一緒だったから気付かなかっただけかな?

「エディ」

「ねえちゃん、ロラン」

「おかえり」

ロランが優しい笑みで迎えてくれる。後ろを見るとポルともう一頭馬が居た

「ポル」

「ブルルル」

ポルの鼻を撫でる

「この馬は?」

ポルと違い白っぽい灰色の馬。ポルよりさらに小さく、ずんぐりしてて可愛い。
姉ちゃんが馬の首に抱きつく

「ロランが用意してくれたの。リックって名付けたのよ」

「誕生日は明日だけどプールもあるしね」

「へー。リックってロバ?」

「そうだよ」

馬の精悍さは無く、おっとりしており耳が長くて可愛い。姉ちゃんに合ってる

「よろしくリック」

「ヒヒィン」

鳴くのは馬と一緒なんだな
俺はロランとポルに乗って帰宅する。姉ちゃんが乗るリックは初めて会うので遠慮しておいた。

「ねえちゃんもあしたから冒険者だね」

「うん」

「冒険者のしごとするの?」

「月に3日、勉強をお休みしてするの」

「へー」

ロレインが勉強しすぎみたいな事言ってたから、いい息抜きになるかな

そして、我が家に到着した。2週間近く来てないだけなのに、すごく懐かしく感じた。
姉ちゃんとロランが馬達の世話をするのを見てから家に入る。


「ただいま」

「おかえりエディ」「おかえり」

パパとママが迎えてくれた
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